第57話 悪名高さの所以
日が掠めるように顔を出し、夜の暗さを照らしながら森の中をオラクルへと走る影が見える。落ち葉や草を気にせず踏み荒らして走る速度は一定で、普通の人が見れば全力疾走のように思えるだろう。
だが、走っている本人は流す程度のペースを維持している。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、暇だな……」
一定の息遣いは乱れること無く聞こえ、呟く余裕さえある。
「ポーション買う金もタクリュー乗る金も無いから走ることにしたけど……やめときゃよかった……サブクエの魅力に釣られないで依頼の一つでもこなせば良かった」
愚痴りながら走っている正体はアキラだ。時間は翠火と別れて次の日になり、朝食の時間まで結構な時間がある。早めに起きたアキラはすぐに出発し、速度が上がるバフの[クイックI]と全ステータスが上がるバフの[賦活]を付与した状態でオラクル近くのダンジョンを目指していた。
本人も走る速度が速いのは理解しているが、バフのおかげだと言うことも当然理解している。スタミナも一定以上の速度を出さなければ減ることも無いため走り続けているが、これほど長く走ったのも初めてならこれほど長くこの世界で退屈になるのも初めてだった。
「やっべぇ……マップで道は間違わないけど、遠すぎんだろ」
走り始めて1時間位だが、ギブアップの声を上げたくなるアキラは身体が疲れなくても精神が暇に耐えられなくなってきた。
最初のうちは慣れない道に四苦八苦していたが、気がつけば自然と気にしなくても走ることが出来るようになっていた。
「移動に便利なビークルってのが早く欲しいな。……ん、ここら辺で森抜けるのか、んじゃ“マーカー”もこの辺りだよな?」
アキラがオラクル方面へと走っているのは、金が無い他にもう一つ理由がある。
「わらしべイベントはタクリューに乗ったら通り過ぎちまうもんな、だから走るのは仕方が無い。うん」
アキラはダンジョンの道中がてら【わらしべイベント~過去の遺産編~】のサブクエストをついでにこなすつもりなのだ。
そしてもう一つ真の理由があった。サブクエストをこなすのもダンジョンへ行くのも、計算違いによる副産物に過ぎないのだ。
「俺はなんでヘルプしっかり読まないんだよ! ダンジョンのショートカット方法って最寄りのギルドって書いてあるじゃん!」
これが全てだった。
根が面倒くさがりのアキラが後回しにしていた物をすぐにこなす筈がない。スキルの学習と戦利品の開封と、やることは別にあったため無理してサブクエストをする必要も無いのだ。
「別の街へ行くとか言ってすぐ戻ってきたり、ショートカット使わせてって言ってエミリーに困った顔させたり……あぁ、今思い出しても恥ずかしい。顔から火が吹き出るかと思った……」
気まずい思いを堪えてギルドに行ったことは無駄に終わり、そこから恥ずかしくなったアキラは気を紛らわせるために走った。
「忘れよう、黒歴史ってのは誰にでもある」
アキラがマップのマーカー位置に到着し、バッグから取り出した手紙を地面に置く。
なぜこうしているかと言えば、ホームでわらしべイベントの手紙を開くとマップが勝手に開き、ある地点にマーカーを設置した後にクエスト内容を“聞いた”からだ
「そんじゃご開帳~っと」
ホームの自室で気楽な声でわらしべイベントを開始した。すると、どこからともなく声が聞こえてくる。どうやら音声付きの手紙だったようでその声はまだ青年を少し過ぎた位だろう。
内容を聞くアキラはすぐに呑気な態度が取れなくなる。
『パイオニアをクリアした強者が現れるとは思っていなかった。なぜかは知らないが、パイオニアをクリアしてから身体の調子が良くない。恐らくこの命も長くは無いだろう』
「まじかよ!」
アキラは驚きのあまり声を上げてしまう。パイオニアをクリアしたのはアキラもなのだからそれは当然だろう。体調が悪くなるどころか、以前より身体能力が向上している位なのだ。驚くのも当然だろう。
