第15話 運
タマルの発動。
C-12-G『劣化分身』
能力を持たない自身の分身を召喚する。
タマルの発動。
Aー12ーI『インフィナイフ』
ナイフを召喚する。
今回、先手はこちらが取った。前回のように相手がロケーション系の能力を使った訳でもないので、戦闘エリアはいつも通りの殺風景な空間だ。
体勢を整えたこちらとは違って、相手は様子見しているようで、まだ何も能力を発動していない。
タマルと分身が相手に向かってじりじりと近づいていく。このまま囲んで刺せば勝てる。シンプルだが強力な戦術。もしかしてこれが、俺にとっての「最強」なんじゃないか、そう思った時、相手が動いた。
相手の発動。
Aー22ーR『雹弾』
何かに触れると破裂する氷の弾を手の平から発射する。
相手の手の平から放たれた氷の弾。どうやら分身を先に狙ったようで、分身はナイフを構えてそれを防ごうとした。が、駄目だった。命中した『雹弾』は能力の説明にある通り分散し、尖った欠片が分身の体に刺さる。
だが、これはチャンスだ。
タマルの発動。
H-14-V『フリ-ズ』
視界にいる対象の生物1体の動きを2秒間停止する。
相手は分身に対して能力を使った。次の雹弾が放たれるまではまだ20秒丸々ある。それだけあれば、本体のナイフ攻撃だけでも十分倒せる。フリーズで固めて急所を刺す。これが新たな勝ち筋だ。
相手の発動。
H-14-V『フリ-ズ』
視界にいる対象の生物1体の動きを2秒間停止する。
!?
思わず頭の上に言葉にならない驚きが浮かんだ。同じ能力を相手に使われる事はあり得る話だ。それはシステム上仕方がない。しかし相手がここまでで使った2つの能力。『雹弾』、『フリーズ』これは浅見先輩が言っていた例の……。
ピタッと2秒、お互いに停止するタマルと相手。タマルの手にはナイフ。一方相手は素手。ぱっと見ならこちらの方が有利に見えるが、冷や汗が背中を伝う。
『フリーズ』がほぼ同時に解除。タマルがナイフで相手を真っ直ぐ刺しに行く。
相手の発動。
C-10-B『限定強化』
これ以外の能力が封印状態の時のみ、身体能力を強化する。
嫌な予感はぴたりと当たったようだ。タマルのナイフを持った手が、相手の回し蹴りによって砕かれる。タマルもそれに対応してすかさずもう片方の手にナイフを召喚したが、相手の肉体のスピードの方が早い。手刀で叩き落とされる。傷を負いながらもようやく起き上がった分身も、顔面に右ストレートを入れられて倒れた。
『限定強化』の肉体強化度合いは、『フリーズ』、『雹弾』が使えない間は最高に達する。こちらはもうしばらく『フリーズ』を使えないし、ナイフ攻撃は当たる気がしない。分身は戦闘不能。何とか防御に徹して、距離を取れたとしても、相手の『雹弾』が復活すれば元の木阿弥。
決着、タマルの敗北。
強い。
浅見先輩がこの戦略を最強だと評価していた理由を、俺は身をもって理解した。
……というか俺、運悪すぎだろ。
頭をかきむしりながら転げる。最強の組み合わせを聞いた直後にそれにぶち当たって負けるって! 7億通りも組み合わせあるのに! 一体何なんだこの巡り合わせ!
というか、運悪い自慢ついでにもう1つ言わせてくれ。
昨日、サロンで次のリクエストを相談した。浅見先輩も、雨宮先輩も口を揃えてこう言った。
「COREでしょ」
やはり、手持ち能力がC-G系に限られているのは、相当に厳しい状況らしい。浅見先輩曰く、
「ARMSとHEADを生かすにも肉体強化は必須だ。何としてでもC-B系引かないとこの先きついだろ。馬鹿か?」
雨宮先輩も、
「せめてC-M系だねえ。遠距離にしても近距離にしてもそれを生かすのが無いと。つか有りえないっしょ。C-G系3枚、A-I系2枚って。召喚士かって」
酷い挟み撃ちだった。
いや、分かってはいたんですよ。ただこっちはこっちでちょっと色々事情がごにょごにょ。
仕方が無い。リクエストはCORE。
そして今日届いた新しい能力が、
C-16-G『用心棒』
身体能力の強化された人間を召喚する。その人間が死亡した場合、発動者も死亡する。
呑もう。呑むしかない。こんな理不尽な目に会ったら、もう呑むしかないじゃないか。
現在の所持能力。
H-14-V『フリ-ズ』残り:1回
H-21-W『ワールドエンド』残り:3回
H-04-V『眼制疲労』残り:5回
A-10-R『チャージショット』 残り:2回
A-11-I『バリア』 残り:5回
A-12-I『インフィナイフ』残り:2回
C-14-G『猛獣使い』残り:5回
C-08-G『番犬』残り:3回
C-12-G『劣化分身』残り:1回
C-16-G『用心棒』残り:5回
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