第9話 運命の出会い その4
「我は創造者なり……始まりの日に腕を作り、二日目に足を作り、三日目に頭を作り、四日目に胴体を作り、五日目に胴を作り、六日目に血を作り……」
駆け込んだ崩れかかった廃屋の中で、俺は少女の死体と、魔人形を隣り合わせ、ぶつぶつと呪文のようなものを唱えていた。
正確には、呪文である。魔女シコラスに教えてもらった魔法に関する知識はこれだけ。この呪文こそが、魔人形を完成させる最後に必要不可欠な呪文なのだ。
「そして……最後の日に、魂を、作る者なり……」
呪文を言い終わると、少女の胸元に刺さったままであった短剣の柄に手を駆ける。
「……今こそ、その魂、引き抜かれん時……!」
そして、俺は少女の胸元から短剣を引き抜こうとした。しかし、重い。まるで何かがひっかかっているように短剣が抜けないのである。
しかし、少し力を入れれば抜けないわけではない感じである。俺は、もう一度短剣の柄を握り、力いっぱい引き抜いた。
「……え?」
抜けた短剣の先を見て、俺は驚いた。剣先には、透明なフワフワした物体がひっかかっていたのだ。
「……なるほど。これが魂ってわけか」
ここまではシコラスが言っていた通りだ。後はこの魂を壊さないように、慎重にそのまま魔人形の方へと運んでいく。
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。シコラス曰く、この時が一番慎重を期する時らしい。俺はもう一度剣先に集中し、強く剣の柄を握った。
「そして……今こそ、人の形に生を与える者なり!」
そう言うとともに、一気に短剣を魔人形の中心部分に着きたてた。俺はその瞬間を見ていたが、確かにフワフワとした塊が、そのまま魔人形の中に入って行くのを見た。
すると、どうだろう。魔人形に魂が入った瞬間、魔人形がまばゆい光を放ち始めたのである。
「お、おお……!」
あまりの光に目を開けていられないくらいだった。思わず俺は目をつぶってしまう。
そして、そのまま光が廃屋全体を包み込んだかと思うくらいに強くなった後、しばらくしてからようやく光は弱まって行った。
「……ど、どうなった?」
薄めを開けて俺は見てみる。見ると、魔人形はそこにあった。胸部には短剣が刺さったままだ。
「……お、おい。成功したのか?」
俺が魔人形に手を触れる。と、その瞬間、それまで閉じていた目がパチリと開いた。
先に来たのは恐怖よりも感動であった。そして、すぐに理解した。俺は成功したのだ、と。
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