光陰矢の如し、時間は有効に活用せねばなりません

「虚樹 丙(うろき ひのえ)、授業始まってるぞ」


「すみません、体調不良で保健室に寄っていました」


教室に入るとすでに授業は始まっていて、教師が黒板に何やら書いている最中だった。

一時間目の授業はPSI(サイ)基礎学だったな。

机の上に教科書とノートを広げてから、

しばらくさっきのメフィストとの会話を思い出しながら窓の外をボケっと眺めていた。


「魔法の勉強ですな」


「うわっ」

こいつ、着いて来ていたのか。

急に現れたメフィストはふわふわと机の上に漂っていた。


「集中しろ虚樹(うろき)、今の話聞いてたか。問三の問題を説明しろ」


くそ、こいつのせいだろ。


「超能力の発動に伴った身体エネルギーの放出ですか、ふむふむ。

教えて差し上げましょうか」


「先生、やっぱり体調が悪いので保健室に行ってきます」


広げたばかりのノートと教科書を学生カバンに詰め込んで教室を出る。


「サボりとは、感心しませんなあ、光陰矢の如し、時間が過ぎゆくのはあっという間です。有効に活用せねば」


「お前のせいだろ」

メフィストの言葉を遮って怒鳴った。


「いいか、俺の前に急に現れるな。なんで俺に付きまとうんだよ」


「なぜって、話の続きをしに来たのではないですか」


「普通授業が終わってからとかだろ」


「ではまた日を改めて参りましょう」


「もういいよ、今から保健室行くからそこで話をする。そのために教室を出たんだろうが」


ニヤリと笑うメフィスト


「心が読めるんじゃなかったのかよ」


「読めていましたが、あなたが思っているほど便利なものではありませんよ」


保健室には予想通り誰もいなかった。


「それで、なんだったっけ」


「私が力を与える代わりに、死後その魂を私に仕えさせるという契約です」


「俺はお前を信用できねえつったな」


「はい、ではそうですねえ...いいことを思いつきました。今日の授業がすべて終わった頃、教室のある校舎の屋上に来てみてください。あなたはきっとそこで契約をお結びになるなずだあ」


「放課後に屋上だな、わかった。だったらそれまで消えててくれ」


「言われずともそうしますよ、相変わらずあなたの言葉は辛辣(しんらつ)ですなあ」


メフィストは道化師のような気味の悪い笑みを浮かべながら消えていった。






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