第13話恋人

1LDKのアパートからは口を被いたくなる死臭がする。


隼人がドアノブを回すと鍵は開いていた。


一人の男が穏やかそうに寝ている。


その隣で泣いている花梨がいた。


「何の用事?」


「黒沢さんが心配してます。戻って来て欲しいと熱望されました。」



「嫌、あんな未来のない爺のところなんかには戻らない。」


「そりゃ、困りましたね。では提案です。」


「何?」


「あのクソ爺を殺して全て取り戻すのです。」


「あんた、大丈夫?」


「至って簡単な解決策だと思ったんですが…。」


隼人は、憔悴している花梨に言った。


「あなたがあの爺を殺してくれるの?」


「はい。」


単調な会話は死体の上で交わされていた。


「そもそも、叔父さんを殺したのは黒沢の仕業です。」


「黒沢の死ぬ姿が見たい。」


「かしこまりました。」


叔父の死体を運び出して荼毘に伏せた。


花梨は、ただ、ただ、ずっと泣いていた。


黒沢は、素知らぬ顔をしてお通夜、お葬式と来た。


この男には身体中に錆びた血が流れてるのだと隼人は感じた。

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