❁episode.3

♢




「僕も…いつかああなるのかな。」


ユウがポツリと呟く。弱々しく笑みを作る彼の美しい碧色の眼は、片方が"その"子供と同じ白い色。…周りには傷跡の様な黒い痣が白と対照的に刻まれて居る。


「…。」


大丈夫。その一言を口に出せずサクは俯く。


「俺が、守るから」


強くユウの手を握り、彼は空を見上げた。




♢




何時の間に、眠って居たのだろう。目を覚ましたサクは突然の耳鳴りに顔を歪める。


「は…?ッ…"実験"警報…。マジかよ」


彼は不快な音を遮る様に立ち上がり、隣で未だスヤスヤと寝息を立てるユウを起こす。


「起きろ、ユウ…警報だ」

「う…ん…?ふぁ…ふ。」


眠そうに眼を擦る彼だったが、"警報"その言葉を聞いた瞬間、表情がガラリと変わる。


「何…どこで、何があったの」

「北の外れ。…宝弓の森に環が出た。発生したのはCの3。植物の環らしい」

「分かった…行こう」


そう言うとユウは、ポケットからボロボロになった黄色の厚本を取り出した。


「嗚呼。…無理はすんなよ、ユウ」


応える様にサクは、腰につけていたポーチから3つ程細い棒を取り出すと組み立てて剣にし走り出す。2人の姿は見る間に町を抜け、彼方へと消えて行った。




♢




「はぁ…はぁ…」宝弓の森に辿り着き、2人は肩で息をする。そこには紅の瞳に紅の髪…その中に少し白の混じった、少女の姿があった。




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