3月30日「嵐の中の飛頭蛮」
試合開始。
対峙するのはそれぞれ赤と青の戦闘用スーツに身を包んだ少女。赤の方には名前が無いが、青は「ヒメカ」という名だ。
ヒメカの発動。
C-07-L『台風』
戦闘エリアを台風の目の中に変更する。
暴風渦巻く危険な地形。数歩外に踏み出せば立っていられなくなる程の気流が発生している。その中心だけは不気味な程に穏やかで、2人が戦うのに十分なスペースがある。しかしそれも束の間の話。5分後にはこの安全な領域は無くなり、殺意に満ちた大気が全てを飲み込む事になる。
ヒメカのC-L系能力発動を起点に試合は動き出す。
赤の発動。
A-24-R『オートリフ』
対象の能力の発動に対してエネルギー弾を発射する。
一方が能力を発動した事により発動する能力。赤の手の平から白く光ったエネルギー弾が何の反動も予備動作も無く発射された。
放たれたエネルギー弾を見て、ヒメカはそれが不可避な物であると判断した。無理に避けて変な当たり方をすれば自ら出した『台風』に突っ込んでしまう恐れすらある。だが、ここでダメージを喰らうのは今後の作戦に支障が出る。ヒメカが選んだのは防御だった。
ヒメカの発動。
H-25-F『デュラハン』
頭部を破壊不能状態にし、胴体から分離する。
自身の首を右手に持ち、それを盾のように使って相手の『オートリフ』を受ける。もちろん、『デュラハン』が発動した事によって第2の弾が既に発射されているが、それすらも無敵の生首は傷を負わずに受ける事が出来た。『オートリフ』はその発動が発動者の任意ではなく、相手の発動に対して自動で行ってしまう性質がある為、軌道が読まれやすいという弱点を持っている。
そしてこれによりヒメカの手元には必要なパーツが揃った。
ヒメカの発動。
A-28-T『サイズマスター』
左手で触れた物を小さくし、右手で触れた物を大きくする。
右手で触れているのは自身の頭部。そして左手で触れているのは自身の胴体。
『デュラハン』の頭部は無敵化している為、A-T系能力である『サイズマスター』の性質変更効果を受けない。よってその大きさに変化はないが、胴体の方はその限りではない。
そして、『サイズマスター』は触れて離してを繰り返す事によって能力の再発動が容易なのも特徴の1つだ。直接的な攻撃を受けていなければ、最低発動単位の0.2秒間隔でサイズの変更が行える。もちろんその度に赤の『オートリフ』が発動する事になるが、軌道さえ呼んでいればヒメカには自身の頭部という無敵の盾がある。
とはいえ、そもそも身体を小さくして一体どうなるのか。ヒメカのメンターである百足陣三郎は、「外道こそ正道」を信条とする男である。要するに小さくなったヒメカの胴体を、自身の無敵化した頭部の口内に入れ、台風の中に逃げようという作戦なのだ。まさに外道な戦略。
もしそれが成立すれば、赤側に打つ手はない。仮に台風の中を追って行き、頭部を捕まえる事が出来たとしても今度はそれを開ける手段が無い。相手の生首を持って、その中にある身体をどうにも出来ず途方に暮れるだけだ。そして5分後には風が全てを飲み込み、赤だけが死に至る。
だが、そうさせない戦略が赤にはあった。
ヒメカは気づく。『サイズマスター』を確かに何度も発動しているにも関わらず、自分の身体が小さくなっていない。
赤の発動。
H-17-W『ラグ』
自身以外が持つ全ての能力の発動を最大で3秒遅らせる。
能力の発動自体を遅らせる能力。『オートリフ』同様に相手の能力に依存する能力を2つも採用している。赤側のメンターも百足陣三郎に負けず劣らず外道を愛する者のようだ。
だがヒメカはうろたえない。例え能力の発生が多少遅れたとしても、作戦自体に変更はない。右手に頭部を持ったまま、左手で自身の身体に何度も触れる。距離が取れていて移動や回避をしなくて良い分、0.2秒置きの発動以外時間のロスはない。
このまま身体を小さくしていって逃げ切りが確定かと思われた時、赤の姿がヒメカの目の前から消えた。
赤側の発動。
C-11-M『バックワーズ』
対象の生物の背後に瞬間移動する。
瞬間移動とはいえ、発動してから移動が完了するまでに必要な時間は2秒間。その間にヒメカは相手を待ち構える事が出来るが、もう遅い。既にヒメカは『サイズマスター』を10回程度発動しており、その全てに『ラグ』の遅延がかかっている。
ヒメカの胴体が振り向き、無敵の頭部を構えた。
赤の移動完了と同時に、その両手から凄まじい発光と共に10発のエネルギー弾が放たれた。これだけの威力があれば、頭部自体は無敵でもそれを支える事が出来ない。ましてや自身の『サイズマスター』により既に身体は小さくなり始めている。
防ぎ漏らした数多のエネルギー弾がヒメカの身体を徹底的に破壊した。
決着。
赤側の勝利。
参加メンター
青側 百足陣三郎様
赤側 滝杉こげお様
感想。
今回はどちらもなかなか玄人好みというか邪道対決という感じで、興味深かったですね。『デュラハン』以外はどれも本編では使ってない能力だったんですが、その効果とか使い方を汲んでくれて、作戦を立ててもらえた事は嬉しいです。
微妙に関係ない話。PVDOでは能力バトルによくある物はとりあえず一通り揃えようと思ったんですが、「未来予知」と「精神操作」系だけは外しました。仮設定で回してみると、余りにも強すぎて持ってる方が毎回勝ちそうだったからなんですが、今回赤側が使ってくれた『ラグ』はその調整版という感じで後出しが強い能力です。全く効かない相手もいるという所が採用の難しいポイントかなという感じです。
何にせよ色んな能力を使って頂いてありがたい限りです。またのご参加をお待ちしております。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます