契約

「ここでは目立ちすぎますねえ。場所を変えましょう」


メフィストが指をパチンと鳴らすと、あたりの景色が変わった。


「校舎裏か!?どうやって」

空間を移動する能力なんて聞いたこともない。


「私に出来ないことなど、ありませんからねえ」


(おい、今人が消えたよな!)

(見た見た)

(あれたしかB組のやつじゃなかったか)

(だれだれ)


「それで、契約ってなんだよ」


「そんなに構えないでくださいよ。きっとあなたにとってもいい話ですから。

なに、あなたが死ぬまでの間、私があなたに力を与えて差し上げたいと思いましてね。きっと退屈しないと思いますよ」


「お前が俺に力を、そんなことができんのか」


「言ったでしょう、私に出来ないことなどありませんから」


「条件をおしえろ」


「そうですねえ、では、あなたがこの世を去った時に、その魂を私に仕えさせるというのはどうでしょう」


「そんなんで俺は力を得られるってえのか」


「もちろんですとも。それに、あなたがこの世にいる限りは、私はあなたの僕(しもべ)となりましょう。どんなことでもお聞きしますよ」


「都合が話だな、俺は死後の世界なんて信じてねえし。大体、お前が悪魔だって完全に信じてるわけじゃねえ」


「では、なにをすれば信じていただけるのですか」


数人の人間が近づいてくる音がする。

(授業サボって早弁とか超笑えるんだけど)

(朝食じゃんなあ)

(ちっとライター貸して)


校舎の角から数人の男が歩いてくる。ネクタイの色が緑色をしている、三年生の先輩だ。


「先客いんぞ」

「悪いけどどっかいってくんない。俺ら今から朝食だから」

「朝食っておまえ」ケラケラ

「ほらどいてどいて」


「では、悪魔らしいことでもしてご覧に入れましょうか」


「人は殺すな、この人達に罪はねえだろ」


「お優しいですなあ」


「こいつなんかしゃべってるぞ」

「俺らに喧嘩うったの?」

「はやくどっかいってくんね」


「すみません、すぐ消えます」


「おい一年生ビビらせてんじゃねえよ」ケラケラ

「ははは」

「かわいそうだろ」ケラケラ



校舎裏を後にしながら

「続きはまた今度だ、もう授業が始まる」




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