第12話
講義も、全て終わらせたので迷涼は、レポートのお礼に、コンビニで買ってきた缶コーヒーを渡そうとしていた。
勿論、彼がいる場所はわかる。。。
仮眠室。。。
寝てるかな?
なんて、思いながら仮眠室の扉を開けると、暖かな光が零れ落ちて来た。珍しい、いつもは、真っ暗で埃っぽい部屋なのに、窓を開けているのか、春の香りがした。
龍夜は、壁に寄りかかりタバコを吸っていた。その姿が、不覚にもカッコよくて、 少しの間見惚れてしまった迷涼。
声を掛けるタイミングを、掴めずにいると。タバコの吸い殻をプチゴミ箱に捨てる。
「いつまで、俺をストーキングしてるんですか?」
飽きれた様に、ボソッと呟く龍夜。どうやら、バレていたらしい。
渋々、彼女は龍夜の前に出てくる。
「なんですか?」
ソファーに、横になる龍夜に黙って缶コーヒーを突き出す迷涼。。。
「レポート…届けてくれて…ありあり…ありがとうございました」
彼女の、缶コーヒーを受け取り上半身を、起き上がらせて、自分の隣をポンポンと叩く。どうやら、座れと言いたいらしい。。。
迷涼は、失礼しまーす。と、小声で呟いてから隣に座る。
「あ、金平糖ありますよ?食べます?」
心底嬉しそうに、袋から金平糖を出す迷涼。そんな、彼女を見て何やら吹き出す。
「あはは。なんで、そのお菓子のチョイス普通、女の子ならマカロンとか選ぶでしょ」
あー!、おかしい。と、付け足した。
「は、初めて見た!ちゃんと、笑ってる顔!!」
「え?俺、いつも笑ってるじゃないですか」
「いや、それは貼り付けた嘘くさい笑顔でしょ?」
「サラリと、酷いこと言いますね」
「ちゃんと、心から笑える人なんだね。そっちの方が素敵!」
瞳をキラキラ輝かせて、話す迷涼を見た時、彼はある記憶が蘇る。
『龍夜は、ちゃんと笑える人なの!本当は、心が暖かい優しい人なのよね』
龍夜の中で、迷涼とある女性が重なったのだ。。。
「…麗子」
「?」
「あ、いえ。なんでもありません」
彼は、缶コーヒーを一気飲みしてカラになった缶を握りしめる。
「ねね、笹木部教授は…」
「龍夜でいいですよ」
「え、でも…」
「二人きりの時は、そう呼んでください」
「分かった。り、龍夜はこの仮眠室から出ないの?」
金平糖の袋を開けようとするが、なかなか開かない。
代わりに龍夜が、開けてくれた。
「そうですね、講義がない時は殆どここに居ますよ」
「お仕事とかないの?」
「全部終わらせてあります。仕事早いんですよ」
「それ、自分で言っちゃう?」
開けてくれた金平糖の袋を、受け取り一つ彼にあげた。
彼は、ありがとうございます。とだけ言って金平糖を、口に運ぶ。
「そんなんだから、他の生徒たちに幻のポケ〇ンとか、ネッシーとか、人魚扱いされるんだよ」
「俺、そんな扱いされてるんですか?」
お腹痛い!と、笑う彼を見て迷涼は思う。
もしかしたら、この人いい人なのかも。不器用なだけで…。。。
「他には、なんて呼ばれてるんですか?」
「んっとね、この前聞いた時は、笹木部兄弟に会ったら、願いが叶う?みたいな感じ」
「もはや、流れ星扱い」
彼は、嬉しそうに迷涼の話を聞いて、ただ笑っていた。
彼女の、中の氷の王様が段々と溶けていった。
そんな、楽しそうに笑い合う二人を仮眠室の、扉の隙間からある人物が覗き込んでいた。。。
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