第53話 知の魔女 その2
「え……あの小屋か?」
「ああ。間違いないよ。あそこにいると思うよ」
そう言ってウルスラはいきなり小屋に向かってかけて行ってしまった。
「あ、お、おい!」
俺が呼び止めるのも聞かずに、ウルスラはどんどん先に行ってしまう。仕方ないので俺もその後に続く。
が、振り向いて見ると、なぜかリゼとエルナは俺の後に就いてきていなかった。
「おい。お前達。来ないのか?」
すると、エルナがキッと鋭く俺を睨む。
「行くわけがない。私は、マイスターを信用していないからな」
「お前……ウルスラの知り合いってどんなヤツか、知りたくないのかよ?」
すると、さらに目つきを鋭くして、エルナは俺を睨む。
「知りたくもない。お前だけで行け」
「しかし、エルナ。私達も行った方が……」
「姫様! 危険です。ただでさえ姫様はそのようなお身体にされてしまったのですから……これ以上危険が伴う行動は私としても見過ごすわけにはいきません」
エルナの鬼気迫る剣幕に、リゼもそれ以上何も言えないようだった。
確かに、ウルスラの知り合いというのは、なんとも危険な香りのする言葉ではある。
「……わかった。俺が行ってくる」
仕方なく俺はそのままウルスラの後を追って、小屋へと向かった。小屋の前で、ウルスラは突っ立っていた。
「おい。中に入らないのか?」
「え? ああ。違うよ。君達を待っていたんだ。あれ? エクスナー少尉とリゼ様は?」
そう言って俺の肩越しから、少し離れてこちらを見ているリゼとエルナを見るウルスラ。その様子を察してか一人で勝手に頷いていた。
「まぁ、僕の知り合いだからってそんな変人ではないよ」
「……その言葉が既に信用できないな」
「あはは。まぁまぁ。じゃあ、入ろうか」
そういってウルスラはこともなげに扉を開けた。
すると、小屋の中には中央に大きな机が一つ、置いてあるだけで、後は部屋の隅にベッドがあるという、生活品はそれだけしか見受けられない状態だった。
「やぁ、テレーゼ」
と、ウルスラが呼びかけると、机に突っ伏して眠っていたようである人物は顔を上げた。
「え……おや。ウルスラ殿ではありませんか」
最初は寝ぼけているようだったが、すぐに目を輝かせてテレーゼと呼ばれた少女はこちらにやってきた。
くしゃくしゃの髪の毛に、黒ぶちの眼鏡。如何にも部屋に引きこもってそうな容姿の少女は、長いローブをまとっていた。
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