第108話 類似した狂気 その3
「……どうぞ、こちらです」
一階に降りると、メイドは一つの部屋へと通された。
一階には誰もいない……そんな感じがしていたが……それとも、この家の主だろうか。
「うわ……なんだこれ」
俺も思わずそう言ってしまった。部屋の中にはありとあらゆる薬品があり……それと共に、様々な動物が瓶詰めにされていた。
「これ……全部死体か?」
「……ええ。御主人様の実験材料でした」
全部死体であるということが確定すると、リゼが俺の近くに身体を寄せてくる。俺は嫌がる素振りは見せず、メイドとの話を続行する。
「で、その御主人様とやらは?」
俺がそう言うと、メイドはまたしても不気味に微笑む。そして、瓶詰めの動物標本の一番端っこに、何かを閉まっておくような……大きな金庫のようなものがあった。
「……こちらです」
「は? ……何か? お前の御主人様というのは、随分と小さいんだな」
俺がそう言うとメイドは金庫の鍵らしきものを取り出す。そして、それを丁寧そうに鍵穴に差し込んだ。
「……いえ。小さく……なったのです」
そういって、メイドは金庫を開ける。すると、中から……かすかな明かりが灯った。
金庫の中で何かが仄かに光っている……そんな状態だった。
「お前……中に何が入っているんだ?」
俺がそう言うと、メイドが金庫から取り出したのは……小さな瓶だった。
同じだ。他の動物標本と同じように、瓶の中に何かが入っている。
しかし、それは……動物の死骸ではない。
光輝く……まるで太陽の光のような……それでいて俺にだけ見覚えがあるもの……
「お前……それって……」
俺の反応を見ると、メイドは嬉しそうに微笑んだ。
「……ええ。これがこの家の主……『死司る魔女』……ロッタ様です」
ミラがそういうのを聞いて俺は確信した。
魔女……どうやら、俺たちはまたしてもロクでもないやつの家に入り込んでしまったらしい。
いや、正確にはそのろくでもない無いやつは……既に肉体を失っているようなのであったが。
「……え、あれは……」
驚いた顔でそう言うのは……リゼだった。はじめてみればそれは驚くはずだ。
光り輝く美しい光……それでいてフワフワと浮かんでいる、謎の物体……
それは、紛れもなく……かつて、俺がリゼの身体の中に押し込んだ、人の魂そのものだったのだから。
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