『と、最初は思ってたんだが無理をして風邪を引いただけらしい。人は病気になるとネガティブになってしまうんだ。今は体調も良くなっている。許して欲しい』
「こいつぶん殴れないかな、いい年してなに子供みたいなこと言ってんだ」
アキラが両手で開いている手紙に力を込める。破るわけにはいかないため、震えながら怒りを堪える。
『早とちりをしてしまった私は誰の手にも渡したくなかったがために、宝物であるビークルをバラして各地に埋めたのだ』
「……こいつ死にそうだったのに何してんだ?」
『その宝物は機工都市マキナの近くで発掘されたビークルのオーパーツ、名前は……忘れた』
「最早パイオニア関係無いじゃん。宝物なのに名前忘れてるし」
『一応埋めた場所のメモはしたが、他の埋めた場所のメモを各地の宝物と一緒に埋めてしまったんだ』
「なんでこいつはメモまでバラバラにしてんだよ、埋めたのだってわざとだろ」
『唯一残したメモを指定の位置に置けばパーツが入った宝箱が出る仕組みになっている』
「残したってなんだ、やっぱ確信犯かよ、わらしべも何も宝探しじゃん」
『防犯として宝箱を開けると魔物が沸くから気をつけるんだぞ、私は自分で取り出すことも出来なくなったがパイオニア級をクリア出来るなら倒せるはずだ』
「防犯の仕方に難ありすぎだろ、パイオニア要素そこかよ」
「あぁ、あの手紙の声の奴の顔が拝みてぇ」
アキラは出てきた宝箱を開けて魔物を倒した。ゴブリンが3匹沸いただけでそれ以降何も無かったのだ。当然苦戦なんかするはずもなく、即戦闘は終了する。
「ゴブリン相手に取り出すことが出来なくなったってなんだよ、パイオニアクリアしたの嘘だろ」
宝箱を開けながらツッコむアキラは、表情は見えないが眉を顰めている。
「なんだこの……メモと……古い金貨、か?」
貨幣の概念は見たことも聞いたことも無いアキラだったが、置いてあるメモを読んでみることにする。
『お前のオーパーツは貰った! 代わりに金貨をやろう……クックック泣いて苦しむお前の姿が目に浮かぶぞ! 海洋漁港エステリアの質屋にその金貨を持っていけば、次の目印が書いたメモくらいは引き替えてやろう!』
「防犯役に立ってねぇじゃん、そんでわらしべ要素ここでぶっ込んで来んのかよ? はぁ、なんか……疲れた」
アキラはバッグに古い金貨とメモを放り込む。現物が手に入らずにやる気を失ったのか、気が遠くなりそうな距離のわらしべイベントに辟易したのかはわからないが、力なく歩き始めた。だが、暫くしてすぐにその足は止まらざるを得ない。
アキラは予言されたトラブルというのは、ドラゴニュートのことだと勘違いしていた。予言はちゃんと「試練に向かう途中で起こる」と予言されているにもかかわらず……。
それをこれから思い知ることになる。
大地が雪に埋もれ、吹雪の中を彷徨う二つの人影が見える。
「まだ朝日が見えないよぉ……いつまで逃げ続ければいいの……」
「気合い入れなさい、寝たら死ぬわよ」
それは二人の女性だった。山岳地帯に居たはずが、気がつけば目を開けるのも困難な吹雪が容赦なくその身体に叩きつけられる。
小さく弱音と励ましの声で囁きあっている。
「華、ちゃん……あたし、もう無理……」
「そういうの、いいから」
なぜか居たはずの山岳地帯で吹雪が起こり、その中を移動する羽目になったのは華と夢衣だった。彼女達は未だにキング討伐調査を行っていた。
いや、正確にはキングの討伐調査を終えたのだが、報告できないのだ。そして吹雪が止むが、辺りは暗いままだった。
「“また”止んだわまた吹雪が来て“あれが”来る前に暫く休みましょう」
「華……ちゃん、ごめ……ん。ほん、とに……む」
「夢衣! あっ」
夢衣が倒れそうなのを咄嗟に支えて声を上げてしまう。それはまずいとわかっていたが、長時間吹雪の中で彷徨い、眠ることも出来ず、疲れた状態で急に安らぎが訪れたのだ。判断力が低下した状態で急激に変化する環境では仕方が無いのかもしれない。
その代償を命で贖わなければならないことを除けば。
再び、吹雪が強く華と夢衣に吹き付ける。それと同時に、何かが華に飛来する。
