4月2日「棘の中の黄金」
対峙するのはそれぞれ赤と青の戦闘用スーツに身を包んだ少女。赤の方は「アタエ」、青の方は「キコ」という名をそれぞれメンターから与えられている。
試合開始。
アタエの発動。
H-18-F『ヴァンパリズム』
生物の血を飲み、自身のCORE系能力を強化する。
キコの発動。
H-18-F『ヴァンパリズム』
生物の血を飲み、自身のCORE系能力を強化する。
両者ともに自身の親指を少しだけ齧り、血を飲み込む。奇しくも同じ能力を発動させる2人だったが、ここからの戦略はそれぞれ大きく違う。
アタエの発動。
C-19-G『スナイプサボテン』
トゲを飛ばすサボテンを召喚する。
召喚するのが植物なだけに、出来る命令は「撃て」の1種類のみ。必然、それによってサボテンが取る行動も自身の1番太いトゲを飛ばす1つに限られる。
キコの発動。
C-24-B『金継』
自身の負った傷を治し、身体能力を強化する。
ほんの僅かな傷でもこの能力は発動条件を満たす。黄金に光ったのは指先だけだが、キコの身体能力は指先のみならず全体が強化されている。しかも『ヴァンパリズム』でその強化具合は更に増しており、漲る力で距離を詰めて相手を仕留めるのが今回のキコ側の戦略だった。
アタエの発動。
A-04-O『マグネット』
対象の物体を別の対象にぶつける。
迫ってくるキコに対し、この能力によりサボテンをぶつけるアタエ。足を止めてなんとか近づけないつもりのようだ。キコもそれは分かってしているが、サボテンにはトゲが生えており、無視出来る物ではない。。仕方なく飛んできたサボテンを両腕で防御する。
その瞬間、「撃て」とアタエが命令した。
近距離で発射される高速のトゲは、キコの身体を容赦なく貫いた。辺りにキコの血が飛び散る。『金継』で治せる程度の傷ではあるが、再発動するまでにはまだ1分近く時間がかかる。
キコの発動。
A-17-T『ヒール』
触れた生物の傷を治す。
2つ目の回復能力を自身に向かって発動させる。『ミサイルサボテン』によって負った傷はこれによって癒えたが、前を向くと更にもう1つのサボテンが召喚されていた。
アタエは『マグネット』を利用しキコの血を回収し、飲み込んでいた。『ヴァンパリズム』の効果により、『ミサイルサボテン』は2段階強化されている。その再発動インターバルは5秒おきで、アタエはキコから離れながら凄まじいスピードでサボテンを植えていく。
それでも距離を詰めようとするキコに対して、アタエは再度『マグネット』でサボテンをぶつける。キコは再びガードして、砕けたサボテンの欠片をアタエに向かって投げた。投擲力も強化されていたが、距離が開いていてはキコの頬にかすり傷を負わせる程度の反撃にしかならなかった。
その後、距離を詰めようとするキコと距離を取りつつサボテンを投げるアタエの攻防は続いた。だが、限界は確実に迫る。『ヒール』は傷は癒せても失った血は取り戻せない。そしてサボテンは増えれば増えるほど『マグネット』によって集まってくる数が増える。
1分ほどが経過し、サボテンの数は10。『マグネット』は1度の発動でその全てをキコに集合させる事が出来る。そしてアタエは、最初の1つを除き他のサボテンに対してまだ「撃て」の命令を下していない。
決着の時が迫っていた。
まずはアタエが『マグネット』を再発動。全てのサボテンがキコに向かって飛んでくる。細かいトゲが全身に刺さり、それだけでも本来ならば手痛い傷になるだが、『ヒール』によって即時癒す。「撃て」アタエにそう命令されたサボテン達が一斉にトゲを発射する。キコの全身をトゲが貫く。キコには再発動が可能になった『金継』があるが、『金継』で治せる傷の範囲には限界があり、これは明らかにその範囲を超えていた。
だが、キコはもう1つの能力『ヴァンパリズム』を発動させていた。『ヴァンパリズム』はC-B系能力である『金継』の効果を強化する。それは治せる傷の範囲を広げる役にも立っていた。
ここにおいてアタエの疑問は、キコがいつどうやってアタエ自身の血を入手したのかについてだった。この試合において、キコはまだアタエに指1本すら触れられていない。当然キコとアタエ以外の生物もいない。サボテンは植物なので血は通っていない。
アタエはやがて疑問の答えに辿りつく。発動した『マグネット』が、自身の血をつけたサボテンの欠片をキコの元に届けていたという答えに。
キコの全身が眩しく輝く。負ったはずの傷は長所に、受けたはずの痛みは強みに。『金継』+『ヴァンパリズム』の超強化により、黄金の塊と化したキコの力は今や、一撃で決着をつけられるまでに高められている。
だが、足りなかった。
金で覆われたキコの姿。刺さったトゲは全て抜け落ち、見ただけでもその内に秘めた力が分かる。しかしキコは1歩も動かない。いや、動けない。アタエは警戒しつつもそれを見つめる。
『金継』の治癒にはもう1つの上限がある。それは、全身の4分の3を金に覆われる事。『ヴァンパリズム』は傷を癒す範囲を強化したが、発動者の死には無頓着だった。
決着。
アタエの勝利。
参加メンター
キコ側 岩道節羅様
アタエ側 滝杉こげお様
感想
『ヴァンパリズム』のミラーマッチから近距離対遠距離での耐久戦。相手の能力を利用して逆転フラグ。その結果自滅という見所の多い試合だったかなと思います。2人ともクセのある能力を複数使っていて、それぞれ別方向に尖っている戦略でした。
ご参加ありがとうございました。
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