第2話eins

「もうにひとを外の世界に出すつもりかい?

まだ早いんじゃ・・・・。

人口知能は埋め込まれてはいるけど、普通の人間として生活するにはかけている部分がまだ多い」



「まだ彼は不完全よ。至らない点がある事はわかってる。

だから使えるんじゃない」



「使える?」



「不完全だから外に出すの。

そうすれば現段階で彼自身に何が足りないのか?わかるでしょ」



「もし万が一、事故でもあったら君の立場が・・・」




「万が一何か起こっても大丈夫。

まだにひとは試作段階だから、外に出すといっても娘のボディーガードにしようかと思っているの」



「娘さんのボディーガード?」




「えぇ、私は忙しくてほとんど家に帰る時間がないでしょ。

だからいくら成人してるといっても独りで家に残しているのが心配で心配で・・・・。

もし万が一事故があったとしても、娘は私の家族。

私が全て責任を持つわ」




母と誰かが目の前で話していた。

にひとはボクの事。

ボクはそろそろ外の世界に出れるらしい。



母はまたあのボタンを押し主電源を落とした。

母の役目はボクの主電源をON/OFFにしてくれる人の事を指すのだろう。

既存してあるデータを書き換え、電源を落とす。



母はボクの知能にこういうデータを植え付けている。


「ボクは母に絶対に逆らってはいけない」と。


だからボクは母に対して逆らう事も危害を加える事もしない。


「あんなポンコツいらないのよ」


「なんで私に似なかったのかしら。完全な失敗作だわ」


「出来損ないなら、いっその事消えた方がいい」



母は1人で何かを喋りながら、ボクにデータを打ち込む。




「にひとは私が作り出した最高傑作。私にはにひとがいれば十分。

私の子供はにひとだけ」




ボクはそれを聞きながら、打ち込まれたデータを記録していく。




人間は23~6時の間に睡眠を取る人が多い。

人間は熟睡している間は無防備になる。

人間が無防備になった瞬間に首を絞める。




「・・・・・・・・・こんなもんかしら。これだけデータを入れとけば、どれかは出来るでしょ」





母は立ち上がると電源のスイッチを押した。




「にひと、お母さんを助けて。お母さんを困らせる人を殺して。

次に目を覚ました時、貴方は自分の中にあるデータから自分がやるべき事を行うの。

わかるわよね?お母さんが邪魔に思う人をしっかり殺して、そしてまたお母さんの所に戻ってきて」




最後の情報。

ボクはそれを記録すると、瞳を閉じた。

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