第98話 本当の性分

 そして、夜にはそれぞれ自分の部屋に戻り、就寝した。


 俺も漸くベッドで眠ることが出来た……なんだか異様に疲れている。


 なんというか……色々考えさせられる事が多かった。


 エルナには、リゼがいる……か。自分で言っていた俺は改めて気付いた。


 俺には誰もいないのである。


 というか、俺の場合は、自分で自分の大切な人を破壊してしまったのだけれど。


 だから、エルナにはそうしてほしくなかった……アイツのことを気に食わないし、アイツ自身も俺のことは嫌いだろうけど、やはりそうはしてほしくなかったのだ。


 結果としてそうはならなくて安心した。これで、またリゼの身体を取り戻すための旅が続けられる。


 しかし、ふと思う。もし、これが全て終わったら、どうなるのだろう。


 俺はいよいよ何もない人間になる。帰る所もなければ、俺を必要としてくれる人間もいない。


 完全なる孤独……そうなったら、俺はどこへ行けば良いのだろう。


「……誰もいない……どこかの山の中にでも、行くか」


 そう呟いて俺は寝ることにした。どうせ、俺は死ぬと思っていた……生きていても仕方ない。


 ならば、将来のことを心配するなんて馬鹿馬鹿しい。そう思って、俺は寝ようと思った……その時だった。


 コンコン、と扉を叩く音がした。


「……なんだ。こんな時間に」


 少し俺は苛つきながらも、扉の方に向かっていく。そして、ゆっくりと扉を開ける。


「……お前、何の用だ?」


 扉の向こうにいたのは……エルナだった。


 俺としてもかなり予想外だった。てっきりこういう時間に部屋に来るのはリゼだと思った。


 なにせ、俺のせいでリゼは眠ることも出来ない……それならば、俺は対応する義務がある。


 しかし、エルナは……意味がわからなかった。


「すまない……少し……話したいんだ」


「話す? え……俺とか?」


 信じられない思いで俺がそう言うとエルナは確かに頷いた。


 俺としても帰れ、というのもなんだか忍びないので……仕方なく扉を開ける。


「……ありがとう」


 こうして、深夜に突然俺の部屋を訪れたエルナは、俺の部屋の中に入ってきたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る