第2話
薬に手を出した俺は
当然、捕まった。
これでいいんだと、心が何処かで思っていた。
俺はもう戻れない。
元の人生を歩めない。
家もない。
女もいない。
職もない。
何もかもを無くしたんだ。
「ははっ」
乾いた笑みがこぼれる。
虚しさもクソも感じなかった。
そこにあるのは俺という存在と、醜い感情だけだった。
何年かぶりに外に出た。
罪を月日で償い、外の世界へ出れた。
俺は何をしたらいいかなんて分からなかった。
親に見せる顔も無い。
一文無しは外を歩き回る。
ただ歩き回る。
時折、小学生が声をかけて来る。
「こんにちは!!」
それぐらいが生きがいだったかもしれない。
それぐらいつまらない日々だった。
泊まる場所もなく
たまたまあった公園で寝てやろうと思った時だった。
「アンタ、何してんのさ」
「…は」
何年かぶりにはっきりと声に出した言葉は
あまりにもくだらない反応だった。
黒髪の女が俺に話しかけている。
「その顔は、ムショ帰りかい? ならウチに来な」
「いや、待て」
その女は俺に有無を言わずして
腕を引っ張って走り出した。
俺には何にがなんだか
頭も追いついてこなかった。
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