第45話 魂胆と目的 その1
それにしても、ウルスラのニヤニヤ笑い……どこかで見たことがあると思えば、シコラスの笑い方に酷く似ているのだった。
コイツも知り合いのようだし……魔女というのは似たような人種になるのだろうか。
「酷いなぁ、いきなり殺すなんて。一応死んじゃっているんだよ?」
俺はそんなどうでもいい言葉を無視し、ウルスラを見つめる。ウルスラはといえば、額の短剣を何事もなかったかのように引き抜き、傍らに置いた。
「お前……軍の人間なんだよな?」
「え? ああ、うん。そうだよ。それが?」
「お前が現れたとき疑問が幾つか浮かんだ。まず、なぜお前一人なんだ?」
「一人? 僕は一人じゃないよ? フランチェスカも一緒だ」
「……そういう意味じゃない。軍の人間が来る以上、どうしてお前一人……じゃなくてお前達一人何だと聞いているんだ」
俺がそう聞くと、俺の聞きた事を理解したようでウルスラは一人で頷いた。
「そうだね。疑問はもっともだ。だけど、前に言ったように、これは僕の興味の問題なんだ。皇帝陛下や帝国は関係ない。僕個人が勝手に動いているだけなのさ」
「……本当か?」
俺がそう聞くと、ウルスラは俺の方に顔を向けて、怪訝そうな顔で俺を見た。
「疑っているのかい? その理由は?」
「……戦争中、帝国では不死身の兵士を作ると言う研究をしていた噂を聞いた。そして、三年間、俺が帝国内部を探しまわって、その目当てとして見つけたのがシコラスだ。そのシコラスは魔人形生成の方法を知っていた。そして、シコラスは軍属のマイスターであるお前の師匠……どうにもお前が、ただの興味本位で俺達についてきているとは思えない」
俺が疑問に思っていたことを言い終わると、ウルスラはゆっくりと腕を組んだ。そして、観念したかのように大きくため息をついた。
「うむ。その鋭い洞察力に免じて、そうだね……白状しよう。僕が付いてきた本当の理由、それは、君と同じだよ」
「……俺と同じ? どういうことだ?」
「ふふっ。わかるだろう? 君と同じで僕も、やってみたくなっちゃったのさ。というか、僕の場合は頼まれたっていう節もあるんだけどね」
少しなぜか照れくさそうに、ウルスラはそう言った。そして、しばらくの沈黙の後、俺はコイツが何を言っているのか理解した。
「……魔人形を、作ったのか?」
俺がそう訊ねると、返事の代わりにウルスラはニヤリとほほ笑んだ。
その微笑みが肯定の意味だと云うことはどう見たって明確だった。
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