"ふたりは逆さま" 小説版【NHK みいつけた!より】

のノ

ある晴れた日のできごと。


ある朝。僕はいつものように軋むベッドから起き上がり重たい体を起こしあげる。


起きてからすぐには気づかなかったが、リビングからは美味しそうなベーコンなどの香りが漂ってきていた。

僕は1度深呼吸をすると、隣の部屋へ足を運んだ

「スイちゃん、おはよう」

スイちゃんはぐっすり眠っていた。少しめくれた布団から覗くスイちゃんの寝顔。

寝相が悪いんだなあ、スイちゃんは。

少し笑みがこぼれた。そんな僕に気付いたのか、スイちゃんは布団をもぞもぞとゆっくりどかし、ゆるゆると起き上がる。

そしてスイちゃんは完全に僕の存在に気付き


「…あ、コッシーおはよ」

とつぶやいた


「はやく!顔洗ってご飯食べるよ!」


僕はスイちゃんの手を引っ張る。

スイちゃんはヨレヨレとしながらフラフラ歩いてついてくる。

これは日課なのだ。

一緒に顔を洗って、一緒にリビングへ向かう。

リビングからは相変わらず美味しそうな匂いが流れてくる。

僕とスイちゃんは少し早走りでリビングへと向かい、

サボさんが作った、ブレックファースト(卵とベーコン)を目を輝かせ眺める。


サボさんは「美味そうだろぉ?」と言わんばかりにドヤ顔をしていたことに少し苛立ちを覚えたが、ほんとに美味しそうなので素直に喜ぶことにした。


「いただきます!」

3人の声が合わさる


いつもの朝だった。

楽しい、楽しい。


「ねえ、コッシー?今日って日曜だよね」

唐突の質問にびっくりした

率直に答えた

「そ、そうだよ?」

するとスイちゃんは笑顔で


「じゃあさ!遊び行こ!」

と乗り出して言った


「う、うん!」

突然だったから何をするか、どこに行くか、なんで誘ってくれたのか、全く分からないままOKしてしまった。

まあ本当にOKなのだが。


昼からと言われて、今は10時半。

まずはお風呂に入って…

後はどうしようか。

まあ時間あるし昼寝でもするか!と


完全に寝坊フラグを立てていたが

僕は眠ってしまった。


─────────


……うーん…

ん、ん?今何時だ?

〈1時半〉


「や、やばいっす!!」

僕は待ち合わせの公園へ全力で走った。

前足がミシミシと音を立てて久しぶりに走ったということを実感した。


約束の公園に着いた時には、2時を回っていた。

「スイちゃん怒ってるかな…」

トボトボとゆっくり待ち合わせのジャングルジムの前へ向かった。

ジャングルジムの前までやっとのことで着き、恐る恐る前を見ると


そこには、体育座りで座り込むスイちゃんの姿があった。


僕はかける言葉を探したが、「ごめん」しか出なかった。出せなかった。


スイちゃんはゆるゆると顔を上げ

「…大丈夫、コッシー。」

彼女は笑顔で言った。


微笑ましかったが、罪悪感もあり

「ごめんね」しか言えなかった。

その後は楽しく愉快に遊んだ。でも、ごめんスイちゃん。


日も暮れ、夕方になり

スイちゃんと一緒に帰る。


スイちゃんは帰り際に

「楽しかったね、コッシー。」

と笑みで言ってくれた。


さっきまで思い落ちていた僕が馬鹿らしく思えた。スイちゃんからしたら僕の悩みなんてこれっぽっちもないのかもしれない。


ありがとう。


僕はいつもスイちゃんに

「ありがとう」と言ってばかりだ。

_________


次の朝。

今日も体を起こし、顔を洗い、朝食を食べる。いつも通り。いつも通りだった。


何かたのしいことでもないかなあ、と思っていた矢先、スイちゃんが問いかけてきた


「コッシー?座ってもいい?」


咄嗟の声掛けに、あっ、あっ、い、いいよ!

