アゲイン
@azuru
第1話
「なぜこんな事をしたのか、僕にもわかりません」
重く響く部屋に閉じこめられ何年か月日が経った。
俺は三浦 ナオキ。
三十路のサラリーマン、独身。
うまい事人生をやりくりしてたらそんなはずだった。
三十になりたての頃、
安定した職業について対して困った事もなく平和に日々を送っていた。
同僚とも仲が良かったし、先輩とも何もなかった。
とある日、俺に一世一代のプロジェクトが舞い込んで来る。
それは途轍もなく無理難題なものであり
周りからの謎のプレッシャーもひしひしと感じていた。
「期待してるぞ」
そんな言葉が俺を苦しめた。
正直、なんで俺になったんだろうとしか
頭の中にはそれしかなかった。
気付けば周りはいなかった。
俺ばかりが暗闇に光るパソコンを見つめ
終電ギリギリに電車に乗り込み、風呂の中で眠りかける
そんな日々だった。
そんな日々をなぜか死にかけの心で堪えて生きていた。
「無理しないでよ」
ある日、俺の彼女がそう言った。
無理してないよ、そう笑うと
彼女の目から何かが消えた。
「嘘よ、可笑しいんじゃないの貴方の会社」
「大丈夫だって、気にすることない」
この会話が何日か続いた。
自然と俺の物欲と食欲と
有り余った性欲も何処かへ行ってしまった。
もう誰も俺に癒しの言葉をくれなかった。
「頑張れ」
無責任な言葉が
渇いた胸に
ぐさりと
刺さった。
「 もう、無理だ 」
気付けば、俺は薄暗い闇の中にいた。
怪しい香りのする部屋で
注射器を手に
鏡に映る俺の顔は
薬に、狂っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます