第27話 1

 遥か遠くに地平線の見える荒地。だが『岩石地帯』ほど岩が転がっている訳ではなく、遮蔽物として使える物は全くない。潤いの全くない、ひたすら硬そうな土の地面が広がっている。にも関わらず、危険度はロケーション能力の中でも最高レベルだと俺は思う。


 相手の発動。

 C-15-L『地雷原』

 戦闘エリアを地雷の埋まっている荒野に変更する。


 一見何の変哲もなく盛り上がりにかけるこの場所も、その少し下に大量の地雷が埋まっていると知ればまた違って見えるはずだ。注意深く観察すれば、地雷のある場所は地面の色が違うので分かるし、仮に踏んでも埋まっているのは威力の低い跳ね上げ式地雷なので、普通の地雷のように一瞬で足を失うという訳ではない。もちろん防御しても大ダメージは食らうので無視は出来ない。


 試合開始と同時に相手が発動したこの能力だけで、2人とも迂闊に距離を近づける訳にはいかなくなった。だが、それはこちらに取って好都合。


 タマルの発動

 C-08-G『番犬』

 戦闘用の犬を召喚する。


 地面に気をつけながら、タマルは犬と共にゆっくりと後ろに下がって距離を取る。犬はどうやら優れた嗅覚によって地雷の埋まっている場所が分かるらしく、タマルよりも上手く避けてくれている。


 『地雷原』を最初に使って来た以上、おそらく相手は何らかの遠距離攻撃手段を持っているはず。俺がそう考えた瞬間、相手が予想外の行動に出た。


 地雷を自ら踏んだのだ。場所を目で確認し、わざと踏んだ。500mlペットボトルくらいの大きさの筒が地面の下から飛び上がり、相手の目の前に浮いた。爆発する。あれ? 勝ちか? そんな甘い考えが頭をかすめたがそんな訳なかった。


 相手の発動。

 A-04-O『マグネット』

 対象の物体を別の対象にぶつける。


 相手の発動

 H-10-F『ブレス』

 口から突風を発生させる。


 2つの能力をほぼ同時に発動させ、跳ね上がった地雷は高速でタマルの方に飛んで来た。『マグネット』の対象を地雷とタマルに指定し、飛んで行く所を『ブレス』の突風で加速。確かにこの組み合わせなら、地雷は爆発する前にタマルに接近する。


 だがこちらも、

 タマルの発動。

 Aー11ーI『バリア』

 手の平から透明な障壁を召喚する。


 タマルの発動。

 H-30-W『斥界』

 全ての物が反発し合う。


 防御手段はある。距離がある程度あったので、着弾する前に地雷が爆発した。しかし風のせいで爆風も破片もタマル向きに流れる。『斥界』によりそれらは全て反発しあい、『バリア』はの防御効果は上がる。舞い上がった塵が収まり煙が流された後、タマルの無事な姿が映されて俺はほっとした。


 相手の戦略は跳ね上げ式地雷をわざと起動し、それを『マグネット』+『ブロウ』でこちらに押し付けるという物のようだ。確かに理に適っている。だが、そのコンボで攻撃を仕掛けるにはわざわざ地面に埋まってる地雷を探し、飛ばしやすいように起動させる手順を踏まねばならず、『ブレス』には10秒から20秒のインターバルもある。相手が接近してこないなら、守りに徹するのは比較的容易い。


 結局、何度かの爆撃を受けて『バリア』が壊れた時、試合開始から2分が経過していた。召喚した犬は5体、いずれもタマルと『バリア』の後ろに隠れて無傷だ。以前の試合から考えても、相手にもう防御手段が無ければ、十分に倒せる数。


 しかもわざわざ相手が埋まってる地雷を除去してくれている。だがまだ埋まっている地帯には、相手といえど迂闊に入り込む事は出来ない。『地雷原』の弱点は、能力を発動した本人もどこに地雷が埋まってるかについてよく分かっていない点だ。

 

 そして相手にはもう犬の軍勢を跳ね除ける為の能力が残されていない。


 決着。

 タマルの勝利。


 だが今回の戦いでついに『番犬』とはお別れする事になってしまった。残り回数が0になったからだ。初戦から勝利に貢献してくれて、本当に助かった。もし俺が今後犬を飼う事になったら忠実で頼りになるジャーマンシェパードを選ぼうと固く心に誓う。


 現在の所持能力。

 H-14-V『フリ-ズ』残り:1回

 H-21-W『ワールドエンド』残り:3回

 H-04-V『眼制疲労』残り:5回

 H-30-W『斥界』残り:2回


 A-10-R『チャージショット』 残り:2回

 A-11-I『バリア』 残り:2回

 A-12-I『インフィナイフ』残り:2回

 A-26-O『暴発』残り:4回


 C-14-G『猛獣使い』残り:5回

 C-12-G『劣化分身』残り:1回

 C-16-G『用心棒』残り:3回


 こう見ると、やはり『猛獣使い』の不良在庫感が半端ないな。最初からあるのにまだ1回も使ってないというのはまずい。別に弱くはないと思うんだが、やはりCーG系被りの状況においては再召喚も出来る他の能力の方が使い道がある。


 だがいつまでも在庫を抱えておくのはまずい。という事で、今回の希望能力はARMS系を選んだ。理由は前にも述べた通り、CーG系を生かす能力がいくつか存在しているので、それを引く為だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る