と、なんで急に聞いてきたんだろうということを考える間も無く答えてしまった。

ボクはイス。座らせるのが仕事だ。

いつもはそんなこと聞かずに座るのになんでだろう?


「ありがとコッシー」


スイちゃんはそういうと僕の膝元へ座った。

いつもの感覚、スイちゃんは座ると何も言わなかった。

「スイ…ちゃん…?」


彼女の顔を見ようと足を動かすと、足元にはおにぎりマンのオモチャが。

僕は足を滑らせ、スイちゃんも僕から放り出された。




イタタタタ……。

意識がもうろうとしている、微かに目を開けると光が差し込んでくる。


……

ん、んん?

あ、そうか僕はあのとき滑って転んで。

やっと色々思い出してきた。

僕は体を起こそうとした。しかし


「ん?」


上手く立てない。

いつもより体も重くなった気もしていた

何か全て、いつもと感覚が違う。

どういうことだ?


ん?


まだ寝ぼけているせいか、まだ夢でも見ているのか。


「いや。」

しかし僕は次の瞬間、それは夢じゃないと確信した。


「───僕の、か、体が…。ひ、人になってるうううううううううううううううっうう!!!!!!!!」


ぼ、僕の目線の先に手があった。

初めて見る自分の手だ。

自分の手というより、スイちゃんの…


ん…、ということは。


「イタタタタ……」

スイちゃん…、いや、僕の体をした、恐らくスイちゃんであろう、スイちゃん(仮)がゆるゆると起き上がる。


「だ、大丈夫?スイちゃん」

100%大丈夫じゃないがそう聞くと


スイちゃんはしばらく考えたあと僕と同じ反応を見せた。


「スイの体が……、コッシーになってるうううう!!!!!」


**************************************


僕らは落ち着いて考えることにした。


僕らは転んで、体が入れ替わってしまった。うん。

あれから数時間で体の動かし方のコツはお互いなんとなく掴んできた。


「ねぇコッシー?どうする?」

考え込んでいる僕に彼女はそう聞いた。一瞬自分の声が聞こえたことでびっくりしたが、あっそうかと思い正した。

やっぱりなんか僕自身に話しかけられてるみたいで調子が出ないけど、

「どうするか」より、今絶対やってはいけないことは決まっている。


「とりあえず、サボさんにはバレないようにしよう。」


そうだ。サボさんに感でもれでもしたら、説明しても疑われたり、信じてくれないし

変に思われてしまう。

それだけは必ず避けたい。


「わかったコッシー。スイが、コッシーのフリをしておけばいいんだよね」

「うん。僕はスイちゃんのフリを。」


僕らはとりあえず今はサボさんを騙すことだけを考えて、体の交換自体は後で考えることに決めた。


もうすぐ晩御飯という名の、最初の試練。

練習なしの本番戦。

僕らは目を見合い「うん。」と頷き合うと、

食卓へ向かったのだった。

____________


「お、丁度ご飯できたぞー、今日はコッシーが好きな、おにぎりつきだぞぉ!」

サボさんが僕らに楽しげに言う。

しかし僕らはご飯どころではないのだ。おにぎりとか正直どうでもいい。

今はサボさんから一刻も早く距離を取る必要がある。

すぐに晩御飯を食べて終わらせたい気持ちしかない


「どうした?2人とも」

サボさんが不思議そうに問いかける。


ヤバイ、感ずかれたか。まあ2人とも隠すことに必死になりすぎて、何も喋ってないし、汗ダクダクだし。

ここは僕がなんとか違和感のないようにしないと…


「い、いやぁー、実はコッシーがさっき自分でおにぎり食べちゃってお腹いっぱいらしいっすー」

僕はスイちゃんになりきって違和感をできるだけなくして言った、つもりだった


するとサボさんが顔をしかめて

「ん?なんか喋り方がコッシーに似てないか?(ッスー)みたいな…」


あ、くせが出てしまってたッス

この「〇〇ッスー」はたまにでちゃう僕の悪い癖だな…


しかし、この僕のミスにスイちゃんは欠かさずフォローを入れてくれた


「あ、あぁ!さっきまでずっと、喋ってたから、スイ…あ、僕の、口癖が、うつっちゃったんだよ!ッスー?」


ナイス援護!


