第107話 類似した狂気 その2

 そう言って、俺のことを指差すミラ。


 先輩……どうやらそれは俺のことを言っているらしい。


「じゃあ、その動く死体は?」


 俺がそう訊ねると、ミラは肩をすくめる。


「……これは、保険です。アナタは男性ですし、女性を人形に変えた狂人……何をされるかわかりませんから」


 ミラがそう言うと動く死体がこちらに近づいてくる。


「……そこの人形と一緒に、御主人様がいる部屋まで案内します。大人しくしてくれれば何もしませんから……」


 狭い部屋ではあっという間に動く死体に囲まれてしまった。


 背後にはリゼもいる……そもそも、この動く死体……死んでいるのは確かなのだろうが、倒すことができるのか……正直、俺には倒せる自信がなかった。


「ロスペル様……」


 不安そう声でリゼがそう言う。俺はここで選択すべき行動を理解した。


「……わかった。お前の御主人様とやらに会うことにしよう」


 俺がそう言うと、陰険そうなメイドはニヤリと不気味に微笑んだ。


「……それでは、ご案内いたしましょう」


 そういってミラがパチンと指を鳴らすと、一瞬にして死体は崩れ落ちて、ただの死体となった。


「……お前、いいのか? 俺が今から俺を襲うかもしれないぞ」


 意外な行動に俺が驚いていると、ミラは自信有りげな表情で俺を見る。


「……いえ。さすがに一度約束したことを反故にするような人間には、アナタは見えません」


「ほぉ……じゃあ、お前には俺がどう見えるんだ?」


 するとメイドは蔑むような目で俺のことを見る。


「……純粋な人間です。純粋で、勝手……それでいて、狂っています。そうですね……私と、よく似ています」


 そんな勝手な事を言って、メイドは俺とリゼに背後を向け、そのまま階段の方に歩いていった。


「ろ……ロスペル様……付いていきますか?」


 リゼにそう言われ俺は我に返る。


「……リゼ」


「え……なんですか?」


 言うか言わないか迷ったが……俺は言うことにした。


「……アイツの言った通りだ。俺は……アイツが言った通りの人間なんだ」


 そういって俺はメイドの後を追う。リゼも不安そうにそのまま俺の背後を追ってきたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます

ビューワー設定

文字サイズ

背景色

フォント

機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。

一部のAndroid端末では
フォント設定が反映されません。

応援の気持ちを届けよう

カクヨムに登録すると作者に思いを届けられます。ぜひ応援してください。

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、気になる小説の更新を逃さずチェック!

アカウントをお持ちの方はログイン

フォロー機能を活用しよう

カクヨムに登録して、お気に入り作者の活動を追いかけよう!