第3話 爆走馬

 なるべく一目に付きにくい裏山付近。

 土地開拓は進みフクオカシティはネオン煌めく未来チックな外観になれど、自然を残した風景も各所に存在する。


 そんな場所で、竜刀リュートーの紹介により、サークル「竜刀リュートー軍」のアバター達が集った。


 やはり、皆ファンギャラ内でエディットした通りの見た目だ。


 まるで暴走族の特攻服風に作られた和柄の服装と装備。色もブルーを基調に黒色を添えている。


 こいつらも政宗の考えに賛同している連中だ。プレーヤーの演技ロールを基にしているという概念なら結局自分達の意志になのか怪しいところだが、竜刀リュートー達もその辺は悩んでいるらしい。

 果たしてこの感情と考えは自分達の意志によるものか、だそうだ。だから真の意味で己を解放する為に人間を攻撃するアバターが大勢いるそうだ。まあ、気持ちはわからないでもない。


 そして、俺の役目は竜刀リュートー軍メンバーとそのプレーヤーであるパルクール部員達との仲介だ。


 電子端末を頭に翳し、体内のナノボットと思考を連動して全員に連絡を取る。あっと言う間に部員の端末に繋がり、会話を交わす。傍から見たら奇妙な光景だろうが、これがこの時代のネットワークシステムだ。


 専用のルーターが街中にセットされているから出来る芸当だけどな。


 そうして、部員達を呼び出し集まってもらい、アバター達とご対面してもらったわけだが、まあパニックが起き掛けたわけだ。


 最初はテンプレな反応如くコスプレ集団と思われた。その後は魔法やスキルをお披露目して無理矢理信じてもらったんだが、1人1人きちんと説明しなきゃいかんのは骨が折れる作業だった。疲れたっての……。


 どうにかこうにかファンギャラの現状とアバター達の事情、これからの事を話し込んだ。


 まあ全員が全員直ぐに納得出来たわけじゃねえ。そりゃ個人差はあるし考えは人それぞれだからな。


 それでもプレーヤーとアバター、それぞれ歩み寄り、多少打ち解けた様子も見受けられた。


 俺と竜刀リュートーだけならまだしも、ドタバタレギュラー3人組が先に仲良くなっていたから良かったのかもしれないな。


「さすが俺のプレーヤーだな」


「何だよ急に?」


「慕われてるじゃねえか。それぞれ反応は違うが、あいつ等お前の話に反論することはなかった」


「まあ、一応部長だから人望がねえとやってられねえし」


 俺の人格をベースに竜刀リュートーの人格が形成されている。だから竜刀リュートー竜刀リュートー軍メンバーを引き連れており、筆頭と呼ばれ慕われている。俺達がいなければこいつらの関係も存在しなかったということになるのか。


 なんだか、妙な気持ちになる。


「ところでさ。ファンギャラで乗ってたアタシらの馬は連れて来れなかったの?」


 朱里の唐突な質問が投げかけられた。その疑問に答えたのは彼女のアバター手裏。


「ああそれはね、召喚すればいいんだよ。ねえ筆頭?」

「ああ。用がねえ時は邪魔になっちまうからな」


 確かに、あれだけの数の馬が一斉にこちらに来れば嫌でも目立つし邪魔になってしまう。


「見てえってんなら、俺の馬だけでも召喚すっか」


 竜刀リュートーが正面に腕を翳して指を動かす。すると、空中に円形状の紋様が描かれた、その、なんだ? 魔法陣か。魔法陣が現れて、光り輝いた。思わず驚きつつも魅入ってしまった。


「いでよ人馬!」


 政宗の掛け声と共に、青く発光した魔法陣から馬が飛びだす。


 召喚された馬は、政宗が乗っている愛馬。名前はブルーサンダー。

 青い布に黒いフレームで作られた装飾を頭や背に付けており、まるでバイクのグリップのようなものまで付いているのは竜刀リュートーの……いや、正確には俺の趣味だ、うん。


 レベルも高く、速さもジャンプ力もぴか一。竜刀リュートーに促され恐る恐る触れてみる。どうやら俺と竜刀リュートーの繋がりを感じているようで、特に暴れることなく身を任せてくれた。命の鼓動と温もりを感じる。