「グフッ」
突然風切り音が聞こえたと思えば、呼吸と同時に華が突然吐血する。しかし、本人はそれに目もくれずに力を振り絞って夢衣を引っ張り、横に飛ぶ。
『バラララララ……』
ミニガンのような連射音が響き、再び静かになる。
吹雪は止まない。華の脇腹から生えた
「は、華……ちゃん」
度重なる疲労で夢衣の体力は残されていない。だが、華の惨状は理解出来た。
「ご、ごめ……」
「も゛う、いい……ゴホッ!」
「は、華ちゃん!」
既に華はdying状態になっている。生きているのが限界の状態で、後は命が潰えるのを待つだけになってしまう。
逃げ回るだけで回復関係のアイテムも底を尽き、華には[凍]と表示されたデバフが付いている。このデバフは氷柱が刺さっている対象を氷漬けにする効果があり、表示されたタイマーの30秒を過ぎれば状態を問わずに[凍化]に変化し、5秒後に状態を問わず死亡する。
[凍化]に一度変化すると一切の回復アイテムを受け付けず、5秒以内に自力で脱出出来る猶予は生まれるが、既にそんな体力は存在しない。
遠くから特徴的な赤い光を宿した“脅威”が華と夢衣に迫る。無意識に夢衣が見ていた光景は、アキラの赤い輝きを思い出させた。
(あれって結局アキラ君のオルターだったのかなぁ……)
「む、い……ゴホ……諦めちゃ……だ、め」
(ごめんね、もう喋ることもできないんだぁ……)
夢衣は黙っていたが、デバフに[低温]と表示されていた。これは対象の体力を奪い続け、最終的にHPまでも減らし、長時間放置すると次第に[硬直]に変化する。身体は動かせず声も出せない。死にはしないが、身動きの取れない状態になる。
今の夢衣は[低温]が[硬直]に変化した状態だ。体力を回復させるだけで治るが、その手段も既に無い。
傍から見れば凍死したように見える夢衣に、華の心境は荒れていく。
(このままじゃ夢衣が死んじゃう! なんで調査なんか受けたの! もうどうすれば……)
華は現実逃避気味になるが、目の前の夢衣が死にそうになっているために現実と逃避の板挟みに遭っている。そのせいで自身が死亡寸前なことにも気づいていない。
(あ!)
残りの時間が10秒になると、氷柱の存在を思い出して急いで抜こうとする。
(ち、力が入らない……このままじゃ間に合わない!)
最後の手段として、華は自身のオルターを右手に召喚する。華のオルターは両手で握ることもあれば片手で握れるバスタードソードだった。細身の剣は折れてしまいそうにも見えるが、オルターは基本的に破壊不可だ。
リョウのような人形といった例外もあるため、全てとは言えないが。
華は震える手で逆手にバスタードソードを握り、氷柱の側面を剣で突き刺す。
「ガハッ……」
吐血と苦しみがやってくるが、まだ死なない程度の威力だ。そのままバスタードソードの切っ先を地面に突き刺し、身体から引き抜こうとする。
残り5秒しかない。
(ダメ、間に合わ……)
「俺はもしかしたらヒーローの素質があるのかもな」
アキラの声を聞いた時、華は幻惑だと思った。最後に救いのある錯覚だと感じたが、現実は幸運にも本物だ。
夢衣が見た赤い光はシヴァが発していたイドの光だったのだが、判別が出来なくて当然だった。
「あ゛っ……」
だが、痛みは現実だ。叫びそうになる華が咄嗟にオルターを手放して自身の口を塞ぐ。
「我慢しろよ……」
「んぐっ!……」
痛みが現実だと教えてくれたのだ。決して同じ愚は犯さないと必死に声を我慢する。
たった数秒の出来事だが、1分にも10分にも感じられた。アキラの腕力で氷柱が抜け、華が倒れ込む。
アキラはヴィシュを呼び出しイドにしてから、華と夢衣に弾丸を浴びせる。特徴的な金属音が鳴ったことで氷柱が再び飛んでくるが、倒れている華と夢衣には当たらない。
アキラに至っては一発だけ飛んできた氷柱をシヴァで迎撃し、残りは横にステップするだけで躱した。
「ミニガンみたいだよな、見えるからいいけど」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「大丈夫か?」
