第28話 オフ会(中編)
まず犠牲になったのは、やはり市民の味方である警察。先陣を切って侵入してきた5、6匹の人型ジーズに対して、逃げる事なく拳銃を抜き「止まれ!」「手を挙げろ!」とそれぞれに叫んだが、ジーズには有効ではなかった。そもそも言葉が通じていないのか、あるいは通じていて無視されたのかは定かではないが、おそらくは人生で初めて対峙する化け物に対し、「容赦無く撃つ」という判断を咄嗟にするのは平和な日本で暮らしてきた人間には難しかった。とはいえ、強襲から数秒の内に警官の1人が掴まれ、噛みつかれると、1人が撃った。続けて1人、もう1人と立て続けに発砲が起こった。既に会場は混沌に落ちた。
普段から訓練されているはずの警官達が撃った弾は8割程が外れていたが、残りの2割はジーズに命中していた。流れ弾を恐れてマスコミも集まったメンターも警官を挟んで後ろ側に下がって屈むと、銃声は更に激しさを増した。が、肝心のダメージはというといまいちで、ジーズ達にも痛みはあるが、それが命令に背く理由にはならない。撃たれた味方を盾にして続けて会場に入ってきた大量のジーズ達を見た人々が、怒号と悲鳴と罵声をあげてそれが混ざる。
「最悪だ。だから来たくなかった」
そう呟いた浅見に、田は気づいた事を小声で尋ねる。
「ひょっとして僕達ってエサですか?」
浅見はやけに冷静な目で田を見ると、少し間を置いて答えた。
「『達』ではないかもな」
警官達は勇敢に戦った。弾を撃ち尽くした後は警棒を使って迫りくるジーズを払いのけ、後方では無線を使って外で待機している仲間に援護を要請している。裏事情として、今回の警戒に関して自衛隊側から襲撃の可能性を考慮して部隊を派遣する提案も出ていたのだが、警視庁はそれを固辞していたというのもある。それでも自衛隊側はいつでも出動出来るように準備を整えてはいたが、ジーズ達の襲撃はあまりにも速く、そしてホテル内部にピンポイントで出現するというのはあまりにも想定外だった。
「おい田! 貴様PVDOの首領なんだろ! 何とかしろ!」
戦う警官達のはるか後方で誰かがそう言うと、それに同意する声が多数あがった。
雇われボスなので何も出来ない、と正直に答える事は可能だったが、そうなるとここを無事に切り抜けた所でエフに殺される。
ここははったりだ、と田は叫ぶ。
「出でよ! 少女達!」
発進! でも召喚! でも文言は何でも良かった。ただ、この状況では彼女達の力に頼るしかなく、そして田には予感があった。何となく、来てくれるような。
まるで田の言葉に応えるように、ゲートが開いた。中から現れたのはゴルガ、トレン、ユイナ、リー、白兵戦に特化した4人の少女と、あと1人。
「おまたせしました。皆さん、後ろに下がっていて下さい」
白い髪に赤い瞳、両手を脇の下に抱えるような形で組み、そこにエネルギーを溜める構え。メンターと取材陣のいる方には背を向けている為、顔は明らかでは無いが田にはすぐに誰だかわかった。
「タマル!」
警官達を押しのける形で前衛となる4人の少女達が前に出た。
ゴルガの発動。
H-15-F『アシッド』
唾液が強力な酸性になる。
ゴルガの発動。
A-33-I『シフトカリバー』
持ち主の体重と重さを入れ替える事が出来る剣を召喚する。
『シフトカリバー』は大きさの割に非常に軽いのが特徴な剣で、重さの載っていない攻撃はそのまま弱点にもなっていた。が、ゴルガはそれを『アシッド』によってカバーしている。自身の唾液を吹きかけ、強力になった剣は、掠っただけでもジーズに致命傷を与える。ゴルガの『アシッド』はオプションによって酸性のみならず毒性も帯びており、それは対複数での戦いにおいて強力に働く。
トレンの発動。
H-31-F『フレイムタン』
口から火炎を纏ったエネルギ-弾を発射する。
トレンの発動。
A-30-O『方向転換』
非生物の進行方向を変更する。
口から発射した炎の弾を、『方向転換』によって自由自在に誘導する。敵が密集していればしている程その効果は増し、射程も近距離から遠距離まで広く対応出来るのが強みと言える。単純な組み合わせではあるが、ゴルガと同じく複数を相手にする事に長けており、トレンが操る火の弾は必中と言っても良い程に正確無比だ。その性能ゆえ、トレンは戦況を見渡す事に長けており、場が混乱していても確実に戦果をあげる。
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