第40話 メンバー認定


 自分の呼び方を任せてしまったことを後悔していたアキラは、本来食べる予定だった時間から少し遅れてホームのラウンジで朝食を食べていた。


 目立つお面を被る女性とその友人二人、そして仮面を被った男が混じった状況に好奇の視線が向くも、アキラ含めて気にしていない。翠火に至っては気づいてすらいない。


 ゆっくり出来る久しぶりの食事を堪能したのだ。内容もスープとサラダとパンとスクランブルエッグにベーコンとウインナーだ。既に大皿に盛られていた中身は殆ど無い。


 昨日食べた串焼とは違って落ち着いて出来る食事はアキラの腹と心を満たす。


「ごちそうさん。久しぶりに洋食食った気がするよ、ありがとう」

「いえ、負けた代償ですからね」


 翠火の目元が少しだけお面から覗く、それだけで笑顔なのがわかる。お面の口元は空いているので食事に差し支えることも無さそうだ。


 翠火はこの教訓の証となっている朝食を噛みしめ、忘れないようにしている。いつもと違った美味しい朝食は、アキラを侮辱した自分を心配してくれたという結果に終わったことに感謝していたからだ。


(今まで苦戦はしたことがあっても、私は格下と思っていた相手に不覚を取ったことは無かった。もし同じことをして酷い結果に終わったとなると……身をもって勉強出来て良かったと考えるべきですよね)


 翠火が心の中で反省していると、華がアキラに気になっている質問をぶつけていた。


「アキラ君はさ、久しぶりって言ってたけど、どのくらいダンジョンに居たの?」

「確か3ヶ月だったな」

「え? でもここに送られたのって皆と同じゲームのSoul Alterが原因なんだよね? 1ヶ月位しか経ってないと思ったけど、その前から居たの?」

「いや、俺も同じくらいの時期にここに連れてこられたぞ。難易度パイオニアは、ダンジョン内の時間制限が無くなって、時間の流れも三分の一にされるんだよ」


 華はまだ疑問が解決しないのか、質問を重ねる。


「でもさ、それなら時々帰ってくればよかったんじゃない?」

「……まさか知らないのか? 難易度パイオニアはボスを倒して奥にある帰還ゲートに行く以外、脱出する手段は存在しないんだぞ?」

「え?」


 華はこの事実について初耳らしく、驚きの声を上げた。そして他の二人も同様だったのか、アキラに視線が集中している。彼女達は事前情報を知らないらしい。


「ダンジョン講習じゃ、そんなこと言ってなかったのにね」

「うん、あたしもアジーンでそんな話聞かなかった」

「私も魔人の始まりの街、マトでそんな話は聞きませんでした」

「なんだ、間違えて入った奴は知らんってか?」


 アキラは冗談交じりに告げるが、他の三人は黙ってしまう。


「え? まじ?」

「生きて戻ることが出来ない。戻ってきても廃人にしかならないと聞けば、誰もが挑むのを控えるでしょう」

「ただ単に帰ってきた奴から情報が手に入らなかったってだけか。でも挑んで良いことなんて無かったぜ? 俺は仕方なく行ったが、開始直後に敵も居ないのに死にかけたからな。運が良くなきゃ間違いなく死んでたし」


 アキラのこの言葉に、三人は静かになる。翠火に勝つ人物が最初のダンジョンで苦戦するのはどう言うことなのか気が気じゃないのだ。


「一応言っとくけど、必要なければ絶対に行くのは勧めないぞ。多分対処法を知らなければ、藻掻き苦しんで死ぬのを待つだけだからな。そんじゃ、飯ごっそさん。俺もそろそろ仮メンから卒業したいんでな。ギルドに行ってくるよ」


 呆気なく別れたアキラを見送る三人は、その背が見えなくなるまで見送った。死ぬのを待つだけの状況を生き抜くアキラは、一体なんなのだろうと考えているのだ。


 アキラはナシロとメラニーに「またな」と軽く挨拶してラウンジから外へと向かった。






 所変わって、アジーンのギルドは最近まで忙しい日々が続いていた。それは、ある日突然大量の服装の似た男女のヒューマンが訪れたからだ。そう、プレイヤー達が全ての始まりの街にやってきたからだ。