「な、なんとか、おかげで助かったわ」
「気にするな、夢衣さんは?」
「おかげで……少し元気になったよ」
「よし取り敢えずここを離れるか、んーっと……こっちだ」
アキラは吹雪の流れに逆らう方向へと歩を進める。
「そ、そっちは」
「いいから来い」
「華ちゃん、今はアキラちゃんを信じよぉ」
「夢衣……わかった」
5分程歩いた所で吹雪を防いでくれる岩があり、アキラはなぜか吹雪の流れる方を壁にする。
「ア、アキラ君なんでここで……吹雪が凄く辛いんだけど……」
「取り敢えず君達を回復させなくちゃならないからな」
「ま、待って! 今さっきの音出したら!」
「まぁ氷柱は飛んでくるだろうが大丈夫だろ、岩あるし」
「え? どういう……」
『カァァン!』
ヴィシュの特徴的な金属音が鳴り響くと、すぐに氷柱が飛んでくる。だが、岩に阻まれて氷柱が割れる音のみが聞こえる。
「な? 大丈夫だろ? 取り敢えず全快させるぞ」
「ホントだ……」
回復も終わり、吹雪の向きが変わるとすぐにアキラは岩から離脱することを提案する。
「わ、わかった。後で教えてね?」
「あいよ」
吹雪の向きが変わり、またアキラは吹雪の逆らう方向へと向かう。数分歩くと、先程と同じ岩が見えた。氷柱で少し削れた跡も残っている。
「……え? どういう……」
「しばらくは大丈夫だから説明するぞ、予測だけどな」
「お、お願い」
アキラは何かしら法則を掴んでいるらしく、アキラは夢衣に自身が着ている森狼の毛皮を夢衣に渡す。
「あ、ありがとぉ、うぅ暖かいよぉ……」
「まず、あれが何かはわかってるか?」
「恥ずかしながら……」
「あれはイマジナリーブリザードって名前だ」
「名前があるの?」
「恐らくだが、あれがノートリアスモンスターって奴だろう」
「どうしてアキラ君はわかったの?」
アキラはどう説明した物かを考える。
「ん~信じられないかもしれないけどさ、俺は“外”から来たから名前を見れたんだ。そんで君達が見てるのは、俺も含めてアニマ修練場に近い疑似体験みたいなもんだ」
「え? 何言ってるの?」
「そ、そうだよ、あたし達同じ幻覚見てるの?」
「幻覚……まぁリアルな幻覚だな、俺は君達を助けるために同じ状態になってるし」
「……ダメ、意味がわからない」
「そうだな、時間はあるから順に説明しよう。まず俺がなぜここに来たのかからだ」
「お願い」
アキラがふて腐れて歩き始めて少し、山岳地帯に突入すると違和感に見舞われた。
「なんだあれ、太陽出てんのにあそこだけ真っ暗だな……ちょっと覗いてみるか」
完全に観光気分のアキラは、道中の魔物を屠りながら近づいていく。
「あれ? こいつらなんでこんな所で寝てんだ?」
「ちょっと待って! 私と夢衣が寝てるの!?」
「そうだ、真っ暗な空間だったけど俺には[暗視]って便利な物があるからな、思いっきり寝てたぞ。んでこっからが凄かったんだが……」
「絶対ただ事じゃ無いよな……あ」
アキラが予言師の言葉を思い出す。
『見て見ぬ振りは出来ましょう。しかし、それをすれば必ず後悔します。後悔しないために行動を起こせば、命の危険に纏わるトラブルに見舞われます』
「ドラゴニュートの件じゃなくてこっちかよ……え? ドラゴニュートとかキングって予言すら出ない程度なのに、こっちは予言レベルでやばいってことじゃないのか?」
アキラの勘が冴え渡る。そして同時に、判断する時間も必要としない。
「はぁ……仕方ないかって言ってもどうしよ?」
翠火と話した時の二人の心配をしていた様子から、ナシロとメラニーのように待ちぼうけるような生活を送らせる可能性を考えれば答えは決まっている。
(ったくなんで俺あの子に弱いかねぇ……)
夢衣と華に近づくと、霧が出始める。暗視とは別の物で、視界を妨げる。
「なんだこれ……見えんぞ、暗視もこの程度だったか……っ!」
瞬間、アキラは無意識に転がっていた。身体が何かを察知したのか、避けなければ致命的な何かに繋がったのかはわからない。
(な、なんだ今の! わけわからん!)
