衣替え

 遠く遠く世界を満たす色

 少し先の未来の幻影を見せる浜辺

 今日も無邪気に海は光を反射させている


 物言わぬ景色

 まるで絵ハガキのような

 けれどもこの頬をなでる風

 やがて来る雨の日を予感させる湿度


 オープンカーが目の前を走り抜けていく

 サングラスのパイロットは次の季節を目指してる

 ここは決して南国のパラダイスじゃないけれど

 走る彼らにはそれはどうだっていい事で


 カメラに撮って残したい風景は

 本当はこんな景色なのかも知れない

 人の居ない午後の港道

 沢山の船が波と戯れていて

 その傍らでネコが昼寝をしているのさ


 公園のベンチに座っていたら

 風が半袖の間をすり抜けていった

 アイスやソーダばかり欲しがってしまうけれど

 今ならまだ木陰で気持ちいい気分になれるから


 潮騒のうたが心臓の鼓動とシンクロして

 何もかもうまく行っているような幻想に酔ってしまう

 誰も居ないのが理想の景色だなんて


 ほらほら目を離せばハトたちがえさをねだりにやって来る

 寝たふりなんていつまでも通用したりはしないんだからね

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