 そしてその殆どがホームカードを持っていて、全てテラがホームに滞在する許可を認めたどんぐりカード所有者で更に慌ただしくなる。


 それから多忙を極めて休む間もなくギルド員の受付嬢含め、全ての職員は休みが取れなかったのだ。そんな総合受付の一人、エミリーと赤毛の女性のマリーは疲労を表には出さないように仕事をする日々を過ごしていた。


 ここ最近、漸くその波も落ち着き始めたばかりだった。


「やっと落ち着きましたね!」

「本当よねぇ、帰りたくなっちゃう」

「マリーさん帰っちゃダメなんですよ?」

「わかってるわよ、エミリーは冗談通じない子なんだから、フフ」


 マリーはエミリーとの会話で癒やされながら、モチベーションを維持していた。しかし、その元気が取り柄のエミリーも、最近は休憩中に仮眠を取ることが多くなった。


「明日からは交代で休めるから今日だけでも頑張れるわね」

「その意気です! でもこんな忙しかったのは何ででしょう?」

「そうねぇ、あ! あの子が最初じゃ無かった?」

「あの子?」

「ほら、やけに礼儀正しいのに依頼の達成速度が早かった子!」

「あ……そ、そうでしたね」

「あら」


 マリーはエミリーの気落ちした反応を見て思い出してしまった。メンバー登録を受けられず、テラから無理矢理ソロでダンジョンに挑まされた不幸な少年を。


「もう、こう言ってはなんだけど顔見知りが行方不明になる度に気落ちしてたらギルド員なんて勤まらないわよ?」

「はい……」

(私からこの話題出したのにツッコミが来ないなんて……最後の日に見送れなかったのがショックだったのかしら?)

「私、仮メンの人の担当は初めてだったので、せめて最後までお務めを果たしたかったんです。暗い雰囲気にしてごめんなさいマリーさん、私疲れてるみたいですね。はは……」


 マリーが思いの外エミリーの心にダメージが来ているのを察する。


「もう! 死んだ人のことは忘れなさい! これからも絶対起こることなんだから! 帰ってこないのは、その人が悪いのよ?」

「そうだぞ、エミリー」

「はい……あ、いつの間にお客さんが」

「あら? ごめんなさいね」

「「ギルドへようこ……」」


 アキラは受付の前に居て会話に混ざっていた。話に夢中になっている二人は注意力が散漫になる程度には疲れていたのだろう。


「疲れてんのか? ちゃんと寝てるか?」

「あなた! えっと、名前は……」

「アキラさん!」

「そう! それ!」

「最後に見送りに来てくれたにしてはちょっと酷くね?」


 アキラはマリーに対し、最初のように敬語では無く友達感覚で喋れていた。そのことには久しぶりに会ったアキラは兎も角、マリーは軽い違和感を感じていたが気づいていない。


「生きてたんですね!」

「何回も死んだけどな」

「え?」

「それ程大変な目に遭ったってことよ」

「なるほど!」


 文字通りアニマ修練場で死んでいたアキラだが、そのことについて訂正はしなかった。確かに死ぬ程の大変な目には遭ったのだから。


「ぅ~、生きててくれて良かったです」

「この子は本当に……所で、なんでこんなに帰ってくるのが遅かったのかしら?」

「パイオニアのダンジョンを選んだからな」

「! 生きて帰ってくるなんて……疑うわけじゃ無いけど、カードいいかしら?」

「どうぞ」


 アキラからカードを受け取ったマリーは、手元で踏破したダンジョンの難易度を確認しているようだ。それをエミリーが覗き込んでいる。


「わぁ、マリーさん! 本当にパイオニアにチェックが付いてますよ!」

「本当、すごいわね……」

「今までクリアされたこと無かったって聞いたけど、そうなのか?」

「過去にもパイオニア踏破者は居たけどそれもかなり前みたいなのよね」

「? でもダンジョン講習ではパイオニアの情報は結構穴があったみたいだけど」

「それはね、最高難易度の情報を残した人が殆ど居ないの」


 マリーの話によると、パイオニアをクリアした人物はギルドがまだ出来る前のかなり昔のようで、ギルドが作られ、調査のために攻略を目指したいくつものユニオンが壊滅する結果しか残らなかったのだ。


 クリアした者はどうなったか不明で、戻ってきた者の一部は精神が壊れた状態でまともに会話も出来ず、中の情報が一切不明だという。


「そこに入れば事実上、生死不明の行方不明扱いになるの」

「……マリーさんにダンジョン突入の時に難易度言わなくて良かったよ」

「聞いたら絶対引き止めたわよ。子供でも知ってるし、おとぎ話にも出てくるのよ?」


 アキラはクロスの住人では無いため、そんな教養は身につけていない。


「俺はこの世界で育ったわけじゃ無いからな、ついでにメンバーの手続き頼んだ」

「やっぱりアキラ君もあの人達の言う世界から来たのね。メンバーの件わかったわ」

「頼んだ。事情なんて話しても仕方が無いからな」

「あの時はまだ一人だけだものね、多分誰も信じなかったから仕方ないわよ。あぁそれと、参考までにパイオニアはどんな所だったか教えてもらえる?」

「口頭でもいいか?」

「ええ、こっちで書き留めるから……エミリー、お願いね?」

「え!」

「アナタが初めての担当って言ってたんだから、その仕事を取り上げるようなことしないわよ」

「そ、そうですよね! ありがとうございます!」

「頑張ってね。はい、これでメンバー登録完了よ! 後、テラ様から指定依頼報酬が振り込まれてるみたいだから金額を確認してね」

「……わかった」

「それではアキラさん! あちらの席にお願いします」


 アキラがカードを受け取り、エミリーの案内に従って席に向かう。


「それでは質問に答えていただくのと、何か足りなければその時に補足をお願いしますね!」

「わかった」






 アキラの口から発せられたパイオニアの情報はエミリーの想像を遙かに超えていたのか、顔が青ざめている。


「と、とても信じられません。けど……誰もが帰って来れない理由としては有り得るかもしれませんね……」

「嘘は吐いてなからな、情報の扱いは任せる」

「は、はい」

「それじゃぁメンバー用の依頼受けるから行くよ」

「あ、ありがとうございました!」


 エミリーからの聞き取りを終え、戦闘用の掲示板へと向かう。因みにアニマ修練場のことは何も語らなかった。いや、語れなかったのだ。


 蓮が見えないスキル名を告げたはずなのに対して、アキラが聞き取れなかったようにエミリーも聞き取ることが出来なかった。


「なんだったんだろあれ? まぁいっか、フィールドにも出てみたいし……森とかじゃ無くて平原とか無いかな? これでもないし、これでも……ん? こんなのこの前無かった気が」


 アキラが数ある中から星二つのロット依頼が気になって読み込む。



【海洋漁港エステリアへのルート確保】

達成難度:☆☆

達成条件:ウルフ、タイニートゥルス、ロックペイント各10匹の討伐。

失敗条件:受託後2週間経過しても達成条件を満たしていない。

受託期限:なし

詳細:【ソロ受託料800G】【パーティ受託料一人250G】


報酬:4000G



「パーティ組んでから受ければこんなに値段下がるのか。……そうだよな普通はこういうのパーティで挑むもんだよな」


 命と金は天秤で量る物ではないのだが、ギルド側も個人の意思を誘導するに留めるしかない。それ故の値段設定だろう。


 命というリスクを一人で背負えば金額も高くなる。だがその分余計な手間や効率も影響する。人数によって分け前が減るにしても、このロット依頼の金額設定は報酬を優先するゲーム感覚で選んではいけないのはわかる。


(多分一人でも行けるだろうが……まだ見たことも無い敵に対してそれはあまりにも慢心が過ぎる)


