第101話 港へ
そして、次の日。
「しかし……本当にあっさり解放してくれたな」
俺は後方に見えるリベジスタを見ながらそう言ってしまった。
俺たちが街を出るまでの間、クラウディアが現れることさえなかった。
リゼもエルナも俺と同様にどこか拍子抜けしてしまったような気分のようである。
「だから、言っただろう? 僕がちゃんとフォローしておいたからさ。クラウディアは子供っぽいところがあるから、言えばちゃんと聞くんだよ」
ウルスラが得意げな顔でそういう。あそこまで俺やエルナに興味を示していた魔女が、急に興味を失うというのも……それはそれでなんだか不気味である。
「それで……次はどうするのだ?」
すっかりもとの調子に戻ったエルナが、高飛車な口調でそう訊ねる。
「港だ。シコラスのいる孤島に行く必要がある」
「おお! ついに師匠と会えるのか! 楽しみだなぁ!」
俺がそう言うとウルスラだけが元気そうにそう言う。一方でリゼは不安そう表情のままだった。
「港……どこの港だ?」
「ああ、そうだな……確か、どこかの港町だったんだが……」
「……なんだ。名前もわからないのか。場所はわかるのか?」
エルナにそう言われて、俺も少し不安になる。たどり着いたのも、既に十年以上前だ。記憶も少しあやふやである。
「……なんとか、大丈夫だと思う。とにかく、その港町で無理を言って、孤島までの船を出してもらったんだ。だから、その近くまで行けばすぐに島まで行ける。だから、とにかく海辺に向かおう」
「う~ん……でもなぁ、これでこのおかしなメンバーとの旅も終わってしまうのか……それはそれで、なんだかつまらないなぁ」
ウルスラは不満そうにそう言う。それを聞いて、エルナがムッとした顔でウルスラを見る。
「……お言葉ですが、マイスター・ウルスラ。我々は馴れ合いのために旅をしているわけではありませんので」
「ああ、はいはい。まったく……エクスナー少尉は冗談が通じないなぁ、もう」
お前はいつも冗談みたいなことしか言ってないだろうが、と言いたかったが、やめておいた。
とにかく俺たちはリベジスタを離れ、港町……海沿いへと向かうことにした。
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