第33話 人形の彼女 その4

「何? ずいぶんと似ていない姉妹だな」


「……もちろん、本当の姉妹ではありません。ですが、物心ついたときから、エルナは私の傍にいました。私にとっては、しっかりものの姉同然なんです」


「ふぅん。しかし、俺はずっと疑問だったんだよ。お前は今は亡き第二王子の娘、で、アイツは暗機隊の隊員だ。現皇帝側のアイツがどうしてお前を守ろうとしているんだ?」


「それは……」


 言い出しにくそうにしながら、リゼはしばらくたってから大きく息を吐き出した。


「……エルナは、私の父が現皇帝に処刑された後、潔白を証明するために即座に自らを現皇帝側に差し出しました。現皇帝としても、エルナの高い戦闘能力は評価していたようですぐに取り立てられ、敵側出会ってにもかかわらず、今では皇帝軍において少尉の地位にいます」


「なるほど。で、その少尉殿はお前をどうしようと思ったんだ?」


「……エルナは、軍属になってからも私に会いに来てくれました。そして何度も私に自分がなんとかするから、と行ってくれました。そして、ある日、私に皇帝からの使者がやってきました。使者といっても、傭兵のような男達で、その物たちは私を辺境の地に連れていくと……」


「傭兵……ああ、アイツ等か」


「はい。しかし、休憩時間中にたまたま聞いてしまったのです。彼らが私を……売り飛ばそうとしていることを」


 キッと唇を噛み、思い出すのも嫌だと云う風に両手で肩を抱いてリゼはそう吐き捨てた。


「ふむ。まぁ、おかしな話ではないな」


 俺がそう言うと、リゼは信じられないと云う風な目で俺を見た。そして、そのまま何も言わずに立ちあがる。かと思うと、そのまま俺の元を離れて行ってしまった。


「なんだありゃ……」


 別に、傭兵からしてみれば、安い賃金で亡き王子の娘の護送を任されたのだ。それ以上に金になる手段があるのならそちらを優先するというのは納得できないわけではない。


「……ま、お姫様にとっては、ショックが強かったのかもしれんが」


「ああ。その通りだ」


 と、後ろを振り返る。


 いつのまにか俺の背後にはエルナが立っていた。

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