第144話 魔女の棲む島 その2
「では~私はこれで~」
島の浜辺に付くと、舟から乗らずにディーネは俺とエルナにそう言った。
「……お前は来ないのか?」
俺がそう言うとディーネは少し困ったような顔で俺とエルナを交互に見る。
「すいませんねぇ~。お二人には同行したいんですが~、一緒に行けないんですよ~」
「行けない? なぜ?」
「私は~、あの町に囚われた存在ですから~。あの町から一定の距離の以上は離れることができないんですよ~」
そう言うとディーネは舟を再び漕ぎ出し、今一度海へと漕ぎ出す。
「では、お二人とも~、お達者で~」
そういって、来た時と同じように、滑るようにしてディーネはまた舟を進めていき。すぐに舟とディーネの姿は見えなくなっていった。
「……なんだったんだ。アイツは」
エルナが怪訝そうな顔でそう言う。
「幽霊……かもな」
俺がそう言うと忌々しそう顔でエルナは俺を見る。
「馬鹿を言うな……アイツにはきちんと足が付いていただろうが。それに、そんな非科学的な存在、私は信じないぞ」
……非科学的な存在、か。
なんだか、今まで旅してきた間に幽霊よりもとんでもない存在をずっと見てきたので、俺はそれ以上は何も言わなかった。
「しかし……ここにシコラスという魔女がいるのか? 家などは……どこにも見当たらんが……」
エルナはそう言って周囲を見回す。しかし、俺は確信していた。
間違いない……ここは、シコラスの住んでいる孤島だ。
「そうだな……とりあえず、シコラスが住んでいる島の奥へ――」
「僕がそこまで案内しようか?」
俺とエルナは同時に武装に手をかけ、身構えた。見ると前方に灯りのついたランタンを持った人物が立っている。
「酷いなぁ。そんな警戒しないでよ」
「お前は……」
ランタンの炎に照らされた顔は、見覚えのあるニヤニヤとした気味の悪い笑顔だった。
「……ウルスラ」
「やぁ、久しぶりだね。お二人さん」
俺たちから突如として消えた「命弄ぶ魔女」は、同じように、突然、俺たちの前に現れたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます