第47話 魂胆と目的 その3

 リゼとフランチェスカが部屋を出てからそれからしばらくして、俺はベッドに横になっていた。


 それにしても、よくわからないことだらけだ。最初はリゼとエルナをシコラスの元にまで案内するだけだったはずだったのに、なんだか物事がよくない方向に向かっている気がする。


 俺の人生というのはどうにもこんな感じである。良かれと思っている事が裏目に出ているのは、既にリザに対する一件で証明済みであるような気はする。


「まったく……どうしてこうなってるんだか……」


 思わず天井をにらみながらそう呟いてしまった。


 そういえば、この案内の旅が終われば、今度こそ俺に生きる目的はなくなってしまうのだということを思い出す。


 その時、俺はどうすればいいのだろうか……


「おい」


 と、そこへ扉の向こうから声が聞こえてきた。


 無愛想な声で、すぐに扉の先にいるのが誰かは理解できた。


「……エルナか。なんだ?」


「話がある。部屋に入っていいか」


 面倒だったが、俺としてもエルナに話はあった。ここは部屋に入れて話した方がいいだろう。


「ああ。入ってくれ」


 俺が呼びかけると、扉が開きエルナが入ってきた。


 その瞳は相変わらず俺に対して敵意まるだしで、今にもとびかかってきそうな雰囲気だった。


「なんだ。話って」


「……ああ、少し貴様に言っておきたいことがあったからな」


 そういってエルナはベッドに腰掛けた。


 すらっとした肢体に対し、ピッタリとした黒い服装が、この無愛想な少女のしなやかな体つきを強調している。

「言いたいこと? なんだよ?」


 俺が訊ねると、エルナは一層目つきを鋭くして俺を見る。


「とぼけるな。貴様、姫様に色目を使っているだろう?」


「……は? な、なんだって?」


 俺が呆然としていると、エルナは目を鋭くして、真剣に怒っていた。


「ふんっ。気持ちはわかる。人形になったとはいえ、姫様は天使のようにお美しい。お前のような罪人に対しても寛大に接してくださる。しかし、身の程というのはわきまえた方がいいだろうな」


 エルナは依然として敵意丸出しの目つきのままで俺にそう言ってきた。


 しかし、俺としてはエルナが何を言っているのか、よくわからなかった。


 いや、正確には何を言っているかはわかったのだが、まさかそういう意味で言っているのとは信じられなかったのである。


「あー……エルナ。お前、まさかとは思うが俺がリゼのことを……その……」


 俺がそう言おうとしていると、エルナは当然だと言わんばかりに腕を組んで俺を睨む。


「ああ。そうだ。貴様が愛した女と姫様は瓜二つなんだろう? だったら、リゼ様に恋心を抱いてしまうお前の気持ちも分からなくはないと言っているのだ」

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