第46話 魂胆と目的 その2

「なるほど……で、失敗したんだな?」


「失敗じゃないさ。ただ、リゼ様ほど上手くいかなかったんだよ」


 引っ掛かる言い方をして、ウルスラは俺から視線を反らす。


「上手くいかなかった……どういう意味だ?」


「ふふっ。それは、エクスナー少尉に聞いて見るといいよ」


「はぁ? エルナに?」


 すると、ウルスラはいつのまにか俺が刺した短剣を手にしていた。


「あ……お前、勝手に……」


「そろそろフランチェスカに戻すよ。リゼ様がこの部屋にやってくる頃だからね」


「え? リゼが? そ、そんなことより、お前、まだ話が――」


 すると、いきなりウルスラは首筋をその短剣でかっ切った。血は噴き出さず、ただウルスラはそのまま床に倒れる。


 その瞬間、俺の部屋のドアが開いた。


「あ……ごめんなさい、ロスペル様。急に入ってしまって……」


「え? あ、ああ……」


 扉を開けたリゼよりも、今目の前で再び死んだウルスラのことに気を取られながらも俺はなんとかリゼの対応をした。


「え、えっと、フランチェスカさんは?」


「え? フランチェスカ?」


「なんだ? 呼んだか?」


 と、ひょっこりとフランチェスカが起き上がり、リゼの方に顔を向ける。


 首からは……やはり血は出ていない。どうにもやはりコイツ……というか、コイツらは、不思議な存在である。


 リゼは変なところから出てきたフランチェスカに少し驚いていたが、すぐに優しく笑顔を向ける。


「さぁ、お風呂に行きましょう」


「えー……風呂? 風呂は嫌いだぞ」


「ダメですよ。フランチェスカさんも女の子でしょう?」


 不満そうな顔をしながらも、リゼの言うとおりにそのまま部屋を出ていくフランチェスカ。


「あ……では、ロスペル様。失礼します」


「あ、ああ……」


 そういってリゼも部屋を出て行ってしまった。残された俺はなんだかよくわからないままにそのまましばらく立ちつくしていたのだった。

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