四日目、終了

俺は、頬の痛みで目が覚めた。


「ちょっと、あんたどこで寝てんのよ」


低いトーンの女の声......夢の感覚はしない。

ということは、つまり。

ぼやけた視界のまま跳ね起きて、声のした方を見る。

そこには、俺の他に人間がいた。

その人間はもちろんーー。


「真穂か......!生きていたのか!!」

「あ、当たり前でしょ?そもそも、自殺なんて嘘なんだから」

「そ、そうだったな。これまでのがあったから、つい」


真穂は腕を組む。そして、目つきが少しだけ鋭くなる。


「ま、仕方ないわよね。......それより、どうして私がいた部屋にいるの?」

「それはだな......。開いてたから調べようと思って」


一歩引いて、真穂は顔を赤くする。

ドン引きしているようだった。


「し、信じらんないっ!女子の部屋に勝手に入るなんて最低」

「女子の部屋って......。どの部屋も構造は同じだろ?」

「そ、そうだけどっ。でも、女子がいたら女子の部屋になるのよ?もう少し気を使ってよね。しかも、挙げ句の果てに自分でスイッチ押して寝てるし」

「興味本位でやるもんじゃないな。毒ガスじゃなくて良かったよ」


軽い口調で話す俺に、真穂は呆れていた。でも、この口調になるのも嬉しいからだ。

今まで一日の終了が辛かったのに、今は辛くない。もちろん今まで過ごしてきた部屋の島民は生きているのだが、あの時は分からなかった。だから今はちゃんと生きていると実感できて嬉しいんだ。


「さ、そんな冗談言ってないで。次の部屋に行くんでしょ」

「おう。今日でこの仕事も最後だ。頑張んねえとな」

「......幽夜。お願いがあるんだけど」


うつむいて、指をもじもじと動かしている。

真穂はそのまま言おうか言わまいか悩んでいる様子だった。

さっきまでとは打って変わった態度を、俺は怪訝に見つめる。


「どうした、真穂?」

「あ、あのさ。もし良かったらでいいんだけどさ。......一緒に、島を出てくれる......?」


ああ、そのことか。俺の返事は、


「もちろん良いに決まってんじゃん」

「ほんとっ?!......ありがと」


真穂の表情がパッと明るくなる。

一緒に出ようと俺自身も言っていたのだが、いざこう改めて異性から言われると恥ずかしい。でも、真穂がそう言ってくれて俺は嬉しかった。


ドアノブに手をかける。ガチャリと回して次の部屋に一歩踏み出す。


今日で俺の仕事は終わり。佐藤からすれば予想外のことだろうが、果たしてこの先に何が待ち受けているのだろうか。

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