第6話 運命の出会い その1
それが、つい一ヶ月前のことである。俺はシコラスに感謝と別れを告げ、故郷の村の近くのこの町まで戻ってきたのだ。
俺は店を出てから腕に魔人形を抱えて街を歩く。通り過ぎる人は何人か私を奇異の目で見ていたが、私も同じように通り過ぎる人物を眺めていた。
シコラスが言った俺が求める「完璧な魔人形であるリザ」を作るための条件は三つあった。まず、一つはリザに似せた魔人形を作ること。これは既に俺自身が満足するレベルで完成している。
二つ目が、リザ自身がもう一度私と会いたいと思っているかということ。これに関してもリザが私に会いたくないはずがないので、クリアしている。
そして、三つ目。これが問題だった。魔人形を完成させるための最大にして最難関の工程だ。
「……そうだよなぁ。一番難しいのは、それなんだよなぁ」
俺としては最後の難関は、ともすると、再び俺の人生の時間をそれなりに使わなければいけないのではないかとさえ思う。もちろん、完璧な形でリザにもう一度会えるのならば、努力家の俺としては全く問題ない。
しかし、こればっかりは運であると俺も思っている。そうなると、どれくらいの時間がかかるかどうかも検討がつかないのだが――
「痛っ!」
考え事をしているといつの間にか狭い路地に入ってしまっていた。そこで、いきなり俺に何かがぶつかってきた。俺はその衝撃で思わずリザを地面に落してしまう。
「いたた……あ、ごめんなさい」
ぶつかってきた相手は俺に謝っているようだが、そんなことはどうでもいい。俺の大事なリザを地面に落してしまったのだ。俺は素早くリザを抱きかかえた。
「あ……あれ。それって、人形ですか?」
俺はその時ようやくぶつかってきた相手の方を振り向いた。興味本位でそんなことを聞いてくる奴等、ロクな奴ではないと思ったが、思わず反応してしまったのである。
「あ」
俺は声をあげてしまった。
長い黄金色の金髪に、青い目。白い肌。
その容姿は、リザそっくりだった。あまりのことに俺はただ、その女の子を呆然と眺めてしまった。
そして、明確に感じ取った。
これは、運命の出会いなのだ、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます