第3話zwei 1
突然あの人から大きな荷物が届いた。
最後に会ったのは2年前の春。
大学受験に落ちた時だ。
「この金食い虫の役立たず」
そう言い放つと、すぐに車に乗ってどこかへ行ってしまった。
きっと自分の家に帰ったのだろう。
ここじゃない家。
私が居ない家に。
荷物を運んできた男の人はこう言っていた。
「杉田博士がいつも貴方の事を気にかけていましてね。
自分が留守にしている間、何かあっては心配といつも話していて」
自分が留守にしている間?
あぁ、一応あっちでは私たちは一緒に住んでいる設定なんだ。
本当は高校生の時から別々に暮らしてるのにね。
「まだ試作の段階だけど杉田博士が創った物だ、きっと大丈夫だろう」
男の人が大きなダンボールを丁寧に開封していく。
出てきたのは・・・・・・・・・人間?
「これは君のボディーガードだ。こう見えてロボットなんだよ」
へぇ~ロボットなんだ。
あの人、きっとこれで私の事を殺す気なのね、なるほど。
男の人はボディーガードについて説明をしていた。
充電のやり方だけしっかり聞き、その他については聞き流す。
「これがあれば何があっても大丈夫!安心して、しっかり勉強してね」
「ありがとうございます。これで私も安心して生活が出来ます」
精一杯の作り笑顔で見送った。
とりあえずこれからバイトに行かなくちゃいけないし、充電だけして電源を入れるのは帰ってからにしよう。
果たして本当にコイツは私の事を殺してくれるのだろうか。
それとも守ってくれるのか。
どっちにしても早いところ決着をつけて欲しい。
だってコイツを充電するのに電気代がかかるじゃない。
家賃も光熱費も全部私のバイト代から捻出してる。
あの人は生活費なんて一切くれないから。
1円でも惜しいんだ。
今日も疲れた。
バイト先は時給830円のカラオケ屋。
仕事が終わると、速攻で着替えて飛び出す。
バイト先に友達はいない。
皆高校生とか大学生と所謂学校生活を満喫している奴らばかりで、2浪した私とは話もノリも合わず居場所なんてない。
仕事さえ覚えちゃえばいい。
職場で一人ぼっちでも、身体を動かしていれば気が紛れる。
ずっと一人で生きてきた私は孤独なんて慣れていた。
家に帰り、電気を付ける。
いつもの我が家。
そこにいつもはない大きな 物 がある。
「・・・・・・・・ロボット」
もしかしたらコイツが今の生活から脱却する機会を与えてくれるのかもしれない。
ズルズルと物を引きずり、先ほど聞いた充電方法を試してみる。
そういえば何時間充電するんだったっけ?
忘れちゃった。
まぁ適当に置いとけば充電も終わってるでしょう。
パソコンの電源を入れ、TVを付ける。
別に何か見たかったわけじゃない。
バイトから帰ってきた頃には時間が時間だから面白い番組なんてやってないし通販番組ばかりだけど、なんとなく人の声がすると安心するから付けるだけ。
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