サボさんはまだ顔をしかめていたが

もうどちらかと言うと、怪しんでいるよりは、呆れているようだった


「んー、なんかおかしいけど、そうなら、また後でご飯食べるんだぞー」


「うん!」


なんとかスイちゃんのおかげで乗り切れた。

ありがとう…スイちゃん。


____________

夕飯後


僕らは部屋に閉じこもり、話を続けた。

なぜ体が入れ替わってしまったのかについて。

僕は「あの時さ」と話を切り出した


「なんで僕に座ったの?」

「……」

「?」

「んん……」


スイちゃんは眠っていた。

今日は何かと忙しかったから、疲れていたようだ。

「今日のところは、考えずに寝よう」

スイちゃんが僕の寝顔をして眠っている。

僕ってこんな顔だったんだ、気持ち悪いな


まあ

「おやすみっす。」

その日は僕も眠りにつくことにしたのだった。


_________


「んん……」

重たい体、軋むような音。

ぼくはのそのそと起き上がる。

「ん?ん!?」

昨日より低い目線。いや、いつも見てきた高さの目線!!


これは、これは

「元にもどってるうううううう!!!!!!!」


僕は飛び上がり、スイちゃんを見る。

スイちゃんは、スイちゃんだった。

当たり前だけど。スイちゃんだぁ!!!


「スイちゃん!スイちゃん!!」

スイちゃんはもぞもぞとして、目を擦りながら答える

「なに、コッシー……」


「僕コッシー!!」

決め台詞が決まった。

これは僕の決めゼリフで、「コ〇ン」くんでいうところの「真実はいつもひとつ!」的なものなのだ。


いや、今はそれどころじゃない…!


スイちゃんは始めはポカンとしていたが、ハッと思い出した様子で

「あ、コッシー!!」

と気づいたようだった


「コッシー!」

「スイちゃん!」

「コッッシぃー!!」

「スイチャァアァーン!」


扉が開く音がした


「何してんの?」

サボさんが入ってきた。


「あ、ああ…、あ。」

サボさんのマジトーンでの

「何してんの?」のせいもあり、2人とも固まったまま動けなかった


「何してんだよぉ、ご飯だぞ!」


「あ、うん!(わかった!)」

サボさんは何かを察したのか、早走りで去っていった。


とりあえず体が戻ってよかった…。


僕らは安全に朝食を済ませ、

2人で遊んでいた。


その時、思ったことがあった、それは。


「やっぱ体入れ替わった原因

気・に・な・る」


昨日なんで入れ替わったか、本当に気になる!!


僕はスイちゃんにこんな提案をした


「スイちゃん?」

「ん、ん?」

遊んでいるオモチャを置き、

スイちゃんがこちらを向いた

スイちゃんの顔が「なんやねんコラ」というような表情に見えた。気のせい気のせい…


気にしてないフリをして話を続ける

「昨日のこと、再現してみない?」

「え?」

「あの、どうして入れ替わったとかさ」

「あ〜…… 」


スイちゃんはしばらく悩んだ後「いいよ」と答えた。


_____________


サボさんが出かけている間に、昨日入れ替わってしまった場所に行き、スイちゃんが僕に座る。

ここまでは普通。わざとはコケたくないが、昨日の再現をするので、勇気を振り絞って…、おにぎりマンをふんだ!


