第8話 運命の出会い その3
俺は腰元に挿してあった短剣を抜いた。男たちも俺が剣を抜いたことを把握したようだった。
「なんだ? おいおい、兄ちゃん。まさか、それで俺達と戦おうって気かい?」
俺は何も言わず剣を構える。男たちはニヤニヤしながら俺を見る。
「ははは! こりゃあ傑作だぜ! おい、アンタ、そんな奴のためにわざわざ危険を冒すことはない。さっさと逃げな!」
「そ、そうです! 貴方は無関係です! 早く、ここから逃げて――」
俺はその言葉を最後まで聞かずに、そのまま動いた。無論、男たちはまったくその動きについてきていない。
俺はそのまま男の一人ののど元を剣で切りつけた。十年のブランクの心配はあったが手ごたえはあった。
「ぐっ……がっ……」
男の首から血が吹き出る。そして、うめき声をあげながら男は倒れた。
「あ……こ、この野郎!」
それを見て別の男が向かってきた。無論、ソイツの動きも眠ってしまいそうなほどにゆっくりとした動きだ。俺は同じようにのど元に短剣を突き立て、そのまま一基に切り裂いた。
同じように男は倒れる。そして、次には全員が俺に向かって襲いかかってきた。もちろん、対処法は一緒。他の男たちは一様に俺の短剣で喉を切り裂かれ、地面に倒れた。
「あ……う、うわぁぁぁ!」
と、どうやら恐怖のあまり向かってこなかった男がいたらしい。一人が悲鳴をあげて路地の向こうへ逃げ去って行った。
「ふぅ……終わったか」
俺は短剣を腰元にしまい、振り返った。見ると、少女がおびえた瞳で俺を見ていた。
その瞳も、見覚えがあった。俺はそんな目で誰かに見られた気がする。まるで俺のことを化け物か何かでも見るかのような目だ。俺はその目つきが酷く気に入らなかったのだ。
「……そんな目で見るのはやめろ!」
俺は思わず少女に怒鳴ってしまった。少女はびくっと身体を震わせて俺を見る
「あ……ご、ごめんなさい……」
「……いや、いいんだ。俺こそ、すまなかった」
俺はそう言って短剣を再び取りだした。ここまできたら、丁度いい。ついでにやってしまおう。
「あ……ありがとうございます……助けてくださって……」
少女は俺に何か言っていたようだったが、俺は特に気にせず、最後の「工程」を実行した。
「ふふっ……これで最後……これが最後の工程なんだ……」
「え……な、何を言って……がはっ……」
少女が悲痛な声を漏らす。彼女の純白なドレスの胸の部分が赤く染まっている。
信じられないと云う顔で少女は俺を見る。
その顔を見て俺は感動してしまった。ようやく、これで俺の十年の努力が報われるのだから。
「……リザ。おかえり」
俺がそう言うと少女はそのまま目をつぶって身体ごと崩れ落ちた。俺はその身体を、魔人形を抱えていない方の脇に抱える。
「……さぁ、いよいよ完成だ」
俺は、はやる気持ちを抑えながら、人目につかないように道を急いだ。
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