すると、霧は晴れて真っ暗な空間からなぜか追い出されたアキラが居た。
「……え? これやばくない?」
本人は至って真面目だが、言葉には緊張感が欠片も感じられない。
「マップが……赤いな、ってこの空間全部が敵なのか?」
上を見上げると【イマジナリーブリザード】と表示されている。この世界で頭上に表示される名前は敵しか存在しない。
「あの予言師……これがトラブル程度で片付くのかよ、どんな神経してんだ。って言っても始まらないか」
アキラが外から空間に攻撃しても当然のようにすり抜ける。銃弾から拳と試してもやはり効果が無い。インパクトドライブも発動しなかった。
「……帰るか」
「ちょっと! 何が凄いよ!」
「冗談だって、現に今居るだろ?」
「華ちゃん怒りすぎだってぇ」
「あんたは落ち着きすぎよ」
「続けるぞ?」
「冗談は置いといて殺気は感じなかったけど、あれ食らうと致命的にまずい気がしたんだよな……」
アキラは先程の空間から生じた何かを警戒している。そこで、手頃な巨大芋虫に見える魔物【マウントワーム】を近くで見つけたので強引に持ち上げ、投げ入れた。
「ビェー!ビェービェー!」
「なんだこいつ……臭いしうっさいわ!」
夢衣と華に近寄ろうとした瞬間、芋虫が倒れる。
「と、とんでもないことしてたのね……」
「危なかったらちゃんと倒してたって、んでなんとその芋虫な、消えなかったんだ」
「……? あ!」
「華ちゃんわかったの?」
「魔物は死んだら光の川みたいになって消えるじゃ無い!」
「あっ、そういえば」
「死なないな、眠らされてんのか? ……え?」
突然マウントワームの身体に穴が空き、すぐに氷漬けになって光の粒子に変わってしまう。
「やっべ、意味分かんねぇ」
良く夢衣と華を見ると、時々出血し、怪我がポーションを使ったように直っているのを繰り返していた。
「……イマジナリーブリザード、か」
名前から推測するアキラは、バッグからロープを取り出して準備をした後に覚悟を固めて再び中に入る。
(イマジナリーって言うくらいだから、きっとそういうこともあるんだろうな……ここがゲームならそうだと思おう。来た!)
「あれ? 何も変わ……さっむ! は!? やばい! この寒さは舐めてた!」
(うぅ……寒……あ、やっぱり準備してたロープが“消えてる”な)
それからアキラはここで吹雪の法則性や、敵の検証しながら夢衣と華を探して今に至る。
「そうなの! あたし達、霧に囲われたと思ったらいきなり寒くなっちゃってぇ……」
「そ、それじゃぁアキラ君の身体は!」
「恐らく倒れてるだろ」
「そ、それじゃぁ私達どっちにしろ……」
「安心……とは言えないが、そこまで深刻になるな。方法はあるはずだ」
「「え?」」
アキラの予測通り、このイマジナリーブリザードはノートリアスモンスターである。後に知るが、環境型に属するタイプで獲物を見つけるまで動き続ける動く災厄とまで呼ばれる存在だった。
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