3月26日「刀撃ホークアイ」

 試合開始。


 対峙するのはそれぞれ赤と青の戦闘用スーツに身を包んだ少女。赤の方には名前が無いが、青には「キコ」という名前がある。


 赤の発動。

 H-29-V『死線』

 2分間見続けた生物を殺す。


 これにより、2分後にキコの敗北が決定される。2分以内に決着をつけるか、どうにかして1度視界から外れない限りキコはその死から逃れられない。


 キコの発動。

 A-18-I『斬波刀』

 斬撃を飛ばす事の出来る刀を召喚する。


 その運命から抗うように、キコが握ったのは1本の刀。

 対する赤が選んだのは虎。


 赤の発動。

 C-14-G『猛獣使い』

 虎、鷹、鮫の中から1匹を召喚する。


 召喚された虎が、その鋭い牙と爪で刀を握ったキコを威嚇する。

 『斬波刀』と『猛獣使い』の戦力はほぼ互角。この状態ならば、本体の支援がある分だけ赤が有利であり、戦闘中のどさくさに紛れて相手から刀を奪える可能性もある。しかも『死線』はまだ切れず、時間は刻一刻と経過している。


 だが、赤は自分からは攻めに行かないようだった。何か狙いがある、とキコは直感する。


 キコの発動。

 H-23-W『ワン』

 この能力以外の全ての能力を1度だけ発動可能にする。


 この能力により、既に発動した『斬波刀』を再発動させる。現れた2振り目の刀をもう片方の手に握ったキコが、二刀流の構えを取る。両方の刀を順手に持ち、上弦と下弦に別れて構える。ゆらめく2つの刃紋の間から、対峙する虎を真っ直ぐに見据えるキコ。


 だが、キコの発動した『ワン』は赤の秘めていた作戦を進める助けもしてしまった。


 赤の発動。

 A-08-T『融合』

 自らの手と、他の生物に触れた部位を結合させる。


 これにより、召喚した虎と赤の本体が一体化する。虎を真っ先に仕掛けなかったのには理由がある。

 この状態から『ワン』によってインターバルを解除された『猛獣使い』を再発動すればどうなるか。


 眩い光が1頭と1人を一瞬包み、その中から1羽の真紅の鷹が現れた。鷹は天井に向かって真っ直ぐに飛び上がり、天井を旋回し始める。猛禽類独特の眼光の切れ味は刀にも負けず劣らず、『死線』の効果は持続している。


 妖刀二刀流といえども、それを扱う少女は素人であり、そこから放つ衝撃波も高々知れている。空を舞う鷹を打ち落とせる程ではない。


 このままでは、鷹が攻めてこない限りキコには攻撃の機会すら与えられず、知らず知らずの内に着実に進行してくる死に対しても打つ手はない。


 だが、キコには切り札があった。


 キコの発動。

 C-10-B『限定強化』

 これ以外の能力が封印状態の時のみ、身体能力を強化する。


 『ワン』『斬波刀』両方が封印されている状態であれば、その肉体は達人の領域に達する。


 キコがまず1本の刀を真っ直ぐに伸ばし、空を舞う鷹に狙いをつける。そこからもう1本の刀を振りかぶり、力いっぱいに大きく斬ると、その力でキコの身体は空中を1回転した。最初に狙いをつけていた刀が全く同じ軌道を辿り、2本の刀から放たれた衝撃波は連続して倍化。鷹に目掛けて飛んでいった。


 赤き鷹の羽が一瞬逆立つ。その優雅な飛行は中断され、鷹はその身体を壁に激しく打ちつけた。


 落ちる鷹を見据えながら、キコが残心する。


 決着

 キコの勝利。




 参加メンター

 赤側 滝杉こげお様

 キコ側 岩道節羅様


 感想

 偶然ですが、二刀流vs変身した鷹という和テイストな試合になりました。相性としては正直、与えられた時間で何回でも遠距離攻撃を繰り出せる『斬波刀』がかなり有利かなという所ですが、鷹への変身は単純にカッコいいですね。

 昨日の更新分に続き『融合』を上手く扱ったコンボでした。遠距離攻撃を持っていない相手には完封出来るというのはなかなか恐ろしいですが、いかんせん2分は長く感じますね。

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