第97話 再会
「エルナ!」
宿屋の部屋に戻ると、リゼは嬉しそうにエルナに抱きついた。
「ひ……姫様……申し訳……ございません」
本当にこの上なくすまなそうな表情で、エルナそう言った。
「いいのです……アナタが帰ってきてくれただけで……私は……」
そういって、リゼはエルナに抱きつく。エルナは恥ずかしそうにその抱擁を受け入れていた。
リゼの目……ガラス玉の瞳は、おそらく泣くことが出来たならば泣いていたであろうとばかりに光り輝いている。
……そんな目を見ていると、こちらが益々悪いことをしたのだという気分になってきてしまった。
「……ありがとうございます。ロスペル様」
「へ? 俺?」
と、リゼが俺に感謝を述べてきた。あまりにも突拍子がなかったので、俺は思わず聞き返してしまう。
「え……ロスペル様がいなければ……エルナは、帰ってきれくれませんでした。感謝しております」
リゼはそう言ってエルナの方を見る。どうやらエルナにも御礼を言え、と、暗に言っているようである。
エルナもそれに気付いたのか、渋々俺に頭を下げる。
「……すまなかった。ありがとう」
エルナは恥ずかしそうにそう言った。
俺としても、逆にどのように対応すればいいのかわからなくて……少し困ってしまった。
「あ、ああ……別にいい。帰ってきたんだ。それでいいだろ」
俺がそう言うとリゼもエルナも安心したようだった。
「あれ……そういえば、ウルスラさんがいないような……」
と、リゼがそのことについて思い出した。俺もそう言われて思い出した。
「ああ、悪いね。遅くなった」
リゼがそういったのを見計らったかのように、ウルスラが扉を開けて、部屋の中に入ってきた。
「お前……今までどこに行ってんだ?」
俺がそう訊ねると、ウルスラはまたしても意味深な笑みを浮かべる。
「あはは……ちょっと野暮用でね。というか、フォローだよ」
「……フォロー?」
「ああ、ああ見えて、クラウディアは子供っぽいところがあってね。自分の望むものが手に入らないととても落ち込むんだ。だから、僕が仕方のないことだと、説得していたのさ」
そういって、ウルスラは得意げな顔をする。俺たちが去った後もあの屋敷に残っていた……だから、遅くなったようである。
「マイスター・ウルスラ……その、クラウディア様は、なんと?」
と、エルナが不安そうにウルスラに訊ねる。
「ん? ああ、もう君は姫様の元に戻っていいってさ。取り返そうなんて思ってないらしいから。安心していいよ」
ウルスラにそう言われてエルナは漸く安心した表情をする。リゼも同様に微笑んでいた。
「……そうか。なら、そろそろ寝よう。明日にはこのおかしな町を出る……いいよな?」
俺がそう言うと、その場の全員が頷いた。
こうして、ひょんなことから俺達に起こった面倒は、なんとか解決したようなのであった。
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