第6話 初めての変身
【対アバター本部:実験場】
「では、これよりインタフェイサー6号機変身実験を開始します。プレーヤー
「はい……」
インタフェイサーを身体に取り付ける。既に初期設定と所有者登録は済ませてある。インタフェイサーには俺の生体データを登録した証としてイニシャライズが入っている。ちなみにこの端末機、特定の動作と単語を発しなければちゃんと作動しないようになっているらしい。
『ポゼポゼポゼーション! ポゼポゼポゼーション!』
そして、あの奇妙な電子音声と音楽、もとい変身待機音が鳴り響く。何なんだろうなこれは……。
ちょっと恥ずかしいが、両腕を突き出して交差させた後、爪で引っ掻くようなポーズを取り、再度に設置されている蒼いスイッチを押し込み、力強く叫んだ。
「トライオン!」
今はトライオンと発言したが、アバターが憑依する時、アバターが形態を変える時は「変身」という単語を言わなければいけないそうだ。何でこの単語なのかと尋ねたら、"本当に変身するから"という理屈と、製作者の趣味と教えられた。増々よくわからんがまあいいか。
傍らにいた政宗の身体が発光し、俺の脳に入り込む。その瞬間、俺の意識は俺の身体から遠ざかり、精神の奥底、ええと、潜在意識内に引っ込む。感覚はある程度共有したままな。そして政宗の意識が俺の身体の人格を務める。
『電装! ドラゴンソルジャーフォーム! ド・ド・ドラララ、ドラゴンクロー! 爪竜! 電流! ドラゴンソルジャー!!』
景気の良い電子音声と共に謎の口上。気になって
そんなことを思い返していると、身体が大量の粒子、ブレイニウム粒子に包まれ視界が光りに染まる。
その瞬間、身体中の細胞が疼くような、皮膚や筋肉に虫が蠢くような気色悪い感覚が襲う。痛痒いような気もするぞ。しかしその感覚は数秒で終わり、光りが晴れて視界が広がる。だが、どうも視野がおかしい。遠くまで見渡せる。凝視すればカメラのズームのように視点が定まる。匂いも音もよくわかる。
思わず顔を触る。無論普通の人間の顔を触る感触ではない。ごつごつしていたりつるつるしていたり、妙な凹凸があり、角らしきものまである。そして両腕と自分の身体を眺める。
手触りは何とも言えんな。生物的質感と見た目の、青い装甲。これは生体装甲だったか、その下にある黒いのは強化皮膚だったか。蒼き生体装甲と政宗を模したような外観。政宗の視界越しに、モニターに映し出された姿が写っている。
俺は遂に異形の戦士へと変身したようだ……これでも俺も正義のヒーローってか?
局員達の歓喜に満ちた声。距離はある筈なのによく聴こえている。これは五感が強化されているということか。口を動かしてみたが、普通に動く。あ、口は装甲に覆われているだけなのか。
――で、出来た……変身出来たな政宗……!――
「あ、ああ。こいつはすげえ……なんてパワーだ、力が溢れるぜ!」
変身した自分の身体を確かめるように動き回る。そして、左右の腰にマウントされているマルチガッシャ―と呼ばれる懐中電灯の様な形状の物を手に取る。
マルチガッシャーを手に取った瞬間、一瞬粒子が噴出して形状が変化。政宗が使っている手甲爪刀へと変貌していたのだ。
「それは、電装ゲーマーが触れると分子構造が組変わり、アバターが所有する武器へと形を変えるモーフィング機能です。仕組みはオーバーテクノロジーで我々もよくわからないので理解しなくても大丈夫ですよ」
「へえ、便利じゃねえか。つまりコイツを依代に俺の武器が再現されたようなもんか」
――すげえ機能だなおい。
「親父さんも言ってたじゃねえか。ファンギャラの技術も使ったってよ? 流石俺達の世界を作り上げた創造主様って話しだ」
――いや、その未知の世界の技術を、現代技術と組み合わせて開発出来たのがとんでもねえだろ?――
「まあいいじゃねえか。とにかく、これで俺達も正式に戦えるってわけだ、
――そうだな……――
インタフェイサーは、
"絶対に信用できるのは家族と気心知れた友人のガキだけ。下手に才能のある奴や大人に渡せば必ず増長して裏切る"
という、世界の危機が掛かっているのに無茶苦茶な理由で所有者を選んだらしい。
い、いや。なんかわからなくもねえけどさ。でもそんな、映画や漫画じゃないんだから……。
俺は身内でも何でもない。ただ
インタフェイサーは装着者の体内にあるナノボットとマイクロチップとリンクしているそうで、
俺の体内にあるナノボットとマイクロチップとリンク設定をしていないので、機能が安定せずに憑依率と性能が低くなる可能性もあると言われた。
やれやれ、後付けデバイスの設定をしても、母体となるコンピューターとソフトの設定をしていない状態ということか。
だが、そんな心配を他所に、俺と政宗は
性能がいまいち安定せず、負荷が掛かり過ぎてぶっ倒れることを除けばな……。
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