第44話 不思議な存在 その5
「ああ! そうです! それと……お洋服も買わないと」
「洋服? なんでだ?」
「え……あ、その……」
そういってリゼが俺に着ているローブの隙間から見せた、俺が作ったドレスは無残に破けていた。
「ああ。包丁が刺さった時だな」
リゼは申し訳なさそうに頷いた。
「ごめんなさい……ロスペル様が作ってくれたものなのに……」
「え……いや、別に俺、お前の為に作ったわけじゃないんだが」
「あ……ご、ごめんなさい! わ、私ったら恥ずかしい……」
なぜか赤面するリゼ。
人形なのに、赤面できるところまで見ると、やはり俺は、魔人形製作という意外とすごい事を成し遂げたのではないかと今更になって俺も思えてきた。
しかし、その一方で隣に立っているエルナはなぜか俺をまたもや睨んでいる。なんでか知らんが、どうにもヤツの機嫌を損ねるようなことをしたらしい。
「おい。どうでもいいから、腹減ったぞ」
そんな折にフランチェスカのわがままが割って入ってきた。俺達は仕方なく当座の宿を探すことにした。
四人全員が入れる部屋というのは、こんな小さな街の宿には無論あるわけがないのだ。
結果として、「姫様に不埒な真似をしないように」というエルナの意見で俺とフランチェスカが二人で部屋に泊ることになった。
もっとも、俺にはどうやって人形に不埒な真似をするのか疑問ではあったが。
「おい、お前。早く飯にしよう」
フランチェスカはベッドに座り足をバタバタとさせている。
コイツの中にいるもう一人の人格というか魂……ウルスラは色々知っているようだった。
なんとなく、ヤツには色々と聞きたいことがあった。
なので、コイツと二人きりの部屋になったのは都合がいいとは思っていた。
「なぁ、フランチェスカ」
俺は立ち上がり、フランチェスカに対し背を向ける。
「なんだ? 飯か?」
そういってフランチェスカが声をかけてきた瞬間、手にしていた短剣を投げつける。
フランチェスカの額にはこの前の包丁と同じように短剣は刺きささり、フランチェスカはベッドの上に倒れた。
「……悪いな。ちょっとお前の姉ちゃんに聞きたいことがある」
「やれやれ……強引な聞き方だねぇ……で、何かな? マイスター・ロスペル」
と、俺が話しかけると、額に短剣が刺さったままのフランチェスカ……ウルスラが起き上がってニヤニヤとしながら俺を見ていたのだった。
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