第2話 アバターとの交流

 自分は仮想ファンタジア世界ギャラクシアから実態化を果たした電子族アバターである。


 竜刀リュートーから説明された時、その荒唐無稽さにより直ぐには信じられなかった。


 ネットワーク、ネトゲーの中で制作された一データであるアバターが、自我と高い知性を持って現実世界に飛び出してくるなんて誰が想像できようか。


 いったいどういう理屈で、どういう原理でそうなったのか、いくら考えてもそれ類の知識も素養も持ち合わせていないのでまったくわからない。


 一見、コスプレした人間に見えるかもしれないが、凝視すると服装と肌の質感はリアルなCGであることも特徴だろう。


 そして、竜刀リュートーから意外な人物達が紹介された。


 竜刀リュートーにとっては部下であり、俺にとっては部活の同期である鼓太郎、英人、朱里のアバターだ。


 鼓太郎のアバターは姫和子。着物を着崩した中性的な容貌。

 英人のアバターは笛糸。橙色の着物を羽織った活発そうなスタイル。

 朱里のアバターは手裏。和柄の洋服を着込み、くのいち風にまとめた少女。


「妙な見覚えがあると思ったらこういうことだったか。ま、よろしくしてやってくれ」


 鼓太郎たちは自分のアバターと出会えたことに驚きつつも喜んでいるようだ。多少おっかなびっくりだけどな。姫和子達も同様だな。こいつらもプレーヤーが演技ロールした通りの人格のようだ。


「俺達アバターは、アンタら神様プレーヤー演技ロール、思考、記憶、性格を基に人格を形成するんだ。特に象徴するような要素があれば、それが誇張されることもある」


「そうなのか。お前は俺が演技ロールした通りだな……」


 正直な気持ち、凄く恥ずかしい。自分がネット状で演じたものが現実に現れる。それはまるで黒歴史が実態化したようなものではないか。己と己が対峙しているようなもんだ。


 余計にわからねえことがある。

 竜刀リュートーの話によれば、現実世界に実態化を果たしたアバターの目的は、この現実世界の侵略。

 俺達人間は向こうからすれば神様らしく、この世界も神界。

 いずれ自分達を消滅させる神々。その支配からファンギャラ世界を解放すべく、先導者の導きのもと自我を覚醒。己を作りだしたプレーヤーを倒すことが使命らしい。


「なんでお前は俺達を助けてくれたんだよ?」


「全員が全員、あのお方に従っているわけじゃねえってことだ。彼から指令として頭の中に声が聞こえてくるんだが、実際に姿を見た奴はいねえ。正直言うと、得体の知れねえ奴の指示に黙って従う義理もねえしな。俺は自分の眼で確かめたかったんだ」


「それで助けたのか?」


「この世界でわかったことは、アンタらプレーヤーは神でもなんでもねえってことだ。弱い奴らを一方的にに攻める趣味はねえ。それはただの侵略行為だからな。それにこの世界の文明も、どう見積もってもギャラクシアよりは下だ」


 冷めた視線をした政宗の発言に多少反抗したい衝動に駆られる。

 確かにSF世界であるギャラクシアより遥かに文明は劣るかもしれない。

 しかし、ナノボットとマイクロチップを利用したインプラント治療や予防。粒子プロセッサによる電脳世界への意識移植。人工細胞やナノマシンを基にした義体開発だって成功し普及し始めている。街中にはドローンが行き交い、電子技術は飛躍しているんだ。


「お前はファンタジア用に作った。ファンタジアからしたら現実世界は未来だろう?」


「世界はな。だけどアンタらは種族的強さもなけりゃ魔法も使えねえ脆弱な奴等だ」


 何も言い返せなくなった。

 先程のアバターの襲撃も、政宗が俺に憑依してくれなかったら死んでいたかもしれない。


「俺は自分の眼でお前らの世界を確かめた。で、適当にぶらぶらしてたらアンタらが襲われてたから、それで助けることに決めた。それだけだよ。あいつらも同じ気持ちだ」


 竜刀リュートーは姫和子達に視線を移す。鼓太郎達との談話に華を咲かせているようだ。


「あいつ等だけじゃねえ。俺が率いる部下も全員だ」


 その言葉に、サークルメンバーを思い出す。

 俺がファンギャラで作ったサークルメンバーの大半はパルクール部員なのだ。


じん、俺はアンタらと交流することに決めた。部下達にも伝えてある。この世界は倒すべき敵じゃねえ。反抗活動をおっぱじめようと思ってな」


 竜刀リュートーの差し出した手を、強く握る。

 伝わる温もりは、同じ生命体であることを実感した。

 現実と仮想の隔たりはあるけどな。


 こうして、俺達「竜刀リュートー軍」のファンギャラを巡る戦いが勃発することになった。

 巻き込まれた感もあるが、俺も竜刀リュートーに影響されたのか、真実を追い求めたくなったのかもしれねえ。 自分は仮想ファンタジア世界ギャラクシアから実態化を果たした電子人類アバターである。


 政宗から説明された時、その荒唐無稽さにより直ぐには信じられなかった。


 ネットワーク、ネトゲーの中で制作された一データであるアバターが、自我と高い知性を持って現実世界に飛び出してくるなんて誰が想像できようか。


 いったいどういう理屈で、どういう原理でそうなったのか、いくら考えてもそれ類の知識も素養も持ち合わせていないのでまったくわからない。


 一見、コスプレした人間に見えるかもしれないが、凝視すると服装と肌の質感はリアルなCGであることも特徴だろう。


 そして、政宗から意外な人物達が紹介された。


 政宗にとっては部下であり、俺にとっては部活の同期である鼓太郎、英人、朱里のアバターだ。


 鼓太郎のアバターは姫和子。着物を着崩した中性的な容貌。

 英人のアバターは笛糸。橙色の着物を羽織った活発そうなスタイル。

 朱里のアバターは手裏。和柄の洋服を着込み、くのいち風にまとめた少女。


「妙な見覚えがあると思ったらこういうことだったか。ま、よろしくしてやってくれ」


 鼓太郎たちは自分のアバターと出会えたことに驚きつつも喜んでいるようだ。多少おっかなびっくりだけどな。姫和子達も同様だな。こいつらもプレーヤーが演技ロールした通りの人格のようだ。


「俺達アバターは、テメエら神様プレーヤー演技ロール、思考、記憶、性格を基に人格を形成するんだ。特に象徴するような要素があれば、それが誇張されることもある」


「そうなのか。お前は俺が演技ロールした通りだな……」


 正直な気持ち、凄く恥ずかしい。自分がネット状で演じたものが現実に現れる。それはまるで黒歴史が実態化したようなものではないか。己と己が対峙しているようなもんだ。


 余計にわからねえことがある。

 政宗の話によれば、現実世界に実態化を果たしたアバターの目的は、この現実世界の侵略。

 俺達人間は向こうからすれば神様らしく、この世界も神界。

 いずれ自分達を消滅させる神々。その支配からファンギャラ世界を解放すべく、先導者の導きのもと自我を覚醒。己を作りだしたプレーヤーを倒すことが使命らしい。


「なんでお前は俺達を助けてくれたんだよ?」


「全員が全員、あのお方に従っているわけじゃねえってことだ。彼から指令として頭の中に声が聞こえてくるんだが、実際に姿を見た奴はいねえ。正直言うと、得体の知れねえ奴の指示に黙って従う義理もねえしな。俺は自分の眼で確かめたかったんだ」


「それで助けたのか?」


「この世界でわかったことは、お前らプレーヤーは神でもなんでもねえってことだ。弱い奴らを一方的にに攻める趣味はねえ。それはただの侵略行為だからな。それにこの世界の文明も、どう見積もってもギャラクシアよりは下だ」


 冷めた視線をした政宗の発言に多少反抗したい衝動に駆られる。

 確かにSF世界であるギャラクシアより遥かに文明は劣るかもしれない。

 しかし、ナノボットとマイクロチップを利用したインプラント治療や予防。粒子プロセッサによる電脳世界への意識移植。人工細胞やナノマシンを基にした義体開発だって成功し普及し始めている。街中にはドローンが行き交い、電子技術は飛躍しているんだ。


「お前はファンタジア用に作った。ファンタジアからしたら現実世界は未来だろう?」


「世界はな。だけどお前らは種族的強さもなけりゃ魔法も使えねえ脆弱な奴等だ」


 何も言い返せなくなった。

 先程のアバターの襲撃も、政宗が俺に憑依してくれなかったら死んでいたかもしれない。


「俺は自分の眼でお前らの世界を確かめた。それで助けることに決めた。それだけだ。あいつらも同じ気持ちだ」


 政宗は姫和子達に視線を移す。鼓太郎達との談話に華を咲かせているようだ。


「あいつ等だけじゃねえ。俺が率いる部下も全員だ」


 その言葉に、サークルメンバーを思い出す。

 俺がファンギャラで作ったサークルメンバーの大半はパルクール部員なのだ。


じん、俺はお前らと交流することに決めた。部下達にも伝えてある。この世界は倒すべき敵じゃねえ。反抗活動をおっぱじめようと思ってな」


 政宗の差し出した手を、強く握る。

 伝わる温もりは、同じ生命体であることを実感した。

 現実と仮想の隔たりはあるけどな。


 こうして、俺達「伊達軍」のファンギャラを巡る戦いが勃発することになった。

 巻き込まれた感もあるが、俺も政宗に影響されたのか、真実を追い求めたくなったのかもしれねえ。

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