「わぁ!」

「わぁぁ!」





イタタ……

ん、そうか、あの時再現して、思いのほか結構ガチでコケちゃったんだった。

ん?体が軽い。

嫌な予感が…。

僕は恐る恐る手を見る

「やっぱり人間だ…スイちゃんだ…」

2回目はさすがに驚かなかった。


スイちゃんをみると、やはり僕になっている。でもなんか昨日とは…違う。


でもとりあえず。また入れ替わっちゃったかぁあぁぁぁぁあ。


__________


あれから数時間。

スイちゃんもまた入れ替わってしまったということに気付き、


今はッ!‥‥今僕達が置かれている立場が…、!


サボさんの声がする

「あー?開かないな…」


僕らは今・・押し入れに隠れている。

押し入れに入って、内側から開けられるのを防いでいる。

なぜかと言うと


数時間前……


「入れ替わってる!!」

「まただ!!、、ん、え?」

「どうしたの?」

「なんか、スイちゃんの体の髪が青くなって…」

「ええ!あ!スイもだ!コッシーの体に、スイちゃん感が出てる!」




・・ということ



昨日の体チェンジとは違って、

今回はお互いの体にお互いの特徴的な部分が組み込まれてる。


僕がなっているスイちゃんの体は髪が青く。

スイちゃんの僕の体は、僕(コッシー)要素が組み込まれていた


このままだと、明らかおかしく、サボさんにあったらバレるのは当たり前。

というわけで、押し入れ、なう、というわけっす。


「まあいいか…」

サボさんがため息をつき

押し入れを開けるのを諦め、ドアの閉まる音、買い物に行く音がした。


「ふぅぅ〜…(はぁぁ……)」


同時にため息をつき、押し入れから出て倒れ込む。約1時間半の葛藤だった、それはさすがに疲れる。


サボさん…どんだけ押し入れ開けたかったんだよ…。


僕は、息を乱しながらも、ふと思った。

僕に座りたい……!いや、正確に言えば、僕の体をしたスイちゃんに座りたいということ。


生まれてこの方、僕のような新鮮モコモコな完璧なイスには座ったことなかった。


「はぁ…はぁ…ねぇ、スイちゃん?」


「ん?どうしたのコッシー?…はぁ」

苦しながらも応えてくれる


「僕に座らせてくれる?スイちゃんに」


頼んだ。いいよって言って


「あ、いいよ!」


よかった!!初めて僕が座るばんだ!


所定の位置につき、スイちゃんは構えている。よし…座るぞ…いつも座られてばっかだけど…いつも座っていい?って聞かれる側だけど…今日は…… !