 これが、こいつが仮想世界から出来て来たデータだなんて信じられねえ。生きてるじゃねえか。


「すっご~い、本当にファンギャラで見た馬だね」


 朱里が大はしゃぎで喜んでいる。鼓太郎と英人も感慨深くブルーサンダーを眺める。彼女達が触れても嫌がる様子は無い。人に馴れているのか。


「ん? ……じん。どうやら戦いがおっぱじまりそうだ」

「アバターが来たのか?」


 この世界に降り立つ新たな同胞の存在を感知したらしい。ブルーサンダーも竜刀リュートー動揺に感じ取ったらしく、鼻息を震わせながら自分に乗るよう促している。


じん。大抵のアバターは人間を殺す気だ。まあ中には無理矢理召喚された奴らもいるがな。まずは確かめに行く。身体借りるぜ?」


「お、おう。大丈夫だ、来い!」


 竜刀リュートーの身体が青い粒子と稲妻に包まれて発光し、身体に変化が訪れる。確か、電装と言うんだったか。


「この状態の筆頭は何て呼べばいいんだろう?」


「略してR(竜刀)仁じんで良くね?」


「あ、いいねそれわかりやすい」


「だろう?」


 鼓太郎のアバター姫和子の問いに、英人アバター笛糸が答えを出す。ああ、まあ確かにわかりやすいかな。


――お前らは自分達のプレーヤーに憑依して隠れとけ。何かあったら呼び出す――


 竜刀リュートーが部下達に指示を出す。景気良く返事を返した彼らは、自分のプレーヤーに一礼を述べた後、発光体となり、それぞれ脳に憑依した。ただ、潜在意識内に憑依したらしく、容姿に変化はない。


――じゃあ行くぜじん――


「ああ、竜刀リュートー


 ブルーサンダーに跨り、勢い良く走り出す。

 果たしてこの世界に訪れた相手は、敵か、味方か……。敵だった場合は戦闘になるのだろう。 なるべく一目に付きにくい裏山付近。

 土地開拓は進みフクオカシティはネオン煌めく未来チックな外観になれど、自然を残した風景も各所に存在する。


 そんな場所で、政宗の紹介により、サークル「伊達軍」のアバター達が集った。


 やはり、皆ファンギャラ内でエディットした通りの見た目だ。


 まるで暴走族の特攻服風に作られた和柄の服装と装備。色もブルーを基調に黒色を添えている。


 こいつらも政宗の考えに賛同している連中だ。プレーヤーの演技ロールを基にしているという概念なら結局自分達の意志になのか怪しいところだが、政宗達もその辺は悩んでいるらしい。

 果たしてこの感情と考えは自分達の意志によるものか、だそうだ。だから真の意味で己を解放する為に人間を攻撃するアバターが大勢いるそうだ。まあ、気持ちはわからないでもない。


 そして、俺の役目は伊達軍メンバーとそのプレーヤーであるパルクール部員達との仲介だ。


 電子端末を頭に翳し、体内のナノボットと思考を連動して全員に連絡を取る。あっと言う間に部員の端末に繋がり、会話を交わす。傍から見たら奇妙な光景だろうが、これがこの時代のネットワークシステムだ。


 専用のルーターが街中にセットされているから出来る芸当だけどな。


 そうして、部員達を呼び出し集まってもらい、アバター達とご対面してもらったわけだが、まあパニックが起き掛けたわけだ。


 最初はテンプレな反応如くコスプレ集団と思われた。その後は魔法やスキルをお披露目して無理矢理信じてもらったんだが、1人1人きちんと説明しなきゃいかんのは骨が折れる作業だった。疲れたっての……。


 どうにかこうにかファンギャラの現状とアバター達の事情、これからの事を話し込んだ。


 まあ全員が全員直ぐに納得出来たわけじゃねえ。そりゃ個人差はあるし考えは人それぞれだからな。


 それでもプレーヤーとアバター、それぞれ歩み寄り、多少打ち解けた様子も見受けられた。


 俺と政宗だけならまだしも、ドタバタレギュラー3人組が先に仲良くなっていたから良かったのかもしれないな。


「さすが俺のプレーヤーだな」


「何だよ急に?」


「慕われてるじゃねえか。それぞれ反応は違うが、あいつ等お前の話に反論することはなかった」


「まあ、一応部長だから人望がねえとやってられねえし」


 俺の人格をベースに政宗の人格が形成されている。だから政宗は伊達軍メンバーを引き連れており、筆頭と呼ばれ慕われている。俺達がいなければこいつらの関係も存在しなかったということになるのか。


