第8話vier 1

「あのさ・・・杉田さん。もし良ければメールしない?

嫌だったら断っても全然大丈夫だから・・・・」



そう言い手渡されたメモ。

私はそれに返信しようかしないか迷っていた。


相手はバイト先のリア充大学生。

何度か同じシフトに入った事はあったけど、会話は最低限の挨拶や仕事関連の会話のみしかした事がない。

女には不自由してない癖に、どうして私に声をかけたのだろうか。




「あ~・・・・・・・・」


大きく伸びると、そのまま後ろへ倒れこむ。

ふっとにひとと目があった。

こいつは私の事を殺す為に監視してるんだったっけ?




「今日のママは機嫌が良いです」


「機嫌が良い?・・・なんでそう思ったの?」


「顔がニコニコしているからです」



嘘。

起き上がると、走って鏡の前へ向かった。

そこに映し出されていたのは、いつも通りの自分の顔。



「どこがニコニコしてんのよ。いつも通りの・・・・・顔じゃない」


「ニコニコしてるじゃないですか。いつもと違って、生き生きしてる」


「鉄の塊のお前が偉そうな事言ってんじゃないよ」



生き生きしてる?

バカバカしい。

全然そんな事ないじゃない。

今日だっていつも通り寝れないし、未来に夢も希望も持てないし、別に今死んだってかまわない。



だけど・・・・これが何かが変わるキッカケなのかな?


ただアドレスだけが書かれたメモを眺める。


何も期待なんてしていない。

でも・・・・・・・もしかしたら・・・・・・・・・そんな甘い考えが、あったのかも知れない。



ーアドレスありがとうございます。

何かあったら気軽にメール下さい。杉田



素っ気ない?

だって怖いじゃん。

私なんかとリア充君が本当にメールしたいなんて考えてると思う?

そんな訳ないじゃん、ドラマじゃあるまいし。

からかってるのかも知れないし、後々気まずくならないようにしないとさ。



送信後、再びにひとの方を向いた。

あいつは相変わらず私の事を見つめてる。



「充電切れしないようにしてよ。

じゃないと、チャンスの時に動けないよ」


「チャンス・・・・?チャンスとは何ですか?」


「チャンスはチャンスでしょ!アンタ自分の役割忘れてんの?」


「役割・・・・・。わかりました」




いつも鳴らないスマホが鳴る。

メールが受信されてる・・・・?


受信先は先ほどメールを送ったリア充大学生から。



ー返信ありがとう。来ると思ってなかったから凄く嬉しい!

俺のことは佳祐って呼んで。

俺は何て呼べばいい?名前は何ていうの?



返事が来た!

思わずスマホを握り締めにひとの方を向く。



あいつは・・・・・呑気に充電プラグを装着しようとしてる所だった。

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