 電子マネーのような効果音を鳴らし、依頼を待機状態にしてからパーティメンバーを探すことにした。


 ギルドには人がかなり居るため、プレイヤーも含めて簡単にパーティは組めると考えていた。その考えが甘いことにアキラは遅ればせながら気づく。




「そんなロット依頼、今更受けられるかよ」


「すまんなパーティメンバーを待ってるんだ」


「誰がシューターなんかと組むかよ」


「すみません今3人埋まったばかりでこれ以上は……」


「シューターがあんな奴らばかりなのはあんただってわかってるだろ? 悪いけど、もう声はかけないでくれ」




(まじかよ……)


 個々に事情はあれど、結局誰一人として捕まることは無かった。そしてその途中で端々にシューターに関する良くない雰囲気が漂うのをアキラは感じた。


(ホームに帰って情報収集しないとな)


 アキラはホームに戻って情報を集めることにした。金には余裕が出来たため、慌てずにアキラは依頼を後回しにした。


 例え気に入らない相手からの報酬でも、金は金なのだ。






「そ、それはです、ね。あぁいや、えっと、それは、ね」


 ラウンジには夢衣が居て、ナシロやメラニーと戯れている。ホームは朝食の時間が過ぎてからは閑散としていて人が少ないせいでナシロとメラニーに群がる人も居ないらしい。


 言葉を詰まらせながらも夢衣が事情を教えてくれた。


遠距離シューターを選んだ奴が軒並み問題を起こしてるって訳か」

「うん、全員が全員、そうってわけじゃ、ないんだけど」


 話している内に慣れてきたのか、夢衣が言葉に詰まることが少なくなってきた。要約すれば、攻撃は当たらず、同士討ち《フレンドリーファイア》やピンチになると真っ先に逃げ出し、それで役に立たないばかりか迷惑を掛ける始末らしい。


(そういえばシューター用の武器を選ぶ時は注意文あったな、俺はすっかり慣れたけど素人が弓とか選んだら悲惨な未来しか思い浮かばないぞ……)


 アキラはキャラクタークリエイトで出てきた注意分を思い出す。


「アクションの得意不得意に関わらず、選ぶなら近距離~中距離の武器にするのが無難だよな、ここに来るなんてアホみたいな前提が無ければだけど」

「あたしは、その、中距離ウィザード選んだんだ」

「そうなのか、ウィザードって何かあったっけ? 銃に夢中であんまり武器覚えて無くてな」

「あたしみたいに、マジックロッドっていう、魔法を使うための杖とか、槍だったり、変わり種には糸なんてあったかな、それに投擲とか爆弾なんてのも……」

「なんかすごいな……ってかそんな人を巻き込みそうな武器あるのに、中距離ウィザード選んで問題起こした奴いないのか? 」

「えっと、そういえば中距離でも問題を起こした、人が居てね」

「へぇ、どんな?」


 アキラは夢衣にその人物の特徴を聞く。その人物は仮メンから卒業しても一人では満足に依頼をこなせず、パーティも組んでもらえないらしい。


 攻撃はせず、支援も出来ない。その日暮らしで牧場の牧草運びを続けているらしい。


(不憫すぎないか、それ……)

「問題起こしたって言っても、何もしなかったわけじゃ無くて、その人なりに頑張った結果、足を引っ張ったみたい……」

「因みにどんな失敗したのか知ってたりする?」

「オルター出さずに、単身敵地に飛び込んだり……壁になろうとして死にかけて、助けようとした人を巻き込んじゃったり」

「なんだそりゃ」

「見た目の割に、そのぉ気概はあるけど、それが悪い結果に繋がっちゃってるんだよ、ね」


 好奇心の強いアキラはそのウィザードが気になり始め、特徴を聞く。当初のパーティを組んでもらえない問題原因がわかったのだが、やはり初めての所へはパーティを組んで学びたいと考えていたアキラは、一つの手段を取ることにする。






