第106話 類似した狂気 その1
「え……」
リゼが絶句している。俺は瞬時に短剣を構える。
と……剣先が一度引っ込む……しかし、俺は次の瞬間に起きることをある程度予想できていた。
そして、俺が予想していたとおりに、扉は蹴破られた。
その先にいたのは……半分白骨化した死体だった。
死体が……まるで生前と同様に、動いているのである。
おまけに剣や盾を持っていることから、その死体が……生前、俺と同じような兵士だったことは理解できた。
「な……なんですか。あれ……」
リゼは恐怖に歪んだ表情で、前方の動く死体を見つめている。
「……なんとなくだが、俺は予想がつく」
「……さすがですね。やはり、その人形……アナタが作ったものでしたか」
と、動く死体の背後から声が聞こえてくる。聞き覚えのある声……俺は瞬時に理解した。
「……お前か。メイド」
「……メイドではございません。私の名前はミラ……御主人様にお使えする下僕です」
そういって、腐乱した死体の背後から出てきたのは、不気味な笑みを浮かべる先程のメイドなのであった。
「……で、お前はなんなんだ?」
俺は剣を構えたままそう訊ねる。なるべくリゼは俺の背後に押しやるようにした。
「……言ったとおりです。私はミラ……御主人様にお仕えする下僕だと」
「じゃあ……そこの動く死体も、その御主人様とやらがやってんのか?」
そういって俺は剣で動く死体を指し示す。しかし、ミラは首を横に振る。
「……いえ。これは御主人様ではありません。私が、御主人様に教わった方法でやっているのです」
「教わった……やれやれ。で、お前はどうしたんだ? この死体の仲間に俺とリゼをしたいってわけか?」
俺がそう聞くとミラはまたしても首を横に振る。
「……違います。私はただ、聞きたいだけです。私の行っていることが正しいのか……それを、私と同じことをしようとして……それを成し遂げた先輩であるアナタに」
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