　シャルルの発動。

　Ｈ－１４－Ｖ『フリ－ズ』

　視界にいる対象の生物１体の動きを２秒間停止する。

　試合開始と同時、片方の少女が先制して能力を発動した。少女の名前はシャルル。一方、開幕で『フリーズ』による停止を受けた対戦相手の少女キコは、為すすべもなく立ち尽くす。シャルルが右手の平を相手に向けながら一気に距離を詰める。

　シャルルは右手を真横に伸ばし、相手の首を腕で締めにかかる。まず右手でラリアットするようにして敵の首に二の腕を当て、そのまま両肘を折りたたんで両手を繋ぎ合わせる。『フリーズ』で動けない相手ならば首を拘束するのは非常に容易い。

　キコの発動。

　Ａ－２３－Ｉ『タイムボム』

　小型の時限爆弾を召喚する。

　『フリーズ』の解除されたキコは、後ろへと倒れこみながら爆弾を召喚する。時間設定は「３分」。『タイムボム』の爆発時の威力は設定された時間の長さに比例する。それが「３分」という長時間にもなれば、その威力は水爆程度。当然、戦闘エリアの中にいる者は全て跡形も無く一瞬の内に消滅する。

　しかも爆弾はその爆発以外では破壊不可能となっている。これで３分後には部屋の中に立っている者がいない事が確定する。

　だが、このままでは当然引き分けになる。シャルルは不審に思いながらも、メンターからの指示を忠実に守る。

　シャルルの発動。

　Ａ－０９－Ｔ『へヴィーウェイト』

　触れた対象を５ｋｇ重くする。

　なんと対象は自分自身。キコの首を拘束しつつ、倒れ込んで覆いかぶさる。この状態で更に自身の体重を増やせば、キコの脱出は不可能なように見えた。

　キコの発動。

　Ｈ－２５－Ｆ『デュラハン』

　頭部を破壊不能状態にし、胴体から分離する。

　キコの頭と身体が分離する。シャルルにとっては、首を絞めに行ったのが裏目に出た結果となった。まだ自身の体重も十分に足りておらず、拘束を逃れたキコの胴体が、シャルルから距離を取る。

　脱出成功。とはいえ、結局１度拘束を解除した所で逃げ場はない。しかしキコの真の作戦は次の能力で完成する。

　キコの発動。

　Ｃ－１８－Ｌ『ケージ』

　戦闘エリアを小さくする。更に時間経過と共に小さくなっていく。

　『デュラハン』発動時、キコが本体に設定したのは頭部側。『ケージ』は本体から後ろまでを戦闘エリアの壁で覆う能力である。キコの頭部とシャルルはほぼ密着状態だった為、戦闘エリアは２ｍ×２ｍの狭さまで一気に狭くなる。つまり、シャルルから離れた胴体は戦闘エリアの壁に埋まる事になる。

　シャルルの目の前からキコの胴体が消えた。

　２ｍ四方の狭い戦闘エリアに今あるのは、シャルル１人。キコの頭部が１つ。あと２分５５秒で爆発する水爆並の爆弾が１つ。唯一シャルルが直接攻撃可能なキコの胴体は絶対安全な壁の中に隠されてしまった。

　だが、シャルルにはまだ勝ち筋が１つだけ残されていた。

　キコの頭部は無敵なので爆発に耐えられるが、その機能は通常の頭と同じだ。口か鼻を使って肺に空気を送り、肺から心臓を使って酸素を脳に送る。

　呼吸を止めてしまえばいい。

　シャルルはキコの頭部を持ち上げると、両腕を使って鼻と口を塞いだ。キコは大きく息を吸い込んだが、それでも３分は到底息が持たない。だが一瞬でも息を吸えれば、生き残りの可能性は出てくる。

　狭い部屋。カウントダウンの進む爆弾の横で、１人の少女が別の少女の頭部を抱え込んでいた。奇妙で少し陰鬱な光景だが、試合はまだ進行中だ。シャルルは『へヴィーウェイト』で自身を重くして拘束を強める。キコはシャルルの腕に噛みついて隙間を開けようと首だけでもがく。

　その状況でたったの一呼吸が出来るかどうか、微妙な問題だったが、シャルルの最後の一手で戦況は傾く。

　シャルルの発動。

　Ｃ－２４－Ｂ『金継』

　自身の負った傷を治し、身体能力を強化する。

　キコの噛みつきで血だらけになった腕が、一瞬で修復されて黄金に輝き始めた。強化された肉体によって更に拘束も強まる。その状況をなんとかしようにも、キコの胴体は壁の中にいる。

　再拘束から約２分、キコの意識が飛んだ。

　決着。

　シャルルの勝利。

　参加メンター

　シャルル側　鷹宮センジ様

　キコ側　岩道節羅様

　感想

　今回初参加のシャルルさんが見事に勝利を収める結果となりました。まあ勝敗は正直おまけで、２人とも別方向で尖った能力の組み合わせだったと思います。シャルル側は先手拘束からの重さと回復で固めるという戦略で、キコ側は絶対死ぬ爆弾を置いて自分はコンボで逃げるという戦略ですね。どちらも能力バトル的で良いと思います。壁の中に埋まるのでウィザードリィを思い出しました。

　ご参加ありがとうございました。またよろしくお願いします。