第31話 人形の彼女 その2

「なぁ、お前。ホントに第二王子の娘なのかよ」


 もっと先延ばしになる質問かと思っていたが、案外俺の口から其の質問はすんなり出てきた。


 其の質問をされて、別段悲しむ様子もなく、ただひたすらに申し訳なさそうにリゼはうつむいた。


「……ええ。そうです。私の父はアウグスト・フォン・ベルンシュタイン……ズール帝国の第二王子でした」


「へぇ……なるほど。お前の親父さんのせいで、俺は戦争に行く羽目になったんだな」


 その問いに対しリゼは何も言わなかった。言えなかったのだろうが……かといってリゼにそれを言った所でどうにもならないことは俺にもわかっていたが。


「……すいません」


「だから、謝るなよ。別に謝ってもらおうなんて思っていないし、お前に謝ってもらっても仕方ないしな」


 ちらりとリゼの顔を見ると、またしても申し訳なさそうな顔をしている。なんだかそんな顔をされたままだと、こちらまで調子がくるってしまいそうだ。


「で、お前、なんであんな所にいたんだよ」


「え? あんな所と言いますと?」


「だから……あんな路地だよ。お前が……ああ、すまん。お前が人間だったころに来ていた白いドレスも汚れていたし、しかも、ガラの悪い奴らに追われていたしな」


 俺がそういうとリゼはようやく話の内容を理解したようだった。


「ええ、実は逃げ出してしまったのです……」


「逃げたって、あのガラの悪い奴らからか?」


「ええ。彼らの隙を見て馬車から逃げたのですが……」


「逃げ切れないで、しかも、運悪く俺と出会ってしまった、と」


 リゼは肯定の意味で、小さく頷く。


「だが、なんで逃げたりしたんだ? ああ、いや。あんな奴等から逃げたくなる気持ちはわからんでもないんだが」


「それは……」


「姫様が、私を信じてくださらなかったからです」

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