 なんだか、妙な気持ちになる。


「ところでさ。ファンギャラで乗ってたアタシらの馬は連れて来れなかったの?」


 朱里の唐突な質問が投げかけられた。その疑問に答えたのは彼女のアバター手裏。


「ああそれはね、召喚すればいいんだよ。ねえ筆頭?」

「ああ。用がねえ時は邪魔になっちまうからな」


 確かに、あれだけの数の馬が一斉にこちらに来れば嫌でも目立つし邪魔になってしまう。


「見てえってんなら、俺の馬だけでも召喚すっか」


 政宗が正面に腕を翳して指を動かす。すると、空中に円形状の紋様が描かれた、その、なんだ? 魔法陣か。魔法陣が現れて、光り輝いた。思わず驚きつつも魅入ってしまった。


「いでよ人馬!」


 政宗の掛け声と共に、青く発光した魔法陣から馬が飛びだす。


『爆走! 疾走! 独走! 筆頭! 爆走馬さんじょ~う!! 人馬一体、爆走馬!!』


 何処からともなくまたあの変な音声と音楽が流れた。


 これは、ファンギャラで召喚獣を召喚した時に流れるあの変な効果音声だ。こんなものまで再現しちまってのか? 今ので地元に人達に勘付かれて騒ぎにならないよな……?


 召喚された馬は、政宗が乗っている愛馬。名前はブルーサンダー。

 青い布に黒いフレームで作られた装飾を頭や背に付けており、まるでバイクのグリップのようなものまで付いているのは政宗の……いや、正確には俺の趣味だ、うん。


 レベルも高く、速さもジャンプ力もぴか一。政宗に促され恐る恐る触れてみる。どうやら俺と政宗の繋がりを感じているようで、特に暴れることなく身を任せてくれた。命の鼓動と温もりを感じる。


 これが、こいつが仮想世界から出来て来たデータだなんて信じられねえ。生きてるじゃねえか。


「すっご~い、本当にファンギャラで見た馬だね」


 朱里が大はしゃぎで喜んでいる。鼓太郎と英人も感慨深くブルーサンダーを眺める。彼女達が触れても嫌がる様子は無い。人に馴れているのか。


「ん? ……じん。どうやらパーティータイムがおっぱじまりそうだ」

「アバターが来たのか?」


 この世界に降り立つ新たな同胞の存在を感知したらしい。ブルーサンダーも政宗動揺に感じ取ったらしく、鼻息を震わせながら自分に乗るよう促している。


「オーケイオーケイ、ブルーサンダー。じん。大抵のアバターはテメエら人間を殺す気だ。まあ中には無理矢理召喚された奴らもいるがな。まずは確かめに行く。身体借りるぜ?」


「お、おう。大丈夫だ、来い!」


 政宗の身体が青い粒子と稲妻に包まれて発光し、俺の脳に憑依。俺の意識は直ぐに潜在意識の方へ引っ込み、身体に変化が訪れる。いわゆる憑依状態ってやつだ。


「この状態の筆頭は何て呼べばいいんだろう?」

「略してM(政宗)仁じんで良くね?」

「あ、いいねそれわかりやすい」

「だろう?」


 鼓太郎のアバター姫和子の問いに、英人アバター笛糸が答えを出す。ああ、まあ確かにわかりやすいかな。


「お前らは自分達のプレーヤーに憑依して隠れとけ。何かあったら呼び出す」


 政宗が部下達に指示を出す。景気良く返事を返した彼らは、自分のプレーヤーに一礼を述べた後、発光体となり、それぞれ脳に憑依した。ただ、潜在意識内に憑依したらしく、容姿に変化はない。


「じゃあ行くぜじん


 ――ああ、よろしく頼むぜ政宗――


 ブルーサンダーに跨り、勢い良く走り出す。

 果たしてこの世界に訪れた相手は、敵か、味方か……。敵だった場合は戦闘になるのだろう。

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