第10話vier 3
恥ずかしくてバイト中はひたすら佳祐君を避けた。
バイトが終わった後、佳祐君が事務所の椅子に座っていて何か声をかけられた気がしたけど、走って逃げた。
家のドアを開けると、にひとが無様な姿で転がっていて
いつもなら「だから充電はマメにしろって言ってるじゃん!」と腹が立つ所だったけど、今日は何故だかその姿を見ると安心しちゃっってしばらく座り込んだ。
「なんだろうね~わかんない。起きろよ鉄くず」
にひとのなんて事もない機械的な声が聴きたくなった私は、ずるずるとコンセントがある場所まで物体を引きずる。
「早く起きろよ。馬鹿」
悪態をついていると、少し充電出来たにひとが目を覚ました。
「ママ。おはようございます」
「また玄関に転がってたけど」
「充電が無くなったみたいです」
「だからいつも言ってるじゃん。充電はマメにしなって。
私が家に居ない時はずっとコンセント差しとけば?」
「わかりました」
本当にさー・・・・・・出来損ないだよね。こいつ。
でもなんか安心する。
「最近のママは機嫌が良いですね。何か良い事があったんですか?」
「さてね」
鉄屑の癖に何かを悟ったのだろうか。
いつもなら「役立たずな鉄屑が知ったような口を叩くな!」と怒る所だけど、やっぱり今の私は指摘された通り機嫌が良いのかも。
「良い事かー。多分あったのかもね。
自分じゃどうしたら良いのかわからないけど。
誰かが私の気持ちが落ち着けるような環境作りをしてくれたのかも。
このまま死ねたら幸せかな。なんてね」
「ママの環境を作ってくれたのですか?」
「私が幸せな気持ちになれるよう手伝ってくれたって意味」
「幸せを手伝う?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます