第148話 魔女達の狙い その2

 小屋から出て、今度はまた暗い森の中を歩いて行く。


 そして、全員が無言のままに歩き、遂に浜辺に出た。


「……船か」


 目の前には巨大な船……輸送船ほどの大きさの船だ。


「フフッ。いやぁ、私はいらないと言ってもくれる人がいるものでね……ただ、こういう時には役に立つものだな」


 無邪気な笑顔でそう言うクラウディア。コイツは……苦労という言葉を知らないんじゃないだろうか。


「さぁ、入ってくれ」


 言われるままに俺とエルナ、そして、ウルスラも船に乗せられることになった。


 船上にあがると、男たち……リベジスタで見覚えの有る男たちが船の上に立っていた。


「さて……悪いが、エクスナー少尉とウルスラは別行動だ」


 クラウディアがそう言うと男たちがエルナとウルスラの周囲を囲む。


「……まさかとは思うが、海の上に放り出すとかは……しないよな?」


 俺がそう言うとクラウディアはおかしそうに微笑む。


「君、面白い事を言えるんだな。だが、残念ながらそんなことはしない」


 クラウディアが目配せすると、男たちはエルナとウルスラを連れて行った。


 連れて行かれる矢先、エルナが不安そうに俺のことを見る。


 俺は目だけでエルナに安心しろと合図を送った……といっても、伝わったのかはわからないが。


「フフッ……君は本当に面白いやつだな」


 エルナとウルスラがいなくなると、クラウディアが早速俺に話しかけてきた。


「そんなにさっきの冗談が面白かったのか?」


「まぁ……それもあるが、それよりも、君の生き方そのものだな」


 クラウディアはそう言って鋭い目つきで俺を見る。


 さも、俺を値踏みするかのような……いやらしい目つきだった。


「……買いかぶりだ。俺の生き方なんてつまらない……退屈そのものだ」


「いや、君は面白い人間だよ。この私が興味を持っているんだ。面白くなければ困る」


 そういってクラウディアは船の上を歩き、船べりに腰をかける。


「そろそろ出発だ。船旅は長い……少し、ここで話そうじゃないか」


 クラウディアがそう言うと共に、船がガタンと音を立てる。


 それとともにゆっくりとだが、帆に風を受け……船は海上を進みはじめたようであった。

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