第二話 契約の獣
森には闇が宿り、魔が宿る。魔力の民である月の民は森を聖域とした。国の南端には万年雪を湛えた山脈があり、その雪解け水が育んだ豊かな森があった。月の民の少ない国内、その森に近寄るものは数少ない。手付かずの森は精霊や幻獣をより自然な形で育む。
オレは月の魔力が高まる満月の夜、魔道書を手に森へと足を踏み入れた。森の住民は予期せぬ来客に戸惑いを見せたが、彼らはオレの志を聞くと快く力を貸してくれた。
獣の長がオレの言葉に賛同し、仲間の中でも力を持った白い有翼獅子を引き合わせてくれた。白の有翼獅子は名をフィエーロと明かした。それはオレへの従属の証であり、同時に主人としてオレを従えると言う意味も含んで居た。
『この国の暗き闇が、いずれこの土地を黒く蝕むであろう事は予感していた。それを防ぐ力となれるのであれば、我は力を貸し与えよう。だがその悲願成らぬのであれば、我は貴君の体を喰らい共に畜生道へと堕ち、その責を取らせようぞ』
「我は火の民、名をロジェ=マルク。その責、この魂を賭けて我が背に負おうぞ!」
魔道書を開き、協力を申し出た白き聖獣と【契約】を果たした。腹に現れた【契約】の扉に聖獣が吸い込まれ、強大な力と魔力、知力の奔流を体内に感じた。自らの体に聖獣の鼓動を聞き、オレと白き聖獣は融合を遂げた。
国ではこの【契約】の力を禁忌としていた。魔力に乏しい火の民や水の民、そして星の民はこの【契約】の力に耐え切れず、聖獣たちに逆に食われてしまう前例が多く、南の小国の短くはない歴史の中でそれは禁忌として忌み嫌われていた。
腐り切った上層部の癌を滅するだけの力であれば良い。聖獣はそんな無力な自分の心に惹かれて【契約】を承諾した。獣たちは、人々の闇の部分に惹かれ、その闇を垣間見る為に【契約】を許すと言う。
こうしてオレは、ガーディアン【白き聖獣】の力を手に入れたのだ。
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