4月4日「凍結」

 対峙するのはそれぞれ赤と青の戦闘用スーツに身を包んだ少女。赤の方は「アタエ」、青の方は「キコ」という名をそれぞれメンターから与えられている。


 試合開始。


 アタエの発動。

 C-25-L『薄氷湖』

 戦闘エリアを薄い氷の張る湖の上に変更する。


 場面が変わると共に急激に温度が下がる。一面を氷に覆われた白銀の世界。気温は-10℃を下回り、少女達の吐く息が白くなる。


 キコは氷を割らないよう、慎重に距離を詰めようと1歩を踏み出したが、アタエはそれを許さない。


 アタエの発動。

 H-01-S『空中浮遊』

 30秒間だけ空中に浮かぶ事が出来る。


 これにより、危険な氷の上からアタエは完全に離脱する。もちろん飛行と言ってもいつまでも無制限に浮いていられる訳ではないが、アタエには離れていても勝負を決められる根拠があった。


 アタエの発動。

 A-18-I『斬波刀』

 斬撃を飛ばす事の出来る刀を召喚する。


 空飛ぶ少女が刀を構えた。衝撃波を放ってくる事は当然キコにも予想出来たが、逃げ道は無かった。距離を取るにも走れば氷が割れる。

 アタエが氷上のキコを狙って刀を振った。


 キコの発動。

 C-17-M『スリーステップ』

 3回まで、2m以下の距離をワープする。


 短距離ではあるが、瞬間移動する能力。これによって氷を割らずに衝撃波を回避できる。が、『斬波刀』の放った衝撃波は氷を割り、キコがバランスを崩した。アタエはそこに容赦なく追撃を入れていく。


 最初の2発までは『スリーステップ』で回避する事に成功したが、その後は空中からの『斬波刀』に対するキコの解答はなかった。肌を切り、割れた氷の間から落ち、凍えるような寒さの水中で更に斬撃を浴びる。


 湖が次第に血に染まっていく。深刻なダメージを負ったが、それが煙幕の代わりにもなり、アタエはキコの姿を見失った。少なくとも空中からでは見つけられない。『空中浮遊』の時間制限も迫っており、アタエはまだ割れていない氷の上に1度降り立つ。


 まだ決着はついていない。だが、傷はきっちり負わせた上に氷の下では1分ほどで人は死ぬ。どうにか這い上がって来たとしても再び『空中浮遊』で空へ逃げればいい。アタエ絶対有利な状況。


 その真下でキコはチャンスを待っていた。


 キコの『スリーステップ』再発動。最大2mの移動が出来るこの能力ならば、氷の下から上に移動する事は容易い。だが、出血と凍傷でボロボロの身体では、例え意表をついて背後を取ったとしても、一撃を加える事すら難しい。


 アタエもインターバルの終わった『空中浮遊』を再発動させる。このまま近接して戦っても勝利は濃厚だが、距離を取れば更に確実だからだ。


 キコの発動。

 A-08-T『融合』

 自らの手と、他の生物に触れた部位を結合させる。


 2人の身体が空中へ浮かぶ。『融合』の効果によってアタエとキコの肉体は1つの物になっている為、しがみついているという訳ではなく、キコ自体も浮いている。

 それでもまだ、アタエの有利は揺るがない。ダメージは十分に与えており、空中戦でも決着をつけられる。


 次の瞬間、キコが『融合』を解除した。


 アタエがそれに気づいた次の瞬間、『斬波刀』の鋭い刃がアタエの心臓に突き刺さっていた。


 キコの発動。

 H-08-W『時間停止』

 2秒間、自身以外の時間を止める。その後、自身の全ての能力を封印する。


 傷だらけのキコであっても、凍りついた時間の中でなら相手から刀を奪って刺すくらいの事は出来る。


 2人の少女が空から落ちて、氷上に叩きつけられた。片方は裂傷と凍傷で満身創痍だったが、もう片方は既に絶命している。


 決着。

 キコの勝利。




 参加メンター

 キコ側 岩道節羅様

 アタエ側 滝杉こげお様


 今回はかなりのワンサイドゲームから最後にまとめてどかっと逆転という流れになりました。やはり時間停止は能力ものの華ですね。本当はもらっていた作戦では開幕で時間停止だったんですが、演出上の都合で前後させてしまいました。すいません。

 アタエ側の戦略もかなりいやらしくて良い感じでしたね。

 ご参加ありがとうございました。

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