第7話
コレは、まだ千代が遥と会う前の話だ。
千代は、遥と出逢う前は料亭で受け付けで働いていた。
近くには、『かすみ大学』と言う大きな学校があって、良く学生や職員たちが通っていた。
「いらっしゃいませ!」
笑顔で、彼女は接客をしていた。
四人の職員か、若い男達が店にやって来た。
その中の一人に、金髪にピアスの如何にもチャラい!を絵に書いた男がいた。
その時の千代も、チャラい人だなぁ。としか、思っていなかった。まぁ、人は中身だ。と、思いつつ彼女は、注文を取りに行く。
「えっと…俺は、トンカツ定食3と…おい、お前は?」
「さば味噌煮定食」
以外にも、チャラい人が渋いモノを頼んできた。
食べ物をメモっていると。
「ねね、お姉さん。彼氏とかいるの?」
「はい?」
「名前は?歳いくつ?」
前言撤回、人は中身ではなく、見た目かもしれない。。。
千代は、持っていたお盆で頭を殴りたい衝動に駆られたが、営業スマイルを貼りつけた。
「あの…」
「俺は、七倉!七倉 陽平」
七倉は、笑顔でそう呟いた。
これが、千代と七倉 陽平の出逢いだっ
た。。。
彼は、良く来るようになった。
一週間、土日以外のお昼やたまに閉店ギリギリに来る、七倉。。。
「今、学校がテスト期間でさ。みんな、カップ麺とか食ってるんだけど、俺は、ここのさば味噌煮定食が妙に食いたくなるんだよな」
七倉に段々と、慣れてきた千代は良く彼と話すようになった。。。
一人飯は、寂しいと同じテーブルに座り彼が、さば味噌煮定食を食べているのを見ながら、他愛もない話しをするのが、いつのまにか彼女の日常になってきた。
次は、いつ会えるのかな?
次は、どんな話しを聞かせてくれるのかな?
次は…次は…。。。
そう考える内に、千代は、思うのだ。
あ、私あの人が好きなのかも。
曖昧な気持ちだった為、わからないが。
ガラガラ。と、店の扉が開く音がした。
「いらっしゃいませ!」
「よっ!千代!」
彼に名前を呼ばれると、微かに胸が高鳴るのだ。
いつもの窓側の席に座る。お冷を持って彼のところに持っていく。
「俺は、さ」
「さば味噌煮定食ね!」
「お?以心伝心??」
「ワンパターンなのよ!誰だって覚えるわ」
「相変わらず、可愛くないねぇ」
「七倉さんに言われたくない」
ふん。と、澄ました顔で厨房に戻る。
そんなある日のことだった。。。
また、お昼頃にいつものかすみ大学の職員たちがやって来た。しかし、七倉の姿がない。
「いらっしゃいませ!」
「あ、いつもの三つで」
メガネを掛けた腹黒そうな男が、注文する。
確か、『龍夜』て、七倉さんが呼んでた気がする。
「畏まりました!…あのぉ」
「はい?」
「七倉さんは、今日は?」
「ああ、あいつは今風邪引いて寝てると思いますよ」
「え?!」
大丈夫かな?…あの人、ひとり暮らしって言ってたし…。
「七倉の家の住所教えましょうか?」
「え?」
そう、龍夜は呟くとテーブルに置いてあったスーパーのチラシに、器用に地図を書き始める、
「え?え?で、でも」
「アイツ、最近貴女のことばかり話すんですよね」
テーブルに頬杖を付いて、横目で千代を見つめる。
「おじちゃん、おばちゃん!ちょい、行ってくるね!」
三角巾とエプロンを脱ぎ捨てて、彼女は店を飛び出した。
「兄さん、なにを考えてるの?」
「べーつーにぃー」
楽しそうに笑う、龍夜であった。。。
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