第19話 犬頼み
3戦目、1勝1敗で迎えた最終戦。勝てば1千万、負ければタマルの死が近づく。
試合が始まった。
まずはタマルの発動。
C-08-G『番犬』
戦闘用の犬を召喚する。
初戦以来久々の登場となるわんわん。1匹あたりの戦闘能力は低いが、30秒で再召喚出来る事が売りのCーG系召喚能力。眼光鋭いシェパード犬にタマルは「ついてきて」と指示をして後退する。
こちらが犬を増やしまくるのを相手はのんびり待ってはくれない。召喚とほぼ同時に前進し、距離を詰めてきた。確実に当てるのを狙ってか、まだ『雹弾』は打たない。
裏をかいて利を得た2戦目とは違って、相手もこの3戦目にはランクアップがかかってる。能力の在庫があるなら、全力で取りに来るはずだ。
戦闘開始から5秒。タマルが壁際に追い込まれる。ここからは距離は詰まる一方だ。『番犬』のインターバルは30秒なので、2体目の召喚すらまだまだ遠い。犬を盾にすれば初撃は凌げるかもしれない。だがそれではジリ貧になる。
間合いは5mを切った。おそらくタマルが『雹弾』を避けきれない距離。
相手の発動。
Aー22ーR『雹弾』
何かに触れると破裂する氷の弾を手の平から発射する。
やはり来た。ここから今回俺が立てた作戦を開始する。
タマルの発動。
Aー11ーI『バリア』
手の平から透明な障壁を召喚する。
防御専門の能力。普通に使っても犬1、2匹分くらいの時間なら稼げるかもしれないが、それでは駄目だ。だから俺はもう1つの能力を足す事にした。不運続きの俺が今日、ようやく引き当てた、「最強」攻略の鍵。
タマルの発動。
H-30-W『斥界』
全ての物が反発し合う。
人、動物、召喚物、全ての物がお互いに反発し合うということは、まずタマルと『バリア』が反発して離れる。そして『バリア』と『雹弾』が反発しつつも勢いで命中。『雹弾』の欠片がお互いに反発。更に距離を詰めていた相手の方に弾いて戻す。
『バリア』の耐久度は、『雹弾』最初の命中の分しか減っておらず、欠片による散弾銃のような攻撃は『斥界』がほぼ無力化した。相手もこれには驚いたようで、一旦距離を取る。タマルが飛ばした『バリア』は、『バリア』自身の能力で任意に消す事が出来るので、相手に『バリア』をタコ殴りにされる前に消す。
渾身のカウンターが決まった所で、2匹目の犬召喚に成功。状況の悪さに気づいたらしく、相手は再び向かって来た。『雹弾』はクールダウン中だが、それはもう1つの方が発動可能になった事を意味している。
相手の発動
C-10-B『限定強化』
これ以外の能力が封印状態の時のみ、身体能力を強化する。
封印状態の能力の分だけ強化された拳。まともに喰らえば重い一撃だが、こちらはまた同じ事を繰り返す。『バリア』を召喚。それをタマルが弾き、弾かれた『バリア』が相手の攻撃を防ぎつつ相手自身の身体を弾く。
ビリヤードのボールみたいに弾きあって再び距離が開く。バリアの損傷も至って軽微で、まだまだ何度も同じ事を繰り返せる。
相手の発動。
H-14-V『フリ-ズ』
視界にいる対象の生物1体の動きを2秒間停止する。
攻守ともに便利なこの能力だが、唯一の弱点は対象の能力発動までは止められないという事だ。1歩も動かずに実現出来るこちらの『バリア』+『斥界』に対しては何の阻害効果も無く、無駄撃ちになるが、『限定強化』の為に使っておくしかない。
だが時間は順調に経過していく。繰り返される攻撃で『バリア』の耐久度も半分を切ったが、飛んで戻って飛んで戻ってを繰り返している以上どうしても時間はかかる。そしてこちらにはその時間を有効に活用できる手段があり、相手にはない、
試合開始から3分。相手はひたすら『フリーズ』と『雹弾』を空打ちし、『限定強化』で殴り、そして吹き飛ばされるというのを繰り返した。その甲斐あっていよいよ『バリア』の耐久度は無くなって消滅したが、こちらには『番犬』が7匹いる。
「行け!」
タマルの命令により、7匹の犬が牙を剥いて一斉に飛びかかる。
1匹目は『フリーズ』で動きを止められる。
2匹目は『雹弾』で、3匹目は『雹弾』の破片で。
4匹目は『限定強化』した肉体による蹴り、5匹目は裏拳。だがそこまで。6匹目が軸足に食らいつくと、7匹目が飛びかかって腕に噛みつく。そうこうしてる内に新たに召喚した8匹目がめちゃくちゃ吠えた頃『フリーズ』の解除された1匹目が再度参戦する。
言い方は悪いがまさにリンチだ。全体攻撃が無ければ対処のしようがない。『斥界』は解除出来ない能力なので、犬はやや動きにくそうではあるが、それは相手も同じ。それに犬と犬で挟む形になるので、反発する力は相殺される。
決着。タマルの勝利。
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