第46話 瞬殺長期戦
11回戦第1試合。
今回も、前々回と同様に偶然だが直前で有効な能力が手に入ってラッキーだった。ここに来て運が収束してきているのか、あるいは手持ちの能力の種類が増えた事により、麻雀で言う所の受けられる牌が多くなって、何が来てもオッケーな状態になっているのか。今回は初投入の戦略だが、ちょっとばかり自信がある。
事前に1つだけ、あえて宣言しておくならば、今回は試合時間は長引くかもしれないが、勝負は開始直後の一瞬で決まるという事だけだ。
試合開始。
開始から0.2秒。
タマルの発動。
A-26-O『暴発』
対戦相手の能力を全て発動する。
開始から0.4秒。
対戦相手の発動。
H-27-S『ライフゲージ』
発動者の受ける物理的なダメージを数値に変換し、1000から減らしていく。
対戦相手の頭上に視認可能なHPが表示される。
開始から0.6秒。
対戦相手の発動。
A-06-R『バーストショット』
使用可能な能力を1つ封印し、強力なエネルギー弾を放つ。
封印する能力は現在発動中の『ライフゲージ』。表示されたHPが消える。
開始から0.8秒。
対戦相手の発動。
C-17-M『スリーステップ』
3回まで、2m以下の距離をワープする。
この対戦相手3つ目の発動に対して、
タマルの発動。
H-02-W『ラストワード』
対戦相手が発動した3つ目の能力を打ち消す。
短距離ワープ能力の発動が打ち消され、対戦相手が放った『バーストショット』のエネルギー弾がタマルに向かって飛んでくる。
開始から1秒。
タマルの発動。
C-14-G『猛獣使い』
虎、鷹、鮫の中から1匹を召喚する。
前方に虎を召喚し、身代わりにする。『バーストショット』は虎の巨体が吹っ飛ぶ程の威力だったが、かろうじて虎はまだ死んではいない。重傷でかわいそうな状態だが、それでもまだタマルの味方だ。
その後、タマルと相手は何の能力も持たないまま殴り合いを始めた。どちらにもC-B系の身体能力強化はかかっていないし、格闘に有利な能力も無い。
少女達には一応格闘技の心得が最低限レベルあるらしく、お互いにそれらしく拳を構えてジャブを中心に打ち合い、フェイントで蹴りを出してみたりとかもするが、いかんせん同一人物であるだけに地味な戦いになる。
タマルの『暴発』は発動済み。対戦相手の『ライフゲージ』は『バーストショット』により封印、『スリーステップ』は『ラストワード』によって打ち消されて封印。
残るは手負いの虎、『猛獣使い』のみとなった。
2人は約1分ほど一進一退の攻防を繰り広げ、両者ともに疲れが出始めた時、タマルが休んで少し回復した虎に攻めるよう指示を出した。脚は折れ、肋骨もおそらく肺に刺さって片目も潰れてるが、既に1戦終えて疲労の溜まった少女を倒すくらいなら問題ないだろう。
決着。
タマルの勝利。
冒頭の宣言通りの結果となった。勝因は明らかで、今回俺が採用した『暴発』+『ラストワード』。能力を強制的に3つ発動させて最後の1つを封印するという凶悪なコンボだ。『暴発』は相手の能力をHEAD、ARMS、COREの順番で発動させる。つまり相手に先手を取られていなければ、ほぼ確実に相手のCORE能力を封印する事が出来る。
COREには格闘になった時に有利を取れるC-B系身体能力強化や数の有利を築けるC-G系召喚があり、出来るなら1番封印しておきたい物が比較的に多い。また、今回は相手が『バーストショット』を採用してくれていて、なおかつそれで『ライフゲージ』を封印してくれたのも勝因の1つとなった。
採用していた能力から見て、対戦相手がやりたかった作戦はじりじりと射程距離内に近づき、相手の攻撃を『ライフゲージ』でやり過ごし、『スリーステップ』で距離を詰め、こちらに『バーストショット』を撃ち込むという物だったのだろう。そして『スリーステップ』の3歩目だけは温存し、いざとなったら『バーストショット』でそれを封印して2発目を撃ち込むつもりだったはずだ。だから既に発動している『ライフゲージ』を先に封印した。だが、こちらには『ラストワード』があり、その裏を取れた。
ふう。ちょっと難しい話になってきた。
能力同士の相互作用を扱う時はこういうややこしい事が良くあるが、要するに俺の作戦はまたまた的中したという事だ。『暴発』+『ラストワード』の封殺コンボは、相手の能力が全く分からない初戦を取るのに非常に便利だ。
人間、3連戦となれば1戦目をまず勝って精神的に有利になりたいと思うものだし、自ずと1戦目は勝ちの堅い作戦で来る。そこを乱してやる事によって有利を作れる。流石は浅見先輩に認められただけの事はあるな、俺。
現在の所持能力。
H-21-W『ワールドエンド』残り:1回
H-04-V『眼制疲労』残り:2回
H-30-W『斥界』残り:1回
H-06-V『後退却下』残り:2回
H-14-V『フリ-ズ』 残り:3回
H-02-W『ラストワード』残り:4回
A-10-R『チャージショット』 残り:8回
A-11-I『バリア』 残り:1回
A-26-O『暴発』残り:3回
C-14-G『猛獣使い』残り:1回
C-16-G『用心棒』残り:1回
C-04-B『代償強化』残り:2回
Cー22ーM『スライド』 残り:3回
C-30-L『フォグ』残り:4回
今回は『チャージショット』を使わなかったので、在庫問題は解決していない。だが、あれだけ大量にあったC-G系も残り僅か2つとなったし、その内なんとかなるだろう。
問題はリクエストだが、個数で言えばARMSかCOREのどちらかになるが、これでまた『チャージショット』の追加を引いた日には、もうそれ俺に撃ち込んでくれという気分になるだろう。
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