「メーメー牧場に来るのも久しぶりだな、あのじいさんは相変わらず重機乗ってるし」


 今回は何も告げずにそのまま奥へと進み、マップを頼りに開けた場所へ向かうと、ミニ牧草ロールが大量に並んでいる懐かしの光景が広がる。


 優しげな風が藁揺らしている。段々と迫る風はこちらに向かっているようにも見える。それを観察していると、身体前面に風の感触を感じて周囲の藁も揺れている。


(はぁ1回しか来てないのにこの風景は、なんか安心させられるな……)


 無骨なダンジョンと殺伐としたアニマ修練場に不気味なボーナスステージで荒んでいた心が癒やされていくのをアキラは感じた。しばらく遠目で風景を眺めていると、呆けていて気づいていなかったのか、牧草を運んでいる人が散見される。


(あ、やばいやばい。目的忘れるところだった。えーっと、華奢な体つきで男用の初期服を着た奴だったな……ん~それっぽいのはっと、あいつかな?)


 身長はアキラより頭一つ分低く、後ろ姿は華奢というオブラートに包んだ言い方をしていたが、女性にしか見えない身体の細さをしている。


 男用の服を着ていなければ性別を間違えてしまうだろう。髪を後ろに束ねて逆立った髪型は強気なボーイッシュの女の子にしか見えない。


 顔も女性のような印象を受けるが、その目つきは吊り上がって不機嫌さを隠さない表情をしている。拗ねた表情にも見えるそれは、到底男には見えない。


 アキラは間違っていないか自信が持てないが、近づいていく。


(この子完全に女だよなぁ……服男だけどまじ? 人違いだったら嫌だなぁ……それに不機嫌だけど気落ちしているようにも見えるし)


 見た目がレディースの特攻隊長をしてそうな相手に怯みながらも、人違いをしたら謝ればいいと納得したアキラは声を掛ける。


「君、少しいいか?」

「ごめん時間が無いんだ、後にして」

(声も低いけど女じゃねぇか)


 アキラはそれを声に出さず、ミニ牧草ロールを運ぼうとしている


「時間無いならバッグ使えば良いじゃん」

「君、知らないの? 依頼中の特定アイテムはバッグに入れられないんだよ」

(え、まじかよ……シヴァとヴィシュに感謝だな)


 心の中で相棒達に謝辞を述べていると、依頼を続行しようとする相手にアキラは慌てて引き止める。


「ちょっと待ってって」

「ふぅ、歩き、ながら、でも、いい?」

「お、おう」


 1つ持つ程度の力はあるのか、見た目に反してSTRはちゃんと作用されているのだろう。


「後、何個運べば終わりなんだ?」

「1セット、とこれ、ふぅ」


 喋るのもきつそうなのにアキラの質問には律儀に答えてくれる。怒ってそうな表情とは違って心優しい子なのだろう。


「……落ち着いて話したいんだけど、それ今日中に終わるのか?」

「一応、その予定」

「…………イド」

「ん? 井戸が、どうしたって?」


 焦れたアキラはヴィシュをイドにしてその銃口を相手に向ける。傍から見れば牧草を担ぐ相手に銃を突きつけてるアキラは異様に映るだろう。その効果を知らなければ。


「手伝ってやるよ」

「いいよ、オレの、仕事だからね、あっちで待ってて、くれ」

「手を貸すわけじゃ無いさ、補助するだけ」

「は? どうや……」


『カァァン!』

『カァァン!』


「おわ! な、なんの音?」

「気にするな、所で身体の動きはどうだ?」


 銃弾を撃ち込まれた本人は音に驚くだけだが、すぐ変化に気づいた。


「あれ? 凄く軽く感じる。これならペースを上げられそう……動きも早くなってるから尚更!」

「俺は近くに居るからその依頼終わったら時間貰うぞ」

「あ、ああ。わかったよ」


 理解不能な展開が続いて約束を取り付けてしまったのを尻目に、アキラはミニ牧草ロールを集めている所へと向かい、小屋の近くにある休憩所らしき椅子に腰を下ろす。


「オレっ娘か、有りっちゃ有りだな!」


 そんな緊張感のかけらもないアキラに近づく小さな影が居た。

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