第8話


彼女は、走った。。。


電車を乗り継いで、七倉のいるアパートを目指した。近くに、コンビニがあったから軽い買い物をして。。。


扉の前に立つ。いざ、チャイムを押そうとした瞬間。


扉が突然開き、中から女の人が出てきた。


「コンビニで、タバコ買ってくるわ」


目の前には、金髪ショートの美女が、立っていた。


「ついでに、プリン的なモノ買ってきて」


遠くの方で、聞き覚えのある男の声がした。


「アンタ、誰?」


突然、話をかけられて頭が真っ白になった千代。。。


「あ、わ、わ、私はっ」


「よぉーへい?アンタの彼女?」


「はぁ?」


部屋の向こうの畳部屋に、布団をかけて眠っている七倉は、眼鏡を掛けて細目で玄関先に視線を、見つめる。。。


「千代?な、なんで?」


あ、近場に来ただけです。あれ、声が出ない…。。。なんで?


代わりに、千代の目から大粒の涙が零れ落ちた。


なにも言わずに、千代はその場から逃去る。


「ちょ、待てッッッッ」


「バッ!ちょ、陽平!これ持ってきな」


「サンキュ」


美女から、渡された黒のジャンパーを投げ付けられ、サンダルで彼女の跡を追う。。。



一方、千代は近くの電信柱の下で涙を流していた。しかし、涙の意味がよく分からない。


七倉さんに、彼女がいてなんなの?別に、どうでもいいじゃない、、、。


でも、なんで涙が止まらないのよ…。。。


そこに。


「千代!!」


振り向くと、そこにはチャラい金髪に、マスク、真っ赤なパジャマに、黒いコートを羽織って、肩で息をしている七倉の姿があった。


千代は、再び彼から顔を背ける。


「なんで、追ってくるんですか?!!」


「いや、夜暗いし危ねぇだろ?」


千代??と、彼女に歩み寄る七倉。


「その袋て…まさか、お見舞いに来てくれてた?」


「ち、違うもん。近くに、用事があって…」


我ながら、痛い理由だと思った。


「用事ねぇ…」


「それより、良いんですか?彼女さん」


「彼女?」


「七倉さんも、人がお悪いですね!彼女が、居るのに…ま、まぁ?私には関係ないですけどね!!!」


これが、精一杯の強がり。


「アレ?まさか…ヤキモチ妬いてくれてる?」


彼女は、言葉には表せない怒りに襲われていた。


振り返り、目の前の七倉の胸板を叩く。


「妬いてますよ!!だって、私…」


彼は、嬉しそうに彼女を抱き寄せた。


「ちょっ!七倉さん?!」


「俺、今もしかしたらめちゃくちゃ幸せかもしれねぇわ」


「私の話し聞い…」


七倉の顔がアップになったと、思った時にはキスをされていた。


「好きだ」


「え?でも、あのび、美女は?」


「美女???ああ、姉貴」


「あ、姉貴?…お姉さん?!!」


「そう、風邪引いて死にそうになって姉貴が、来てくれてただけ」


「ちょ、待って…私めちゃくちゃ恥ずかしいじゃないですか!」


「バカだな」


楽しそうな七倉に、ムッとする千代。彼に背を向けると、背中が暖かい。


「俺も、逢いたくて逢いたくて…寂しかた。愛おしいて、こんな感情なんだな」


千代は、彼に抱きつく。


「私も…よ、陽平さんがいないと…寂しい」


二人の唇が、重なった。。。

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