「バフっ!」


心地よい感触だった。初めての感覚だった。いま幸せという言葉が身にしみてくる。


「わぁ!僕に座るのってこんなに気持ちよかったんだぁ~☆」


それに対してスイちゃんは真逆の反応を見せた

「うぅ、重い、コッシー。いつもこんなに重かったのぉ?」


そうだ、人間は逆に感じたことがない辛さがくるんだ、僕はもう慣れていたけど意外とキツかったんだ、、


そんなことを、ボヤァーと考えていてスイちゃんから降りようともしなかった。


「あぁ!重い!」


ついに限界を超えちゃった感じか、僕は放り出された。


「あ、ごめん、スイちゃん。あまりに楽しくて」


スイちゃんは息が乱れながらも


「大丈夫…コッシー。」

といつものように「大丈夫」と

言った


「ありがとう、スイちゃん。」

やっぱり僕はスイちゃんに「ありがとう」を言うのが多いと思う。

スイちゃんはお人好しだから、優しいから。

ありがとうを沢山言ってしまう。


いつもありがとう。スイちゃん。

_________


息が整ってから、ある作戦を実行した。


「泊まりに行ってます作戦?なにそれ?」

スイちゃんは首を傾げる


そう、泊まりに行ってます作戦。


それは。

このままずっと隠れていると、サボさんを心配させてしまう。なのでサボさんが帰ってくる前にテーブルの上に置き手紙をする。その内容は

「チョコンの家に泊まりに行ってきます。明日まで帰りません」

と書き残して。この家のロフトに隠れる。

サボさんは帰ってきて手紙を読んで、僕らが出かけていると思って、探しもしない。明日までそれで乗り切る。という作戦ッス。


これをスイちゃんに説明すると

「いいじゃん、コッシー!」


スイちゃんは顔をぐいっと近づけて言う。

照れると思っていたけど、所詮は僕の顔に近づかれているだけなのでそんなに、照れない。いや全然照れない


僕らは「泊まりに行ってます作戦」を実行する事にした。


__________


サボさん帰宅。

「サボサボ~サボサボサボ~」

滅びの歌のような変な歌を歌いながら玄関を上がってきた


そしてテーブルの手紙を目にし

「ほーほーほーほー」

と吠える、いや、言う。

作戦は成功のようだ

サボさんは僕らが泊まりに行ってると思い込んだ、よし。


今は9時。サボさんが寝るのは11時くらいなので、あと2時間は隠れてないといけないのか…と思っていた矢先!


「ぐう……ぐぅ…」


イビキ!?

ふと目をやると、サボさんがコタツで眠っていた。


「お、さ、け……か。」


飲んで帰って来てたから、すぐに寝てくれた。ありがたや…


作戦成功っすね。


僕らは2人でハイタッチを交わした


___________


夜も更け、時計の音が響く。

僕らは今日は眠れなかった。

ロフトの窓から2人で満月を眺めていた


僕はぼんやり考えていた。


あの時。僕が初めてスイちゃんと会った日。

あの日、今この場所のロフトで、ほかのゴミと一緒に混ざっていたガラクタだった僕を見つけて、話しかけてくれた。

コッシー。という名前まで付けてくれた。

ひとりぼっちの僕と友達になってくれた。


…丁度、数年前の昨日の事だったっすね。



僕はゆっくり横を見た

すると


そこには涙を流すスイちゃんの姿があった。


僕は、かける言葉がなかった。

頭の中の言葉の引き出しのどこを探しても、言葉は出てこなかった。

いや、ただひとつ聞きたかったことの言葉の引き出しがあった。


「スイちゃん。昨日、どうして座っていいって聞いたの?」


ゆっくり優しく聞いた。


スイちゃんは静かに口を開いた


「昨日。私たちが出会った日だよね」


その言葉に驚きが隠せなかった。

覚えてないと思っていたから。


スイちゃんは話を続けた。

「私ね、実は死のうと思ってて。」

「」

「丁度コッシーと出会って節目の年だし、その日にコッシーとサボさんと、お別れしようと思ってたの」

「」

「だからね、死ぬ前に、最後にコッシーに座りたかった。どうしてもあの温もりを最後に感じたかった。ただそれだけだよ。」


僕は、スイちゃんが死のうとしていた事実を受け入れられなかった。


その時、「でもね」とスイちゃんが切り出した

「コッシーに座ってから、さよならするつもりが体が入れ替わっちゃって、さよならできなかった。」


スイちゃんは「でも」と続ける

「コッシーと入れ替わって、色々わかった。スイがいつも軽く座ってたけど、あんなに辛かったんだね。他にもコッシーと色々話して気づいた」


スイちゃんは言い放った


「こんなことで死のうなんて言っちゃいけないって。」


スイちゃんは笑顔だった


その瞬間、2人の体が光で包まれた。


外に目をやると朝日が上ってきていた。

体が元に戻る時が来たんだ。


数分し

光が消えかかり、僕らは見合って微笑んだ。


「もどったね」

「もどったね」


僕はスイちゃんに、「ありがとう」と言おうとした。しかし、言いかけたところでスイちゃんは僕の口を抑え、

小さな涙を流しながら僕に抱きつき笑顔でゆっくり言った。

「ありがと。コッシー」


__________


僕らは忘れることはないだろう。

ふたりが逆さまになったあの日を。

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